インボイス制度に対応した「SMFLデータサービス」という最適解。
電子帳簿保存法改正を見据え、帳票の「データ」を経営戦略に生かす好機
2023年10月1日にインボイス制度がスタートし、企業は対応を迫られることとなった。さらに、2024年1月からは電子帳簿保存法の改正に基づく新要件の適用が開始する。2つの新たなルールの下で、帳簿管理の業務現場は、新たな負担増に神経をとがらせているかもしれない。だがそうした懸念の半面、実は、これらの動きは「DX推進」の大きなチャンスであるともいえる。三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は、帳票基盤ソリューションで知られるウイングアーク1st株式会社(ウイングアーク)と提携し、帳票を電子化して顧客の利便性を高める「SMFLデータサービス」を提供。2023年秋からはインボイスへも対応し、企業間の帳票DXを加速させた。どんなチャンスがそこにあるのか。制度全般と企業のDXに通じた両社の2人に話を聞いた。
リース取引の「仕入税額控除」にもインボイスは必要
インボイス制度の導入で、企業は事務負担の増大に直面している。整理すべき帳票類の増加に加え、書式はバラバラ。分類や保存管理のルールも複雑だ。制度開始から3カ月近く経過したが、実務をさばきながらの戸惑いはこの先も続きそうだ。
小林 文子
現場のそんな当惑を、SMFL執行役員 事務企画部長の小林文子はこう話す。
「何件、何十件とご契約なさっているお客さまは、毎月その数だけのインボイスを受け取ることになります。その煩雑さは容易に推察できます。加えて、もしそれが紙の帳票だった場合、環境配慮の観点からも望ましいことではありません」
インボイス制度とは、税率が複数(10%と8%)設定された消費税の納税額を正確に算出するとともに、売り手が買い手に対して消費税額を伝えるための仕組み。課税事業者が「売り上げ」に乗せた消費税を納める際に、商品やサービスなどの「仕入れ」で支払った消費税額を差し引く「仕入税額控除」を適用するには、必要事項が明記された適格請求書発行事業者のインボイス(適格請求書)※1が必要になる──という制度である。
「製品を売る側としてインボイスを発行することと、原料やサービスなどを仕入れる(買う)側として帳票類の授受・保存ルールを守ること、この両面が必須」と注意を促すのは、文書情報管理のエキスパート・直江優氏。直江氏は、帳票基盤や文書管理などの企業向けソリューション提供で業界をリードするウイングアークで、 Customer Experience統括部 法対応室室長を務める。
「インボイスには、登録番号※2・適用税率・区分算出された消費税合計額などの記載が求められます。invoiceを簡単に訳せば『請求書』ですが、要件を満たしていれば『納品書』『領収書』などの名称でもインボイスとして通用します。『インボイス』という名の別の書類を新たに作成する必要はなく、紙か電子データかも問われません」(直江氏)
Customer Experience統括部 法対応室 室長(文書情報管理士)
直江 優 氏
SMFLでも顧客に対し、特に注意喚起に努めている点があるという。「リース取引において『お支払明細表』の保存を、お客さまに懸命にお願いしています」と明かす小林が、事務企画部長の立場から次のように呼びかける。
「リース料の消費税に『仕入税額控除』を適用される場合にも、リース会社が発行したインボイスの保存が必要です。ただしご注意いただきたいのは、取引に伴う『請求書』。請求書にも登録番号は記載されますが、それ単独ではインボイスの要件を満たさない場合があります。そこで私どもSMFLでは、2023年9月以降の契約に対し、インボイスとして『お支払明細表』を発行しております。ところが、請求書があれば控除を受けられると思い込まれたお客さまが『お支払明細表』を破棄されることがあり得るのです。控除に支障をきたさないよう、この点には特に気をつけていただくようお伝えしています」
- ※1インボイス:適格請求書発行事業者の登録を受けている課税事業者が発行する請求書・領収書などのこと。インボイスを発行できるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者に限られる
- ※2適格請求書発行事業者としての登録を申請した事業者に対し、税務署が手続き終了後に通知する番号
業務DXで働き方改革を推進──帳票電子化「SMFLデータサービス」
経理業務の現場は常に帳票の山との格闘だ。注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書──商取引で行き交う書類は多岐にわたる。それらの授受・保存に伴う企業の負担は重い。そのため、「帳票の電子化=ペーパーレス化・ペーパーストックレス化」が久しく課題とされてきた。
今回、インボイスがそこに加わった。「仕入税額控除」の適用を受けるには、原則として7年間の保存と管理が求められる。これを機に、思い切った帳票電子化に大きく踏み出す、という選択もあるのではないだろうか。
インボイスの保存管理において一助となるのが「SMFLデータサービス」だ。リース契約に伴う帳票を電子化し、取引先に電子で提供する。「サービス開始からすでに約2年半の実績があり、インボイス対応の『お支払明細表』も電子でご提供しています。多くのご契約をいただいているお客さまは、契約ごとに大量の紙のインボイスが発行されてしまうと紙の管理だけで大変になります。『SMFLデータサービス』をご利用いただければ大量の紙のインボイスが不要になります」(小林)
同サービスをシステム面で支えているのが、ウイングアークの電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」※3だ。ウイングアークとSMFL、両社が提携に至った背景を小林はこう語る。「金融機関にとって、帳票の電子化や業務プロセスのデジタル化を減速させる最大の要因は、『情報セキュリティへの不安』です。実は私どももこの課題に直面していました。そんな中、SMFLが以前から利用していた帳票基盤システムの提供元であるウイングアークさんにお話を伺う機会があり、『invoiceAgent』の設計思想とセキュリティの堅牢性が確かなものだと納得できたのです。既存のシステムを生かしてセキュリティを確保し、いち早くサービスを確立できると考え、両社の共創による『SMFLデータサービス』が実現しました」
「SMFLデータサービス」が提供するのは、次のようなメリットだ。
- ①発行する帳票は発行当日に送信される。郵送と異なり到着(配達)までの時間ロスがなく、業務がスピードアップする
- ②帳票は何回でもダウンロード可能。もし紛失してしまっても、「再発行」の手間が不要
- ③「お客さまコード」ごとに最大50名までメール通知を受け取れる
- ④リモートワークや外出先など働く環境にかかわらず帳票を受け取れる
加えて、利用者から特に好評なのが「在宅勤務日や悪天候時などに、出社しなくても帳票を受領でき、書類を確認できる」ことだという。小林は、「このサービスでお客さまの『働き方改革が加速した』というお声を頂戴しています」と話す。
- ※3ウイングアークが提供する電子帳票プラットフォーム。既存システムを変えずに、請求書・支払通知書・注文書・納品書などの電子化と、配信・返信が可能。取引関連文書の一元管理や法対応もできる
電子帳簿保存法改正も「デジタル化」の好機
2024年1月、電子帳簿保存法改正の新たな要件が施行される。「電子取引」に関しては、電子データでの保存が義務化され、「印刷して紙の保存」が原則的に認められなくなるのだ。
義務化と聞いて「また業務負担が増える!?」と身構える方もいることだろう。しかし、そもそも電子帳簿保存法は、帳票の授受・保存に伴う企業の負担を軽減するために、帳票の電子化を後押しする法律だ。
帳票の電子化は、経理業務の現場に、社内の各部署に、そして経営の判断にどんな変革をもたらし得るか。分かりやすいキーワードが「メタデータ(属性情報)」だ。メタデータとは、「データを管理するための、“ データについてのデータ ”」のこと。主に次のような特徴で、データの品質を向上させる。
- ①データの分類・整理に役立つ
- ②検索が容易になる
- ③さまざまな角度からの分析が可能になる
- ④セキュリティが高まる
- ⑤システムの開発・運用・保守に役立つ
電子帳簿保存法改正の対象となる書類と保存方法
出所:「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて」(国税庁)を基にSMFL作成
直江氏が展望を語る。「デジタル化された帳票であれば、誰のどの業務ルートを通ったのかという証拠が容易に得られます。また、倉庫に眠っていた紙の帳票がデジタル化されたとします。そのメタデータを分析すると、誰が何回ダウンロードした、といった情報も得られます。人気のある(再利用できる)帳票と人気のない帳票が分かるのです。そこから、『これはすごく活用されている帳票だな』『活用される理由は何だろう?』という発見と考察が生まれます。何度も再利用される帳票や、突出した特徴がある帳票にはどんな価値が隠れているのか──帳票の内容も大事ですが、帳票の動きや眠っている帳票から得られるデータを経営戦略に生かせる可能性があります。これは紙ではできないことです」
帳票のデジタル化で、データドリブン経営の基盤が厚くなる──来たる「義務化」をそう前向きに捉え、経営の新たな着眼点にもつながり得る「経理業務プロセスDX」のきっかけとして生かしたい。
契機を捉えることに加え、「長期的スコープでの取り組みも大切」と直江氏は続ける。「経理に関わる制度改正は、今後もさらに続くでしょう。経理業務のDXに継続的に取り組むことが、今後の制度改正へのスピーディかつ適切な対応につながります」
インボイス制度に関しては、PDFなどを利用する「電子インボイス」にとどまらず、記載される内容自体をPeppol(ペポル)と呼ばれる共通規格で標準化・構造化し、電子データのままやりとりする「デジタルインボイス」への移行が加速する可能性もある。
小林は将来への展望をこう述べる。「デジタルインボイスの普及により、『商取引全体のデジタル化』が進むことが期待されます。SMFLはその流れを積極的にリードし、ウイングアークさんをはじめとするパートナー企業のお力を借りながら、お客さまの利便性をさらに高め、新たな価値を創出していきたいと考えています」
さまざまな意見が飛び交ったインボイス制度。そして、「義務化」で対応が迫られる電子帳簿保存法改正。どちらも負担増のピンチと見えて、実はその陰にチャンスあり。正しく理解することで最適な運用を見いだし、時代の変化に対応したDX実現への一歩を踏み出したい。
(内容、肩書は2023年12月時点)
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