SDGs推進のカギは、魂を込めた具体施策とリーダーの声がけ

SDGs経営のセオリー ダイヤモンドエレクトリックホールディングス x ファミリーマート x SMFL

すでに多くの企業がSDGsへの取り組みに注力している。そのようななか、現場への浸透や実践に課題を感じ、試行錯誤する経営者は少なくない。それならば好事例を参考にしてはどうだろう。ダイヤモンドエレクトリックホールディングスとファミリーマートのケースだ。両社に共通するのは、経営の基盤要素にSDGsへのコミットを組み込み、経営方針の具体化を通じて組織全体への浸透を図る姿勢である。SDGsウォッシュに陥らない両社の取り組みと、それを後押しする三井住友ファイナンス&リース(SMFL)。SMFLが主催したSDGs経営セミナーに登壇した3社それぞれの “ 魂の吹き込み方 ” をレポートする。

SDGs推進を具体策に落とし込み、実践する

ダイヤモンドエレクトリックホールディングス 常務執行役員 CMO 兼 調達本部長 兼 社長室長
西川 勇介 氏

ダイヤモンドエレクトリックホールディングス(HD)(本社:大阪市淀川区)は、社員数約4,000名を擁する電気機器メーカーである。同社常務執行役員 CMO 兼 調達本部長 兼 社長室長の西川勇介氏は、SDGs経営の骨格をこう概説する。
「持続可能性を経営の根幹に据えるべく、資金調達戦略『サステナビリティファイナンス・フレームワーク』を策定・実践するとともに、『ROC(Return On Carbon、炭素利益率)』を役員報酬の基準に組み込むなど、経営層がSDGsを主導する体制を確立しています。2019年には事業活動で使う電力を全て再生可能エネルギーにすることを目指す国際的なイニシアチブ『RE100』にも加入。さらに2022年10月には社内に『持続的社会貢献可能戦略推進室』を設置しました。同室が各事業を横断的につなぎ、全社的な脱炭素化を推進しています」(西川氏)

ファミリーマート 管理本部 サステナビリティ推進部 副部長
中村 幸恵 氏

一方のファミリーマート。日本国内だけで1万6,000超の店舗を展開する巨大フランチャイズチェーンである。同社は2022年度から新たな中期経営計画に着手し、「独自性のあるSDGs推進」を掲げた。同社管理本部 サステナビリティ推進部 副部長の中村幸恵氏は、「全ての社員が『自分ごと』としてSDGs推進に取り組む全社活動を2022年4月に開始しました。名付けて、『with Sustainability!  活動』。このネーミングには、ステークホルダーの皆さまと一緒にSDGsに取り組んでいきたい、との思いが込められています」と話す。

両社は、SDGsの取り組みを強化するため、SMFLのリース商品を活用している。ダイヤモンドエレクトリックHDが採用した「サステナビリティ・リンク・リース」は、サステナビリティへの取り組みに対する目標の達成度に応じてリース料が変動する商品。ファミリーマートが採用した「SDGsリース『みらい2030(ミライニーマルサンマル)®』(寄付型)」は、リース料の一部をSDGs達成に資する公益財団法人または認定NPO法人などに寄付する商品である。いずれも、環境面・社会面で持続可能な企業活動を支え、その成長を促すことを目的に開発された金融サービスだ。

SMFLサステナビリティ推進部長の根岸豊がこう語る。「SMFLはお客さまのSDGsへの取り組みに関わる目標達成を支援するさまざまな商品・サービスを提供しています。ダイヤモンドエレクトリックHD様とファミリーマート様は、SDGsを推進するためのアプローチ方法の一つとして私たちの商品をご活用いただきながらSDGsへの取り組みを実践されている特徴的な企業です」(根岸)

SDGsの取り組みを手助けする道しるべ「SDGコンパス」

SDGs経営に乗り出した企業の多くが道しるべとする「SDGコンパス」という広範な行動指針がある。この手引が指し示す「5つのSTEP」に沿って、両社の取り組みを見ていこう。

SDGsに取り組むための5つのステップ

STEP1の《SDGsを理解する》をクリアした企業の多くが直面するのが、STEP2《優先課題を決定する》とSTEP3《目標を設定する》をどのようにして具体的なアクションに落とし込み、施策の実効性を担保するか、だ。

ファミリーマートがまず行ったのは、体制の見直し。取り組みの主体を持ち株会社からコンビニ事業会社へ切り替え(2019年度)、SDGsの推進を本格化した。それに伴い、STEP2の《優先課題》も、コンビニ事業により適した内容に更新した。

ファミリマートのSDGsに取り組むための5つのステップ

中村氏が言う。「課題抽出の段階では、SDGs目標と当社事業との関連性、国際的な基準やステークホルダーからの期待、親会社やサプライチェーン各社の活動指標なども参考にしました。洗い出した課題は、社会への影響度と当社への影響度の2軸で重要性を評価し、各担当部門との意見交換および外部有識者からのレビューを経た上で、妥当性や整合性を検証。最終的に5つの重要課題に絞り込み、これらを支える基盤を整備しました」(中村氏)

ファミリーマートのサステナビリティ概念図

同社も重要課題の1つに環境配慮を掲げる。2020年2月に環境対応の中長期目標「ファミマecoビジョン2050」を発表。「CO2削減」「プラスチック対策」「食品ロス削減」の3つのテーマに重点的に取り組む方針の下、2030年時点の数値目標を定めた。このうち「CO2削減」では店舗運営に伴うCO2排出量を2013年対比で食品ロスの50%削減を、「プラスチック対策」ではオリジナル商品での環境配慮型素材の使用比率を60%に増大、「食品ロス削減」では2018年対比で食品ロスの50%削減を、それぞれ目標に掲げている。

ダイヤモンドエレクトリックHDの場合、「以前から自社にあったもの」を起点にして段階を踏んだ、と西川氏は説明する。「当社は創業当初から続く自動車機器および電子制御機器を生産する事業に加え、現在はエネルギーソリューション事業を展開しています。脱炭素はもともと当社が事業を通じて取り組むべき責任だと位置付けていました。そこでSTEP2に関わるバリューチェーンのマッピングでは『脱炭素』を優先課題としました。STEP3で問われたKPI(重要業績評価指標)の設定については、『RE100』加入時の中長期計画を適宜見直しながら進めています。脱炭素の具体的な施策としては、屋根置き型の自家消費太陽光発電をまず導入しました。『環境価値』の購入も検討しています」(西川氏)

同社では現在、鳥取市の自社工場と周辺地域が一体となって脱炭素、レジリエンス向上、地域活性を目的とした「地域マイクログリッド」にも取り組んでいる。西川氏は「同地でのエネルギー地産地消が実現すれば、地域の脱炭素化率の大幅な向上にもつながります」と期待を示す。

ダイヤモンドエレクトリックHDの地域マイクログリッドの取り組み

SMFLが自らに課している《重点課題》も紹介しておこう。それは、「環境」「次世代」「コミュニティ」「働きがい」の4つである。「ステークホルダーにとっての重要度と、SMFLグループにとっての重要度の2つの観点から、外部の専門家の意見も参考にして決定したものです」(根岸)
なかでもSMFLの持ち味を生かせるテーマの一つである「環境」について根岸は次のように説明する。「SMFLはこれまで、太陽光・風力・水力などの再生可能エネルギーの創出に加え、中古売買やリース満了物件の再資源化といった事業を通じて、脱炭素や循環型社会の実現に向けて取り組んでいます」

「リーダーシップ」と「浸透」が、SDGsと一体化した経営へのカギ

「SDGコンパス」のSTEP4は《経営へ統合する》。KPIや具体的な目標を社内に根付かせるための組織整備が求められる。カギとなるのは、経営トップのリーダーシップだ。

ダイヤモンドエレクトリックHDでは、社長が策定した「経営計画書」を活用。「社会の公器」として同社の基本方針が記載された経営計画書を、朝礼時や昼礼時に1人の社員が毎日1ページずつ読み上げて所感を述べることを通して、目標や理念の浸透を図っている。その効果について西川氏は「社員一人ひとりが下す実務上の判断に、会社の理念が反映されやすくなります」と指摘し、手応えを示す。PMI※1のツールとしても有効で、「当社グループの中核企業が外部企業のグループ化を実施した際、相手企業との『文化的な統合』にこの経営計画書が効力を発揮し、統合が円滑に進みました」(西川氏)という。

ファミリーマートでは、中村氏の発言にもあった「with Sustainability!  活動」が全階層の社員を巻き込んで、SDGsへの取り組みを浸透させている。同活動を特徴付けるのがマネジメント層の関わり方だ。中村氏が説明する。

  • ※1PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション。企業合併・買収の後の統合プロセス

ファミリマートの「with Sustainability!  活動」の全体構図

「with Sustainability!  活動」=ファミリーマートの事業活動を通じて、もっとサステナブルな社会を作っていくために、「コンビに」なって、自分ごととしてSDGsを推進していくための全社活動

「経営トップからのメッセージとして、『サステナビリティの取り組みは、会社の持続可能な発展とイコール』であることを社員に繰り返し発信しています。そしてその『推進責任者』は各本部長。本部長たちは自本部内の部長職以上から『SDGs推進リーダー』を選任します。本部長とSDGs推進リーダーがタッグを組み、各部門を挙げて取り組みをリードする体制です。さらに、本部長と部長が発する “ 部門ビジョン ” に必ずSDGsの要素を盛り込むことを、2023年2月期からルール化しました」

マネジメント層から部下への浸透にもひと手間かける。「各部門で、他人事ではなく “ 自分事 ” としてSDGsに取り組んでいる社員にインタビューを実施。その内容を『サステナ通信』という動画コンテンツとして毎月発信しています。また、座学としての知識のインプットにも力を入れており、『SDGsをビジネスにいかに結びつけるか』をテーマに社内セミナーを開催。そのほか、自社の活動をクイズ形式のeラーニングで楽しく学べるような工夫も凝らしています」(中村氏)

SMFL サステナビリティ推進部長
根岸 豊

他方、経営理念・経営方針を示す「SMFL Way」のOur Vision(私たちの目指す姿)の一つに「SDGs経営で未来に選ばれる企業」を掲げるSMFL。根岸は、「SDGsに正面から取り組み、社員を巻き込むという点でも、Our Visionは重要な役割を果たしています」と語る。「社員の人事評価や営業部店の業績評価など、社内のさまざまな制度にOur Visionが浸透しており、社員が日頃からSDGsを意識できるように整備されています」(根岸)

SDGs経営を推進するエンジンとして、社長を委員長とする「SDGs推進委員会」を設置。同委員会および経営会議で決定された方針を踏まえて、各部門の施策やKPIを定める流れだ。さらに各部店に計約180名の「SDGsオフィサー」も配置。年間を通じてSDGsに貢献した取り組みを表彰する「SDGs賞」も実施している。

SMFLのソリューションが、SDGs経営を後押し

ダイヤモンドエレクトリックHDとファミリーマートの両社が利用しているSDGsの取り組みを推進するリース商品「サステナビリティ・リンク・リース」と「SDGsリース『みらい2030®』(寄付型)」について、SMFLの根岸が話す。

「サステナビリティ・リンク・リースは、お客さまにサステナビリティ活動の目標値を設定していただき、その達成度に応じてリース料が変動するリース商品です。数値目標を設定することにより、社内での活動促進や、投資家や取引先からのESG評価の向上へとつながります。もう一方のSDGsリース『みらい2030®』(寄付型)は、SDGs達成に貢献する公益財団法人や認定NPO法人などに対し、お客さまの賛同を得た上でリース料収入の一部を寄付する商品です。お客さまとのリース契約が公益団体などのSDGs活動を支える源泉となります」(根岸)

サステナビリティ・リンク・リースを利用したダイヤモンドエレクトリックHDの西川氏は、「これまでにない斬新なスキームが当社の目指す方向と一致し、採用を決めました。当社のSDGs経営の対外的なブランディングとしても機能しています」と説明する。

ファミリーマートが「SDGsリース『みらい2030®』(寄付型)」を利用したのは、CO2とフロン類を同時に排出削減できる環境配慮型冷凍・冷蔵庫の店舗導入事業だった。中村氏は「日本初の社会貢献型リースのスキームに共感を覚えました。寄付先を複数団体から選べるので、自社の活動との親和性にまで目配りできる点も魅力です」と語る。

そしてSMFLは2023年の春、また一つ新たな一手を試みた。SDGsへの理解を深めるためのツールとして、コミック仕立ての冊子『コミックSMFL 特集 “ SDGs ”』を刊行したのだ。STEP1《SDGsを理解する》からSTEP4《経営へ統合する》までを漫画で分かりやすく解説することで、SDGsの理解と実践をより広く社会に呼びかけている。

ビジネスや学校教育など、さまざまなシーンで欠かせない存在になった「SDGs」。至る所で掲げられるその旗印に魂が入っているかどうか、3社の取り組みも参考にしながら見極めていきたい。

(内容、肩書は取材時点)

column

漫画で企業のSDGs活動を促進『コミックSMFL 特集 “ SDGs ”』刊行

SMFLは2023年4月、企業にSDGsへの理解・共感を促し、SDGsへの取り組みを促進するために、コミック仕立ての冊子『コミックSMFL 特集 “ SDGs ”』を刊行した。6組の著名漫画家によるSDGsへの共感を生む漫画と、SDGsを正しく理解するためのコラムで構成し、SDGsの全体像を伝える内容だ。漫画制作を担当したSMFL リモート・マーケティング部 スペシャリストの福井健太は、制作の狙いを次のように語る。

SMFL リモート・マーケティング部
スペシャリスト
福井 健太

「SDGsの推進には正しい理解と共感に基づいたアクションが重要です。しかしながら、SDGsの捉え方は個人によりまちまち。自分の手には負えない問題と感じていたり、バズワードとして解釈されていたりすることもあるようです。『コミックSMFL』は漫画を楽しみながらSDGsが自然と腑に落ち、身近に感じられるように制作しました。これからSDGsを推進しようと考えている方だけでなく、社内浸透への利用など幅広く活用いただけるツールです。ぜひダウンロードしてご覧ください」


『コミックSMFL 特集 “ SDGs ”』ダウンロードページはコチラ

(本動画は2023年1月に公開されたものです)

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