大阪・関西万博が開幕! 会場インフラ「熱供給」事業は、“設計・施工、運転管理から解体・撤去まで”を一括で運営──SMFLみらいパートナーズほか3社が大阪・近畿圏の活性化とSDGsに貢献

大阪・関西万博が開幕! 4社協業で挑む会場インフラ「熱供給」事業

4月に開幕を迎える2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会期は、10月までの半年間。暑熱の時期とも重なるため、空調システムは会場全体の運営を支える極めて重要なインフラとなる。
その重要なインフラ、空調用の熱供給事業(地域熱供給)を担うのが、SMFLみらいパートナーズ(元請)、ダイダン(設計・施工)、Daigasエナジー(運転管理)、SMART(解体・撤去)の4社が組む協業チームだ。
大規模会場での記念碑的なイベントというやりがいの一方、工期や立地など大阪・関西万博特有の難しさとも4社は格闘したという。どんな難局を、どのように克服したのか──開幕を控えた今、DaigasエナジーとSMFLみらいパートナーズでこのプロジェクトを推進した2人に話を聞いた。

大阪・近畿圏での貢献を探るなか、舞い込んできたビッグチャンス

大阪で55年ぶりの万博が、いよいよ迫ってきた※1。「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げる今回の2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に、地元の熱量は高まっている。

Daigasエナジー
都市圏営業部 マネジャー
片山史士氏

「そもそものきっかけが、前回(1970年)の大阪万博でした」と語るのは、大阪ガスグループのDaigasエナジー 都市圏営業部マネジャーの片山史士氏だ。
「当社グループは前回の大阪万博に合わせて開発された千里中央地域で、日本初の地域冷暖房事業をスタートしたのです。以来50年余、ノウハウを蓄積してきました。2025年の万博開催が決まったとき、ぜひまたこの一大イベントに貢献したいと考えたのは、当社にとってごく自然なことでした」(片山氏)

だがエネルギー事業者として “ 何ができるか ” を探り始めると、準備期間の短さや、人工島という特別な環境での施工・運営に加え、“ 設備設計→施工→運転管理→解体→撤去 ” を一括で請負する「Build-Own-Operate(BOO)」という特殊な方式が入札条件とされたことから、自社が単独で参画する難しさに直面したという。
「ただ幸いにも、弊社には格好の相談相手がいました。実はSMFLグループさんとは、以前から『マザーマーケットである地元大阪に貢献したい』と話し合いながらさまざまな協業を行っており、ビジネスの可能性を模索していたのです。さらに万博の好機があり、迷わずタッグを組むことを決めました」(片山氏)

三井住友ファイナンス&リース(SMFL)にとっても、大阪・近畿圏は本拠地の一つ。SMFLの戦略子会社、SMFLみらいパートナーズでエネルギーサービス部上席部長代理を務める大壽賀憲一の言葉には、そんな “ 故地 ” に到来したチャンスへの意気込みがにじむ。

SMFLみらいパートナーズ
エネルギーサービス部 上席部長代理
大壽賀憲一

「Daigasエナジーさんと共に、〈基幹市場たる大阪への貢献×地球環境×ビジネスチャンス〉の一手を探るなかで、万博に携わるチャンスが来た! と。今回のコンセプトは『未来社会の実験場』です。ここにフォーカスし、将来につながる技術や環境面での貢献が大きな、まさに “ チャレンジングな実験 ” に取り組んで大阪の未来に貢献しようじゃないか──ということになりました」(大壽賀)

以前から、DaigasエナジーとSMFLみらいパートナーズは、エネルギー事業で「深い関係があった」(大壽賀)という。両社は会場全体の熱供給事業に狙いを定め、空調工事で多くの実績を持つダイダン、SMFLグループの1社で解体事業に強みを持つSMARTの4社でプロジェクトチームを形成した。SMFLみらいパートナーズが代表事業者(元請)となり、Daigasエナジーは会期中の設備の運転管理の役割を担うことに。
入札までに、4社間で入札仕様書記載内容への対応案策定や受注後に想定されるリスクを整理。また、他社グループとの競合が予想されたことから入札金額の精査も何度も行った。入念な準備を重ねた上で開札日を迎え、無事に落札に至った。会期の大半を占める夏期、さらに猛暑を見込み、会場の各施設に空調用冷水を供給するミッションに臨むことになった。

  • ※12025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催期間:2025年4月13日(日)~10月13日(月)

BOO方式による熱供給事業の各社の役割一覧

企業名 役割
SMFLみらいパートナーズ 代表企業として案件全体の統括業務、機器の所有、万博協会※2との調整・協議などにおける窓口役を担う
ダイダン 機器などの設計・施工(機器納入・設置・工事監理)業務を担う
Daigasエナジー 機器などの運転管理を担う
SMART 機器などの解体・撤去を担う

Build-Own-Operate(BOO)方式※3の熱供給事業でチームを組んだ4社。SMFLみらいパートナーズ、ダイダン、Daigasエナジー、SMARTの4社が、設計→施工→運転管理→解体・撤去を一括して担う

  • ※2公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
  • ※3Build-Own-Operate(BOO)方式:施工・運営に加え、“ 設備設計→施工→運転管理→解体→撤去 ” を一括で請負する

万博ならではのチャレンジを、各社の “ 強み ” を掛け合わせたスキームで支える

大阪・関西万博の会場は、「新たな技術やシステムを実証する『未来社会の実験場』」という位置付け。“ チャレンジングな実験 ” に、大壽賀はどんな戦略を織り込んだのか。

「大事なポイントは、カーボンニュートラル実現に向けた布石、という視点です」と大壽賀は説く。
「太陽光発電のPPA(電力購入契約)事業などを推進してきた当社は、万博の熱供給事業にも、脱カーボンの技術を積極的に導入します。その一つが『帯水層蓄熱』。これは、夏場の外気温と地下水温との温度差を利用し、蓄熱設備を設けてエネルギーを循環させるシステムです。高い省エネ性の一方、国内での実績はごく限られています」(大壽賀)
まだ普及していない技術だからこそ、「万博をショーケースに」と大壽賀は意欲をにじませる。

「もう一つ。『海水熱利用』も “ 目玉 ” です。水面下5~10mの海水は外気よりも温度が低く、空調用冷水にその熱を利用することで、環境負荷の軽減にも寄与。万博会場の夢洲は海上の人工島ですから、この技術の活用には格好の立地といえます」(大壽賀)
ただし、海水の利用などに伴う設備の施工と運転管理には相応の難しさがあるという。Daigasエナジー、ダイダン両社の技術力が不可欠なのだ。

Daigasエナジーの片山氏は、大阪ガスグループが万博で取り組む「e‐メタン」の実証実験の意義にも触れる。
「万博の実証実験では、会場の生ごみなども利用してe-メタンを合成し、そのエネルギーを各施設の冷房や迎賓館の厨房などに供給します。まだ実験段階ですが、e-メタンは注目の次世代エネルギー。水素を利用する点と、都市ガスのインフラをそのまま使える点でメリットが大きく、2050年にはガス利用の9割をe-メタンに置き換える目標が一般社団法人日本ガス協会として掲げられています。万博はそのための重要な一歩です」(片山氏)

さらに、応札の要件として「BOO方式」での一括請負が求められたことに触れた。今回の事業で、設計と施工を担うのがダイダンだ。大阪市に本社を置く同社は、空調をはじめ、電気、水道衛生などの各種工事を扱う専門性の高い企業。明治30年代創業の老舗である。
大壽賀は「ダイダンさんは熱源の工事に強みを持つ会社です。当社とのトップリレーションもあり、安心感がありました。私たちが気付けないような問題にも抜かりなく気付いてくれます」と信頼を寄せる。片山氏も、「万博会場の広さは東京ドーム約33個分です。それをカバーする熱供給施設は、会場の外周沿いに4カ所。分散配置で稼働を制御し、供給効率を常に最適化します。どれか1基が故障して真夏に冷房が止まりでもしたら一大事。ダイダンさんと協議を重ね、運用計画を詰めてきました」と語る。

会期終了後に設備の解体・撤去を担当するのは、SMFLグループの1社で、解体ビジネスを専門とするSMARTだ。同社は、プラント設備の解体・撤去から、不要になった機械・設備の再販・再資源化までをワンストップで提供できるノウハウを持つ。大壽賀は「設備の解体や撤去は、ただ壊す場合からリユース(再利用)する場合まで、複雑で多様です。各ケースに最適な業者を探し出し引き受けてもらうのは、そう簡単ではない。今回、設備・プラントの処分のノウハウを持つSMARTがSMFLグループにいたことは、本事業獲得にとって重要なポイントでした」と明かす。

高いハードルだったBOO方式の入札をクリアできたのは、SMFLグループが重視する「パートナー戦略」のなせる業でもあった。SMFLグループは経営理念・経営方針を示す「SMFL Way」のOur Visionの一つとして「お客さまの最良のビジネスパートナー」と掲げる通り、金融の枠にとどまらないソリューションの提供を通じて、お客さまの課題解決への貢献を目指してきた。
「とはいえ……」と大壽賀が打ち明ける。
「──これだけの規模のプロジェクトで、かつ、今回のように全4社で連携した例は、実はこれまでありません。手探りを重ね、4社それぞれの強みを最大限に発揮する座組みにこぎ着けられたことで、今回のビジネスチャンスを手にできました」(大壽賀)

大阪・関西万博会場(イメージ)

大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。そのコンセプトは、SMFLみらいパートナーズの事業──次世代エネルギーの利用促進、サーキュラーエコノミーの実現など──が持つチャレンジスピリットと通じ合う

“ 未経験 ” “ 想定外 ” の難問を、「リスクの整理」で突破

「連携」の力は、準備期間に入るといかんなく発揮された。
「最大の課題にして、最大の解決策となったのは、“ リスクの整理 ” でした」と大壽賀は振り返る。
「未経験の条件に、次から次へと直面しました。短い工期に、厳しい工事環境。資材や機材の搬入日程の調整の難しさ、現場の地形に合った工事対応……。そんな難局に突き当たるたび、新たなリスクが発生します。我々4社にはそれぞれ、自社で “ テイクできるリスク ” と “ テイク不可能なリスク ” が、どうしてもありました」(大壽賀)

ほぼ一斉に開始した各パビリオン・施設の工事。人手不足や資材価格高騰などに伴う請負契約締結の遅延など、さまざまな事情で着工は遅れ気味だった。とはいえ工期延長はあり得ない。人工島は内陸とは異なり、搬入経路が限られる。その搬入口を、約200に上る出展パビリオンとほぼ同数の施工業者が同時集中的に利用する。搬入日時や、近隣区域との工事内容の調整は難航を極めたという。

「それだけではありません。例えば、冷却用海水を送り届ける配管のルートを現地視察したところ、急勾配の斜面を通さなければならないなど想定外の工事検討が必要となることもありました」(大壽賀)
“ 想定外 ” が降りかかるたび、工事手順は修正され、完工後の運営計画の見直しを余儀なくされる。資材や機材の必要数が変われば、見積もりや契約の変更交渉も検討せざるを得ない。
「これまでに引き受けた経験のないリスクの連続でした。1社でそれを負うのは無理な話です。4社それぞれの “ 強み ” を見直し、協議を重ねて各社の最適な役割分担と責任を明確にしました。内部でのこうした “ リスク整理 ” によって、全リスクを一手に引き受けるかたちが整ったのです」(大壽賀)

熱供給設備の一部

熱供給施設向けに使用されるガスコージェネレーションシステム

万博を機に──SDGs推進と、大阪・近畿圏の飛躍を期して

「世間の耳目が集まる世界的な一大イベント。失敗は絶対に許されません」(大壽賀)という本プロジェクトでは、「新たな技術への挑戦」と「安定したエネルギー供給」とのバランスをどう見極めるかに苦労した──片山氏も大壽賀もこの点で口を揃える。
片山氏の言葉から特に伝わってくるのは、インフラ事業者としての責任感だ。
「万博のコンセプトは『未来社会の実験場』です。ただ、私どもDaigasエナジーの事業は、いわば社会の “ 下支え ”。それゆえ、我々の第一の使命は、エネルギーの安定供給を通じて、会場を訪れてくださる方々、そこで働かれる方々にいかに快適に過ごしてもらうかだと、私は思うのです。だから万博も、日常の事業の延長。日頃からパートナーとして連携しているSMFLグループさんと、この一大イベントで協業する経験を十分に生かし、今後もさまざまなソリューションを社会に提供していきたい」(片山氏)

SMFLグループは「SMFL Way」のOur Visionの一つに、「SDGs経営で未来に選ばれる企業」を掲げる。同社のコーポレートメッセージ「未来を考え、今に挑む。」も、大阪・関西万博のコンセプトや、「開催の意義」にうたう “ SDGs達成・SDGs+beyondへの飛躍の機会 ” と、よく響き合う。
大壽賀の目は万博後にも向けられている。
「SMFLグループにとって、この事業を通じて4社の間に築かれた信頼関係は、今後の大きな財産になりました。“ 4社間 ” といっても、詰まるところそれは “ 人と人 ” の関係。準備期間中には “ 侃侃諤諤 ” な場面もありましたが、そこを乗り越えて打ち解ければ、議論はさらに建設的に進む──今後私たちが難事業に取り組む際、これは “ 難局突破の秘訣 ” になる、と実感しました」(大壽賀)

万博の開幕は目前だ。「 “ チーム万博 ” としての一体感を感じながら取り組む」と語る大壽賀たちの挑戦を、まずはしっかりと見守ろう。

写真左から、三井住友ファイナンス&リース 関西成長戦略室 祐川清二、Daigasエナジー 都市圏営業部 水内智貴氏、Daigasエナジー 片山史士氏、SMFLみらいパートナーズ 大壽賀憲一、三井住友ファイナンス&リース 関西成長戦略室長 合田 律

Introduction

400年の歴史が紡ぐ未来の物語「住友館」

関西経済圏にとって重要な大型プロジェクトをサポートするという観点では、2019年4月に創設されたSMFLの「関西成長戦略室」の機能にも注目しておきたい。
関西成長戦略室は、関西経済の持続的な成長を目的に、大型プロジェクトを取り巻く各種課題の解決や、プロジェクトに関連して発生するビジネスへの顧客企業の参入などを一貫してサポートしてきた。

またSMFLは、大阪・関西万博への取り組みの一つとして、住友グループが出展する「住友館」に協賛している。住友館は、住友の発展の礎である四国 “ 別子の峰 ” をイメージして設計されており、外観のデザインは山々が連続するシルエットを表現している。館内では、「UNKNOWN FOREST」をテーマに、映像、音楽、人が融合したインタラクティブな演出が予定されており、臨場感あふれる森や自然と向き合い、未来へ思いを馳せる大切さを感じるきっかけを提供する。

また、約1万本の苗木を用意し、未来に向けた「植林体験」も実施される。植林された苗木は、住友館の建築資材として木々が伐採された四国「別子の森」に運ばれ、新たな森林資源として育てられる。住友館は「来場者の思いが時を超えて未来につながる」をコンセプトにした体験型パビリオンである。
SMFLを含む住友グループ各社は植林体験事業の運営スタッフをボランティアとして派遣し支援する。

(内容、肩書は2025年4月時点)

お問い合わせ

SMFLみらいパートナーズ株式会社 エネルギーサービス部(大阪) 
TEL:06-7669-5530

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