業務の改廃+プロセスの効率化。ブレない目的意識で「RPA」を推進。 “一歩先”を行くSMFLのチャレンジ

RPA(Robotic Process Automation)とは、一言で言うと既存ワークフローの自動化技術だ。一定の業務処理をデジタル化し、生産性を飛躍的に向上させる。今注目されるこのRPAを、 “ デジタル先進企業 ” を掲げる三井住友ファイナンス&リース(SMFL)が推し進めている。業務を実際に担っている現場、つまり各部の社員から推進担当のリーダーを募り、技術面を本部の専門チームが支援。改善への貢献度は人事評価にも反映させ、モチベーションを高める。社内意識の変化をもたらしたSMFLの取り組みを紹介する。

現場の取り組みを専門チームがサポート。効率化で年間1,000時間を創出したケースも

生産性を高めたい経営者と、煩雑なルーティンワークから解放されたい従業員。双方に高い効果を発揮するのが、RPAだ。活用シーンは、単純なPC操作からシステム間のデータ連携にまで広がる。SMFLのRPA推進プロジェクトを技術面で支える1人、川原雅司は、「世の中全体にテレワークが普及し、業務のデジタル化が加速しました。RPAの導入機運、活用機会は、他社を含め今後倍加するはずです」と明言する。

「ただ、SMFLの場合はそれ以前から……」と川原は振り返る。「組織のトップがRPA推進にコミットしていた点が強みになっています」。

企画部クオリティ室 ブラックベルト
川原雅司

SMFLがRPAを本格導入したのは、2017年に遡る。2019年には橘正喜代表取締役社長が「デジタル先進企業」を宣言。デジタルをエッジとし、ビジネスの変革を推進する企業を目指す、と掲げた。

「デジタル先進企業」を掲げるSMFLの社内改革には、3つのステージがある。「業務改善」「営業支援」「デジタルのビジネス化」だ。RPAはこの中で特に「業務改善」で大きな効果を発揮し、AI(人工知能)と並ぶ最重要アクションに位置づけられる。川原が狙いを説く。「RPAの効率化により、年間で1,000時間以上の時間削減効果を上げたケースもあります。そこで創出された時間は、お客さまに対しより高い付加価値を提供するために使えるのです。RPA最大のメリットは、この点です」。

SMFLのRPAを特徴づけるのは、その導入スタイル。プロジェクト担当者と専門チームだけが導入に努めるのではなく、本社の各部・全国の各拠点が横断的に効率改善を図りながら取り組む点が眼目だ。

「社内の各部から『RPAアンバサダー』を募り、トレーニングを経て任命します。アンバサダーはRPAの推進・管理および運用などの現場リーダーで、彼ら・彼女らを中心に各部がまとまって効率化を進める体制です。現在、RPAアンバサダーは全社で97名。とはいえ一般社員なので “ 業務効率化のプロ ” ではなく、RPAの技術的な知識がもともとあったわけでもありません。そこで支援を行うのが、『CoE』(Center of Excellence)と呼ばれる専門チーム。私もその1人です。CoEはアンバサダーへのトレーニングを実施したり、技術情報を提供したりします。いわば、効率化を一路目指すランナーたちの伴走役ですね」(川原)。

アンバサダーを中心にした現場主体のRPA推進スタイル

RPAは目的にあらず。標的は業務の変革にあり

「RPA導入で最重要なことは、業務の改善と効率化が実現したかどうか」だと川原は強調する。なぜなら、DXの本質は単なるツールのデジタル化ではなく、デジタル化による変革、新しい価値の創出だからだ。

「RPA自体が目的化するようなアプローチを、当社では決して選びません。改善や効率化の手段としてRPAが最適ならばRPAを選ぶ、そうでなければ選ばない──このスタンスが徹底されています。具体的には、まず現場に “ 業務の棚卸し ” をしてもらい、それぞれの部の業務の中身やプロセスを把握します。その上で、個々の業務の要・不要を効率化の観点から判断。不要であれば、その業務は廃止です。それが効率化のインパクトとして一番大きい。もし廃止できないのであれば、次善策として改変の可能性を探ります。こうして極力シンプルにそぎ落とし、なおも残った業務に関し、初めてRPAの導入を検討するのです」(川原)。

加えて川原が指摘したのは、“ よくある落とし穴 ”。「ある業務に含まれるフローのすべてをRPAに任せることは避ける」のだという。「RPA化の範囲は、画然たること。たとえば、シンプルにそぎ落とした結果、ある業務プロセスにABCの3パターンがあったとします。全体の9割以上をパターンAが占めていたら、BとCは思い切って無視するのです。ビジネスに変化があると、レアパターンのBやCから、DやEといった新パターンが派生する可能性もある。その全パターンを網羅するRPAを設計すると複雑になりすぎ、運用するのが負担になる。それでは意味がありません」(川原)。

RPAを導入する場合、外部に委託する選択もある。SMFLでも外注していた時期が過去にあったが、現在は基本的にすべて内製化。RPA化を一括してベンダーに頼むと、細かな作業やレアパターンのプロセスまでRPA化されがちで、開発コストがかさみ時間もかかるためだ。さらに「RPAの運用・管理」の観点での合理性も高い。

「RPAは、導入したら完了、ではありません。ビジネスやシステムの動きに伴う環境変化に応じ、機能を更新し続けなければならないのです。また、業務の現場と開発部門が離れていると、本当に求めているRPAと提供されるRPAとの間にどうしてもギャップが生じます。対して、現場で何が必要かを知り尽くしたアンバサダーが開発・導入・運用(管理)に携われば、現場の最新ニーズに常にアジャストしたRPAで業務の効率化を図れるのです」(川原)。

業務改善と組み合わせたRPA導入の手順

人事評価で動機付け。「成長機会になった」との社員の声

実際にRPAに取り組んでいるSMFL社員の声はどうか。話を聞いたのは、新田美穂、高瀬桐江、谷内美仁の3人。いずれも、リース満了物件の返却手続きなどの業務を担う「リソース企画部」でRPAアンバサダーを務める。

RPA導入には、もちろん苦労もあったという。同部RPAアンバサダーを束ねる新田は「導入の入り口となる “ 業務の棚卸し ” が最大の難関でした」と振り返る。

リソース企画部 部長代理
新田美穂

「誤解も多いのですが、RPAは『何でもできる万能ロボット』ではありません。導入に際して、“ RPA化したい業務は何か ” を部内のメンバーにヒアリングしたところ、表計算ソフトのマクロ機能で対応できる単純な作業や、逆に、AIでなければ実現できない複雑なプロセスの業務など、RPA化には適さない要望が多数挙げられてしまいました。そもそもRPA化よりも廃止にしたり、プロセス自体を改めたりするべき業務がいくつもあって、それらを一つひとつ仕分けて整理するのが大変でした。現在は “ RPA化したいこと ” ではなく “ もっと効率化したいことは何? ” という聞き方で、RPAになじむかどうかをアンバサダーがある程度判断し、選別するやり方に落ち着いています」(新田)。

RPA化しやすい業務

RPA化に向く RPA化に不向き
  • 処理件数・量が多い
  • 業務フローが一定
  • 人の手による反復作業が多い
  • 処理件数・量が少ない
  • 作業そのものの必要性が低いもの
  • 複雑なデータ入力

RPAが得意な業務の一例

送信
  • 請求書作成メール送信
入力・登録
  • 簡単なデータ入力
  • エクセルや注文書から事務システムへの入力
システム共有
  • 複数の社内システムでの情報確認
チェック・修正
  • 競合ECサイトの価格情報の目視確認
  • 会員情報の修正対応
  • 自社サイトや資料などの誤字脱字チェック、リンク切れのチェック
SNS関連
  • インターネット上での風評管理
  • メディア・SNSへの投稿作業

各企業の担当者の中には、RPAの導入には「ITの専門知識を持つ人材が社内に一定数必要だろう」と考える人がいるかもしれない。だがSMFLのRPAアンバサダーの多くは、事務系の仕事に携わる一般の社員だ。アンバサダーに就任した経緯を高瀬が振り返る。

リソース企画部
高瀬桐江

「私はパソコンが苦手で、表計算ソフトも簡単な関数を扱える程度。そんな自分が、まさかRPAの開発や運用(管理)をする側になるとは想像していませんでした。それでも、業務のデジタル化の流れが加速している今、RPAの仕組みくらいは全社員が共有すべきだと感じ、思い切って手を挙げました」(高瀬)。

もう1人の谷内も含め、3人は「技術面での不安はほとんどなかった」と口を揃える。RPAアンバサダーは、自ら挙手した社員がトレーニングを受けて、任命される。3カ月程度のトレーニングを通し、主に動画と個人演習により実践的な知識と技術を習得。着任後、操作・運用や取り組みそのものについて困ったことや疑問が生じた場合は、CoEが用意したヘルプデスクにチャットやオンラインミーティングなどでいつでも相談できる。だから、アンバサダーが現場で孤立する心配はない。

会社としても支援体制を整備。SMFLではMBO(目標管理制度)に業務効率化への取り組みを指標設定し、人事評価に反映。さらにRPAアンバサダーの技能認証制度を設けるなど、社員の「やる気」を後押ししている。そんなRPAアンバサダーになったことが「職業人としての自分を改めて見直すきっかけになった」と高瀬は明かす。

「事務職の仕事は、成果を数字で評価することが難しい面があります。でも、業務効率化への取り組みがきちんと評価されることは、モチベーションを高めてくれます。私も、表計算ソフトの高度なマクロの知識など以前は避けてきたことも『勉強しなきゃ!』という気持ちになり、仕事に対する使命感がより強まりました」(高瀬)。

谷内が強調したのは “ やりがい ”。「業務が目に見えて効率化したとき、同僚たちから『RPAのおかげでとても楽になった!』と言ってもらえます。それが一番嬉しい」と表情がほころぶ。

積極果敢にDXを推し進めるSMFL。この中でRPAは、年間の創出時間1,000時間超の事例など、効率改善の効果は絶大だ。だがそれにも増して「社員のチャレンジ精神を育み、成長を促した」こと──この効果の大きさこそ、まさに数字では測り知れない。

※ ページTOPの写真:左から順に、リソース企画部 新田美穂、企画部クオリティ室 川原雅司、リソース企画部 高瀬桐江、谷内美仁

※ 新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で、取材を実施しております。

(内容、肩書は2022年2月時点)

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