脱炭素から資源循環まで。社会課題の解決を後押しする、SMFLのSDGs経営

リース最前線Vol.23 SDGs編

今や世界的な潮流となったSDGs(持続可能な開発目標)。リース業界はSDGsとの親和性が高く、金融の枠を超えた新たな価値を提供し続けている。産業界の発展と循環型社会の実現に貢献してきた足跡に光を当てながら、持続可能な社会の実現に向けたリース業界の展望について、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の代表取締役専務執行役員の関口栄一に話を聞いた。

産業界の発展と循環型社会の実現に貢献

「国内におけるリース業界と産業界の二人三脚の歴史は、高度成長期の1960年代、設備投資需要が拡大するなかで機械設備のリースが始まったことに遡ります」。こう話すのは、SMFLの代表取締役専務執行役員の関口栄一だ。

代表取締役専務執行役員
関口 栄一

「我々リース会社は、70年代は石油ショック後の省力化・合理化投資、80年代はオートメーション化に伴う大型コンピューターへのリース、90年代は半導体製造設備リースや日系企業の海外進出のサポートで産業界に貢献してきました。2000年代以降も、省エネルギー設備に始まり、再生可能エネルギー(再エネ)やグローバル化に伴う航空機、スマートフォンの基地局需要など、時代のニーズに応じて新分野を切り開きながら、社会のイノベーションの背中を押す、重要な役割を果たし続けています」

現在、世界的な潮流となっているSDGsへの貢献という観点でも、さらなる貢献がリース業界に期待されている。関口は「リースはSDGsと親和性が高いビジネス」とした上で、「SDGsが提唱される以前から、リース業界は持続可能な社会の実現に貢献し、その取り組みは現在進行形で発展し続けています」と話す。

「リース業界は資産(モノ)のライフサイクルマネジメントに関わるなかで、3R(リデュース、リユース、リサイクル)を採り入れた循環型社会の実現に貢献し、『所有から利用へ』の潮流にも対応してきました。具体的には、『リース満了物件の利活用』『中古設備売買』『資産管理のアウトソーシング』『資産に関する環境関連法制への適正な対応』などが挙げられます」
環境エネルギー分野は発展が著しい。「『再生可能エネルギー関連設備・低炭素設備のリース取引推進』『省エネ補助金の活用』などで企業の省エネ・低炭素化への動きを後押ししてきました。発電した電力を顧客に提供するPPA(電力販売契約)モデルの提供や、リース会社が自ら再エネ発電事業を営み、長期安定電源化へ向けた取り組みを推進している例もあります。また、地方創生や次世代のまちづくりなど、地域に不可欠なインフラの整備・開発を通じた地域社会の発展に貢献する取り組みや、リース取引を通じて顧客にSDGsへ貢献する機会を提供するなど、商品開発・展開は広がりを見せています」

脱炭素社会への貢献で社会価値を拡大

近年は、国際的な環境対策への必要性もますます高まっている。リース業界がこうした時代の要請に応え、SDGs達成に向けてさらなる貢献をしていくためには、どうすればいいのか。関口は「これまで培った事業基盤や経営基盤の高度化が重要」とした上で、「金融機能の提供にとどまらず、時代の変化に応じて幅広い分野でサービスを展開する必要があります」と説く。その際に不可欠な要素として強調するのが「社会価値の拡大」だ。

例えば、2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けては、リース会社にはソリューションプロバイダーとしての役割が求められる。

「太陽光発電設備をリース会社が設置し、発電した電力を需要家に提供するPPAモデルや、最適な補助金を活用して交付団体との折衝から申請手続きまでワンストップで対応する設備投資支援など、顧客のニーズに応じて最適解を導き出すコンサルティング機能はリース業界の強みの1つです」

リース会社の資金調達においてサステナブルファイナンスを利用する動きも進んでいる。SDGs達成に向けた取り組みの訴求や投資家との対話を通じ、環境や社会課題の解決に使途を限定した「グリーンボンド/ローン」のほか、サステナビリティに関する目標を設定し、金利などの貸出条件が連動する「サステナビリティ・リンク・ローン」、企業活動が経済・社会・環境にもたらすインパクトを分析・評価する「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」など、資金調達基盤を強化している。

金融から事業まで広範な事業領域を持つリース業界。バリューチェーン全体での取り組みが一層求められるなか、上流から下流までさまざまな領域で温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けたソリューションを提供することができる。

4つのマテリアリティを設定しSDGs経営を推進

SDGsという国際社会の共通目標の達成において、モノを所有するアンカーにもなり得るリース業界の役割は大きく、リース各社は関連サービスや事業の拡大を推し進めている。それはSMFLも例外ではない。

「『SMFL Way』の『Our Vision(私たちの目指す姿)』の1つとして『SDGs経営で未来に選ばれる企業』を掲げ、ビジネスと関係の深い『環境』『次世代』『コミュニティ』『働きがい』の4つを重点課題(マテリアリティ)に設定し、SDGsの17の目標のうち、8つを注力項目に定めています。2022年4月には中長期環境目標として、自社が排出するGHG排出量の削減目標およびビジネスにおける取り組み目標を設定し、2023年6月には同目標のうち、サステナブル関連ビジネスの累計契約額の目標を引き上げました」

SMFLが特に注力するSDGsの8項目

SMFLの重点課題と注力施策

環境

脱炭素・循環型社会の実現に貢献

  • 再生可能エネルギーへの取り組み推進
  • 脱炭素につながる製品の取り扱い拡大
  • サーキュラーエコノミービジネスの推進
  • 当社の電気・紙使用量抑制
次世代

次世代につながる人・企業の発展に貢献

  • デジタル・ロボットなどのイノベーション推進
  • 次世代の基盤である子どもへの支援
コミュニティ

地域社会の持続的な発展への貢献

  • 持続可能なまちづくりへのソリューションの提供
  • グローバルベースでの設備投資のサポートを通じた各国経済発展への貢献
  • コミュニティへの参加・支援
働きがい

誰もがより良い未来に向けて活躍できる機会の創出

  • 女性・シニア活躍推進
  • 働き方改革推進
  • デジタルを活用した業務効率化
SMFLは、4つの重点課題(マテリアリティ)に対し、SDGsが示す社会課題の解決に向けて新たな市場を開拓し、事業機会を創出していく。これにより企業価値の向上を図り、社会の持続的な発展に貢献していく

これらの目標の達成に向けたSMFLの具体的な施策は、大きく5つに分けられる。初めに挙げられるのが、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進」だ。関口は「これまでも中古設備売買、設備やプラントの処分、レンタルなど当社グループの事業の知見を活用し、3Rを採り入れたリサイクリングエコノミーに貢献してきましたが、これからはサーキュラーエコノミーを形成していく第一人者として、さらなる社会課題の解決に取り組みたい」と話す。

次に挙げられるのが、環境エネルギー分野の施策だ。低炭素設備や再エネ設備のリース取引推進、省エネ補助金活用に加えて、戦略子会社であるSMFLみらいパートナーズによるPPAモデルの提供などで顧客企業の省エネ・脱炭素を支援している。

「SMFLみらいパートナーズ自らが再エネ発電事業者となり、再エネの長期安定供給に取り組んでいます。昨年にはFIT制度に代わる新たな制度のFIP(Feed-in Premium)制度を適用するなど、非FITの電力を生み出す動きも進んでいます」

3つ目が、リース契約することでSDGs達成の貢献になるよう設計されている寄付付きリース商品、「SDGsリース『みらい2030®』」だ。

「お客さまからいただいたリース料の一部を、当社がSDGs達成に資する公益財団法人または認定NPO法人などに寄付するSDGsリース『みらい2030®』(寄付型)という取り組みを、2019年12月より開始しています。その後も、ダイキン工業アサヒ飲料日本マクドナルド大和冷機工業横浜市などさまざまな企業や自治体と独自の枠組みでのSDGsリースを組成してSDGsの実現に貢献しています」

4つ目が、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。社内では、RPAの推進・管理および運用などを現場でリードする「RPAアンバサダー」を中心として現場主体で社内業務の効率化に取り組んでいる。社外では、内製でデジタル開発を行う人材を中心に営業支援や資産管理などの分野でデジタルのビジネス化にも取り組んでいる。2022年4月、経済産業省が定めるDX認定事業者に認定された。また、2022年12月には「2022年度IT賞」のIT奨励賞を受賞した。「金融×事業×DX」による、「SMFLならでは」のサービス提供で社会や顧客の課題解決に貢献している。

そして最後に挙げられるのが、「人材育成」だ。SMFLは2022年10月に「SMFLアカデミー」を立ち上げた。
社員それぞれがさらなる成長を遂げるために、自律的にキャリア開発していく人事制度の一環だ。体系化した研修を通して人的資本を向上させることで、社員のチャレンジする意欲や新しい自分づくりを支援する。

大量生産・大量消費・大量廃棄の時代が終わりを告げた今、日本企業の「持たない経営」への志向はますます強まり、循環型社会の実現や脱炭素社会に向けた取り組みはさらに加速するだろう。この新しい潮流において、SMFLは社会課題の解決に資するビジネスの創出を通じて経済価値を生み出し、それがさらなる社会価値解決につながる循環を作る。金融の枠を超えて新たな価値を提供し続けるSMFLに注目したい。

(内容、肩書は2023年6月時点)

関連記事またはサービス・ソリューション