「不動産」にも訪れたNEW NORMAL。脱炭素、ESGを推進するSMFLグループの共創戦略

2022年夏、東京・自由が丘に「NEWNO」ブランドを冠した新しい商業ビルがオープンする。開発を手がけたのは三井住友ファイナンス&リース(SMFL)グループのSMFLみらいパートナーズと、不動産事業会社のマックスリアルティーだ。今、不動産業界はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対応、2050年カーボンニュートラルの実現など、大変革の渦中にある。変化の荒波に挑む両社の戦略に迫る。

不動産ビジネスを飲み込んだ、次代のフェーズ

「不動産を取り巻く社会が急速に動き出したと感じています」と語るのは、マックスリアルティー 不動産事業本部プロジェクト推進室 マネジャーの岸本奈々子。新型コロナウイルスの感染拡大に加え、2021年5月に地球温暖化対策推進法(温対法)※1が改正されたことで、不動産業界は新たなフェーズに突入したという。

マックスリアルティー 不動産事業本部プロジェクト推進室 マネジャー
岸本 奈々子

世界各地で頻発する異常気象や、甚大な自然災害。これらが警告するかのように、温暖化の抑止は人類存続の可能性が問われる喫緊の課題だ。だがこれまで、日本の産業界全体の動きは鈍く、不動産業界もそれは同じであった。建物の環境配慮への対応はコストを押し上げる要因になると考えられてきた一方、増加分のコストと賃料アップやランニングコストの削減効果の相関は不透明との認識が根強く、多くの不動産オーナーは対策に消極的だった。

しかし、その状況が一変した。岸本がこう明かす。「今、不動産オーナーからは、環境問題への対策、ESGに関する取り組みや企業姿勢に関するお問い合わせが次々に寄せられています。昨年5月の温対法の改正で、2050年カーボンニュートラルへの道筋が具体的に示されたことがきっかけになったと考えています」。

入居するテナントの意識にも変化を感じるという。「当然ながら、テナント様は自店の経営を優先して考えるものです。このため環境配慮は、これまで “ 二の次の課題 ” でした。しかしそれが変わって、経営と環境の両立が最優先事項になったのです。契約書に『グリーンリース』※2の条項を盛り込むことも、当然の前提として受け入れられつつあります」(岸本)。

一級建築士の資格を持ち、不動産と建築の境界をつなぐ岸本は、この先の不動産ビジネスの動勢を次のように予想する。「すでに外資系企業では、環境認証取得済みのビル以外にはテナント出店しないとの方針を打ち出しているところもあります。世界標準で見ると、環境に配慮したビルの不動産価値が高まり、この動きがこれからも続くことは明らかですし、日本企業も遠からず動き出すはずです」。

ストップ・ザ・温暖化に舵を切る、不動産ビジネスの新たなフェーズ。過渡期のただ中で環境配慮を差別化の象徴として位置づけたのが、SMFLみらいパートナーズの新規不動産事業ブランド「NEWNO」である。

※1 2021年3月2日に閣議決定。脱炭素に向けた取り組み・投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取り組みや企業の脱炭素経営の促進を図る。改正は5年ぶり、7回目

※2 不動産が環境に及ぼす負荷の低減や入居者の住環境・労働環境の改善などについて、ビルオーナーとテナントが契約や覚書などによって自主的に取り決め、協働して実践すること

環境と共創。NEWNOに込めた2つの想い

SMFLみらいパートナーズ 開発事業部 部長代理
弓崎 孝次郎

新たな不動産ブランド「NEWNO」が発表されたのは、2021年7月のこと。コンセプトは《「未来のあたりまえをつくる(Make a New Normal)》だ。そのブランド名について、SMFLみらいパートナーズ 開発事業部の弓崎孝次郎はこう説明する。「世の中の変化とともに、新たな社会課題が次々と出てきます。これらの課題への対応とアップデートを通して、お客さまやパートナーと共に “ 新しい日常 ”(ニューノーマル)を創出しよう、という想いが込められています」。

プロジェクトのキーワードは2つ、「環境配慮」と「共創」だ。SMFLみらいパートナーズの代表取締役社長 寺田達朗は、NEWNOブランドを冠する建物について「SDGsに対する姿勢や取り組みを重視する」と明言している。SDGsの17目標の中でも特に力点を置くのが、目標7、11、13。つまり「環境配慮」である。

NEWNO

SMFLみらいパートナーズの新しい不動産ブランド「NEWNO」。コンセプトは、「Make a New Normal(未来のあたりまえをつくる)」。環境と働く人の健康に配慮し、快適性に優れた不動産開発や、地域コミュニティの活性化に取り組む

NEWNO物件には、環境認証取得が必須要件。取得が必要な認証は、国内環境認証CASBEEのAランク以上か、日本政策投資銀行DBJ Green Building認証の星3以上だ。建物の規模や運営方法に応じ、どちらの環境認証を採用するかが決まる。さらに全棟でRE100※3に適合するカーボンフリー電力を採用する。こうした仕様は、SDGsに取り組む不動産オーナー・テナントやESGを重視する機関投資家などから、注目を集めているという。ブランド立ち上げからまだ間もないものの、「手応えは十分」と弓崎は胸を張る。「環境認証やRE100に関するリリースをしてからというもの、不動産会社やデベロッパーからのお問い合わせが増えています」。

もう1つのキーワード「共創」は、パートナーと共に未来を目指すこと。ブランドのシンボルマークにも表現されているメッセージだ。SMFLみらいパートナーズは、2019年7月に不動産コンサルティングで長年の知見と豊富な実績を持つマックスリアルティーの株式を取得、連結子会社として共同で不動産事業を進めてきた。SMFLみらいパートナーズの強みの1つは、SMFLグループが長年培ってきた顧客とのリレーション(信頼関係)とパートナーシップ。NEWNOプロジェクトにおけるマックスリアルティーとのスクラムは、まさにその強みが生かされた “ 共創 ” の第一歩だ。弓崎が振り返る。「当社にとってNEWNOは新規開発事業であるがゆえに、不動産開発やPM事業(不動産管理)のノウハウなどは不十分でした。それらを、マックスリアルティーのサポートで補えたことは大きな力になりました」。

一方のマックスリアルティーにとっても、NEWNOへの参加には大きな意義があると岸本は語る。同社がこれまで携わってきた開発は、環境対応していてもその効果は限定的な傾向があったからだ。そして何よりも、「SDGsの理念を実践しながらダイナミックに開発を進めるNEWNOは、事業としての社会的影響力が格段に大きい。まさに、私たちが待ち望んでいたプロジェクトでした」(岸本)。

※3 事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的なイニシアチブ

NEWNOが取得する環境認証

NEWNOブランドは、国内で知名度の高い環境認証制度「CASBEE」でランクA以上(サステナブル建築)、DBJ Green Building認証★3以上の取得を目指す。

CASBEE DBJ Green Building認証 BELS
運営 建築環境・省エネルギー機構(IBEC) 日本政策投資銀行(DBJ)、日本不動産研究所 住宅性能評価・表示協会
概要 建築物の環境性能で評価し格付けする手法。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステム 「環境・社会への配慮」がなされた不動産とその不動産を所有・運営する事業者を支援する取り組みとして2011年に創設された認証制度。不動産のサステナビリティをESGに基づく5つの視点から評価し、主に既存物件の環境性能改善に加え、建築・設計の技術的専門家に限らない不動産に携わる幅広い層のステークホルダーが利用する 建築物省エネルギー性能表示制度のこと。新築・既存の建築物において、省エネ性能を第三者評価機関が評価し認定する制度
評価/ランク 総合評価は5段階。評価A以上がサステナブル建築として優良とみなされる。S、A、B+、B-、Cランク ①認証可能物件と、②認証対象外物件に分けられる。①の評価は5段階。不動産市場には「★」に届かない物件が大半を占める。5つ星(★★★★★)~1つ星(★) 5段階評価。5つ星(★★★★★)~1つ星(★)

出典:IBEC、DBJ、BELS

「NEWNO自由が丘」が提案する、ビルとまちとの新しい関係

2022年夏にオープン予定の「NEWNO自由が丘」の計画地は、東急東横線・自由が丘駅から徒歩2分。そこから発信されるニューノーマルのテーマは、「ビルとまちとの新しいつながりのカタチ」である。

自由が丘は、住民や商業関係者が独自に制定した「自由が丘地区街並み形成指針」を持つ、街並みへの関心が高い地域。そのため今回の計画では、開発の初期段階からまちづくりを推進する団体との協議を重ね、景観に配慮した “ 自由が丘らしい建物 ” を目指した。建物前面がガラス張りのデザインは、ビル内で活動する人の様子をファサード(建物の正面、顔)越しに外部へと伝え、建物と通りを一体化させる。「ビルでもあり、その外観を介してまちとつながる中間領域でもあります。まちのにぎわいに寄与することを期待しています」(岸本)。

2022年夏にオープン予定の「NEWNO自由が丘」

小型商業ビルのNEWNO自由が丘は、2022年1月竣工し夏頃にオープン予定。環境認証は、DBJ Green Building Plan★3を2021年4月に取得
名称 NEWNO 自由が丘
所在地 東京都目黒区自由が丘2-11-21
延床
面積
1,063.33m2(321.65坪)
構造 鉄骨造
規模 地下1階・地上5階
用途 商業
竣工 2022年1月

景観による空間的なつながりに加え、テナントで働く人とまちの住人を結ぶ人的なつながりも計画中という。岸本の言葉が弾む。「自由が丘ではお祭りがよく開催されます。SMFLみらいパートナーズと当社で、そんなイベントで協力できないかを考えています。テナント様にビル前への出店をお願いするなど、まちと一緒に盛り上がることをやりたいですね」。“ 共創 ” の足音が、早くも聞こえてきそうだ。

さらにもう1つ取り組んでいることがある。事業継続計画(BCP)※4だ。弓崎が説く。「テナント様向けの食料備蓄倉庫を設置します。今後、商店会とも相談し、災害時に役立つ仕組みにしたい」。BCPの作成と災害に備える仕組みづくりは、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標13「気候変動に具体的な対策を」に通じるアクションでもある。

※4 企業が緊急事態(自然災害、大火災、テロ攻撃など)に遭遇したときに、事業資産の損害を最小限にとどめながら中核となる事業の継続・早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを決めておく計画

今よりもさらに先へ。刷新し続ける“ニューノーマル”

NEWNOは今後どのような道を進むのだろうか。弓崎の視線は、NEWNO自由が丘の少し先へと向けられている。「SMFLグループは、太陽光発電によるPPA(発電設備の第三者所有による電力購入契約)バイオガス発電、中小水力発電などの環境エネルギー事業を積極的に展開しており、とりわけ再生可能エネルギーについてはかなりのノウハウを蓄積しています。今後は、これら他事業のノウハウを活用したNEWNOビルをつくっていきたいですね」(弓崎)。

すでに、NEWNO自由が丘を含む賃貸不動産においてCO2フリー電力の導入をすることを発表。加えて今後は、SMFLが所有する太陽光発電設備からNEWNOビルに電力を供給する、自家消費型発電の利用も検討しているという。

岸本も「アフターコロナ時代の新しい付加価値創出に取り組みたい」と、今後の不動産開発に意欲を示す。「人の移動が制約された結果、建物の価値が見直されています。制約下にあっても建物をポジティブに利用したくなる仕掛けや、新たな付加価値が求められているのです。注目しているのは、ウェルネスという切り口。健康や快適性に特化したオフィスやビルをつくれば、意味のあるニューノーマルを発信できるはずです。CASBEEにも『ウェルネスオフィス』の評価認証があり、その評価の意義がより広く認められるようになることで、認証を取得した物件のオーナーは賃料面でメリットを得られる可能性があります※5」(岸本)。

従業員が働く環境や、ビルに携わる人の健康を大切にすることは、SDGsの目標とも共鳴する考え方だ。

NEWNOプロジェクトは現在、博多・名古屋・高槻など、複数の案件が各地で同時に進行中。建物の規模や想定するテナントはバラエティに富む。それぞれのNEWNOで、その地にふさわしいニューノーマルが提案されるに違いない。“ 日常 ” を更新し続けるNEWNOの挑戦に注目したい。

※5 ザイマックス不動産総合研究所の研究レポート「ウェルネスオフィスの経済的価値の分析」で指摘

※ 新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で、取材・撮影を実施しております。

(内容、肩書は2022年3月時点)

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