行政サービスの向上とそのスピードアップにリースが貢献。資金調達に加え、維持管理業務のアウトソーシング化による課題解決

リース業界最新動向 Vol.12 官公庁のリース活用編

公益社団法人リース事業協会が発表した「リース統計」によると、2019年度の官公庁向けリース取扱高が、2012年度以降7年連続で前年を上回り、国内リース取扱高の総額に占める割合も8%から12%へと上がっている。2020年度は残念ながらコロナ禍の影響により官民双方向けの取扱高は一時的に減少したものの、今後も官公庁など向けの取扱高は再び拡大していくものと思われる。官公庁のリース活用は、「資金面での対策に加え、人員不足にとっても具体的な対策となる」という。コロナ禍における官公庁のリース活用について、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の専務執行役員・黒田淳が語る。

人口減少・少子高齢化・コロナ禍。
財政負担を軽減し、安定した公共サービスに貢献

専務執行役員
黒田 淳

「人口減少・少子高齢化に伴う地方財政の悪化や、公共施設の老朽化に伴う設備更新需要に対して、調達手段としてリースの活用が増加してきた結果です」。背景をそう分析するのは、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の専務執行役員・黒田淳だ。

「2004年に施行された地方自治法や施行令の改正で、従来は単年度ごとに契約を更新していたものが長期で契約できることになり、官民双方の事務簡素化が進んだことも追い風となりました。日本にリースが誕生してからすでに半世紀以上が経過したことに照らせば、官公庁でのリースの浸透はまだ道半ばですが、今後は、コロナ禍対応のため、地方公共団体の財政調整基金が大幅に減少し、調達手段としてのリースの活用が一層広まると見ています」

「GIGAスクール構想」や「行政のデジタル化」
促進のカギとなる、リース活用

2019年12月に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」を契機に、学校教育の現場ではICT環境の整備が進められている。多くの自治体が、小中学生に学習用の端末を1人1台配備するべく、リースを活用してパソコンなどの機器を導入。同時に政府は、2021年9月にデジタル庁を創設するなど、「行政のデジタル化」に向けた動きが加速している。

「これは一連のコロナ禍の反省から、行政のデジタル化を進め、住民の利便性の向上と行政運営を効率化するのが狙いです」と前置きした上で、促進を後押しするICT機器の導入においても、「情報通信技術を活用したサービスや機器など、特に陳腐化が早い分野には、リースが適しています」と黒田は言う。

自治体向けにSMFLがリースで取り扱う主な設備機器

住民サービスの地域間格差を解消。世代間での資金負担の公平性担保にも寄与

ICT機器以外では、防犯灯や道路照明灯のLED化、防犯カメラ、公立小中学校の教室への空調設備にもリースが多用されている。「近年、異常気象による自然災害が多発しています。被災時には、学校が避難所に指定されることも多いため、先進国の中では遅れていた、体育館空調の整備が今後加速することが予想されます。省エネルギー・二酸化炭素(CO2)削減、地域の安全・安心など、幅広い分野にリースが貢献できることを示しています」

官公庁は、これまで税収や交付税を財源に各年予算内で設備投資を検討してきた。しかし、当然のことながら予算枠に収まらない設備投資も存在する。

「予算枠に収まらない設備を、リースを使って導入することで、住民サービスの地域間格差の解消や、長期間使用される設備に対して、世代間の資金負担の公平性を保つことが可能になります。また、リース期間中の保守や保険の付保、満了時の物件処分をリース会社が担うことで、設備の安定的な管理と自治体職員の業務負担軽減につながることも理解されつつあります」

社会を良くするための幅広い改善施策となるリースの利点を挙げ、黒田は「行政サービスの向上、地域経済の活性化など、サステナブルな社会の創造をしっかりとサポートする役割を、リース業界全体で担っていきたい」と、抱負を語った。

SMFLによる自治体への導入事例※イラストはイメージ

市役所

県行政LAN・WANモバイル端末など
(中国地方 2019年度)

無停電電源装置用蓄電池
(関東地方 2019年度)

市庁舎・市民文化会館
防災設備
(関東地方 2019年度)

排水ポンプ車
(中部地方 2019年度)

教育施設

GIGAスクール構想学習用タブレット端末
(関東地方 2020年度)

厨房機器(給食室)
(関東地方 2020年度)

グランドピアノ
(関東地方 2019年度)

小中学校空調設備
(中部地方 2020年度)

市有地

フロート式太陽光発電設備
(関東地方 2016年度)

屋外運動場

人工芝設備
(近畿地方 2020年度)

医療施設

全身用磁気共鳴断層撮影システム(MRI)
(国立大学法人 2020年度)

警察機関

緊急配備支援システム機器
(北陸地方 2020年度)

街路

市街灯LED
(中部地方 2019年度)

防犯カメラ
(近畿地方 2020年度)

屋内運動場

トレーニングマシン
(近畿地方 2016年度)

浄水施設

浄水場中央監視制御設備
(関東地方 2017年度)

自治体の人員不足にも対応
リースが持つ “ 提携サプライヤーによる定期点検 ” という利点

SMFLは自治体向けのリースに積極的に取り組み、社会・教育環境の整備に努めている。2020年10月には東村山市(東京都)の中学校7体育館の空調設備、そして2021年7月には静岡県の高等学校735教室の空調設備が、SMFLのリースによって稼働した。また、文部科学省の「GIGAスクール構想の実現」の補助金を活用する都内の区へ、小中学校向け学習用タブレット端末約5万台をリースにて提供した。

背景にあるのは、自治体職員の減少だ。「1994年から2020年4月の間に、自治体職員は52万人減っています。LEDを例に挙げると、購入した場合は不点灯が検出されるたびに自治体側での対応が必須となりますが、リース活用には外部委託という側面もあり、SMFLの提携保守業者による定期点検を受けられます」。つまり、技術系の人員不足により自治体内で技術の継承が課題となる場合に、リース活用が有用な解決策となるわけだ(自治体とSMFL間の契約がおおむね保守込みのリースである)。

人員や予算などの制限を可能な限り取り払い、安全で持続可能な街づくりに大きく役立つ、官公庁のリース活用の今後に期待したい。

※出典:令和2年地方公共団体定員管理調査結果

(内容、肩書は2021年11月時点)

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