技術変革の波で需要が高まる計測器市場。機器の選択肢と計測環境を提供するSMFLレンタルのソリューション

リース業界最新動向 Vol.22 計測器レンタル編

電気の電圧、電流、周波数や被測定物の温度などの各種データを計測・記録する計測器は、自動車や通信、エネルギー関連といったさまざまな産業分野に欠かせない。関連市場は新型コロナウイルス感染拡大の影響から回復し、EV/FCV※1を中心とした「次世代自動車」、技術変化が激しい次世代高速通信規格「Beyond 5G/6G※2」において新たなレンタル需要が生まれている。計測器の市況と最近の潮流について、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)グループでレンタルを主業とするSMFLレンタルの執行役員 計測器事業部長・丸本幸司に聞いた。

  • ※1EV/FCV:電気自動車/燃料電池自動車
  • ※2Beyond 5G/6G:5Gの次の世代の移動通信システムのこと

関連市場は新型コロナ禍の影響から回復へ

SMFLレンタル 執行役員 計測器事業部長
丸本 幸司

「計測器は、研究開発、設計、生産、検査など、産業のあらゆる場面で用いられ、基礎から応用まで使用される機器です。新型コロナウイルス感染拡大の影響による景気低迷で関連市場は一時的に落ち込みましたが、2021年度はコロナ禍の影響を受ける前の水準にまで回復しました」

こう語るのは、SMFLレンタル執行役員 計測器事業部長の丸本幸司だ。日本電気計測器工業会(JEMIMA)によると、2022年度の電気計測器の国内売上高は、前年度比1.3%増の6,828億円の見込みに対して、実績は前年と横ばいの6,741億円となった。部材不足や為替変動といった不安定な要因に影響を受けたが、特に半導体製造装置に関係する製品群の好調が寄与している。

2023年度の計測器市場(海外拠点売上を含む)について、丸本は「ロシア・ウクライナ問題や為替変動、半導体をはじめとする部材不足などが不安定要因として挙げられることから、JEMIMAの中期見通しからも分かるようにおおむね横ばいから微増で推移すると見込んでいます」と説明する。

出典:日本電気計測器工業会「電気計測器の中期見通し2022~2026年度」

最新の計測器で正確性・信頼性の確保。レンタル独自の付加価値の数々

「計測器の需要の回復とともに、レンタルの引き合いも増えています」と丸本は語る。計測器レンタルのメリットとして、初期投資を大幅に抑えて導入・運用できることが挙げられる。また、購入やリースとは異なる付加価値も多い。その1つが「計測器の校正」だ。

「日本で計測器のレンタルサービスが立ち上がった1970年代半ば以降、レンタル会社は製品の貸し出しとともに、計測器の受託校正サービス(後述)、受託計測サービス、資産管理サービスなどを提供し、市場ニーズの変化に対応して事業領域を拡大してきました。
その背景として、計測器の運用では使用する実機が正しく測定できているかを、国の基準に紐付けられた『標準器』によって確認する『校正』というメンテナンス作業が欠かせないことが挙げられます」

計測器の正確性・信頼性は校正を受けることで確保されるが、開発や生産に多忙な企業では定期的な校正にまで手が回らないことがある。「そういった場合にレンタルを活用すれば、推奨される校正周期に従った校正がレンタル会社の責任と負担で行われるため、計測器の正確性に対する心配事がふっしょくできます」

たとえばSMFLレンタルでは、計測器レンタル会社ならではのノウハウで短納期を実現し、メーカーを問わず幅広い機種の校正が可能だ。「国際規格(ISO9001およびISO/IEC17025)に則った標準器による確かな校正が行われている計測器を、リーズナブルなレンタル料で提供しています」と丸本は言う。

最新の技術潮流に対応する計測環境をワンストップで提供

計測器の運用では、目覚ましい技術の進歩に追随するために本体の恒常的なバージョンアップも必要となる。ただ、「これについても校正と同じように十分に手が回らず、いざという時にバージョンが合わず意図した測定ができないというケースも散見されます」と言う。

「レンタルであれば、バージョンアップについても、レンタル会社の責任と負担で常に最新の状態が維持されるため、ユーザーは安心して測定できます。また、高額な計測器となると修理費用も高額になりますが、修理費用も(動産総合保険の付保などにより)レンタル会社が負担するため、突発的な費用負担も避けることができます」

SMFLレンタルでは、スペクトラムアナライザやオシロスコープ、デジタルマルチメータといった各種計測器を取りそろえるほか、最新の技術潮流に対応した「計測環境」をワンストップで実現する計測ソリューションも提供しています。

「具体的なソリューションとしては、『Beyond 5G/6G関連』『自動車関連測定』『エネルギー関連測定』『電子部品関連測定』『航空宇宙&防衛関連測定』『有線通信関連』『高速デジタル関連測定』などがあります。最新の技術分野でお客さまが直面する課題を解決し、各種システムの運用を強力にサポートしています」

中でも「自動車関連測定」「Beyond 5G/6G関連測定」分野について、丸本は「近年は技術革新が激しいため、レンタルサービスも特にこの2分野への対応に力を入れています」と説明している。

「自動車業界は、100年に一度といわれる大変革期を迎えており、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の新たな潮流が押し寄せています。また、移動体通信の規格はほぼ10年ごとに新たな世代へアップデートされ、近年普及している5G(第5世代通信)に関しても、早くも次世代となるBeyond 5G/6Gの研究開発が進められています。それぞれの市場は日々進化しており、求められる測定ニーズも難易度が高まっています」

たとえばBeyond 5G/6Gで使用される100GHzを超えるミリ波帯の測定には、計測器に加えて電波暗室や電波暗箱などの計測環境が必要となる。また、波長が短く再現性の低いミリ波帯の測定は非常に複雑であり、精度の高い位置合わせや正確な測定方法を確立させる必要があるため、既存の測定システムの拡張に加えて、電波暗室の改修や自動測定システムのセットアップが求められる。そこでSMFLレンタルでは、ユーザーが安心して利用できるよう、システムインテグレータと協働し、これらを一貫してサポートできる体制を構築している。「既存の計測システムを有効活用し、必要最低限の物品調達でシステムアップが可能となるため、ユーザーの初期費用低減に貢献しています」

SMFLレンタルが提供する計測サービス(一例)

自動車業界では、前述したCASE実現の過程で特に技術的な課題が多いV2X※3と電動化、そして自動運転の実現に向けた技術開発において、新しい計測機器やテストコースなどの大規模な開発施設を必要とすることが増えている。「これまでテストコースを利用していなかった部品メーカーから、競争力の維持や向上のためにテストコースを使って開発したいというご要望も増えています」
SMFLレンタルでも、自動車の開発用に「計測器・テストコース・ドライバー(運転手)」をセットにしたソリューションを提供している。それぞれを個別に手配する手間とコストが省け、これまでテストコースを利用していなかったユーザーに好評を博している。

また、電気自動車(EV)の開発工程は、従来のハイブリッド車に加えてバッテリー式電気自動車(BEV)へと拡大しつつある。これまで化石燃料を主体としていたパワートレインは電動化(バッテリー、インバータ、モータ)を中心に開発が進められ、航続可能距離を伸ばすために車載部品の小型軽量化や、パワー半導体(SiC/GaN)導入による低損失化などさらなる高効率化が求められる。このような技術開発において正確な値を計測するために、電力計やオシロスコープといった汎用計測器はもちろんのこと、100kWを超える大型の直流電源や負荷装置、さらにはダイナモ試験装置などさまざまな試験システムをレンタルで導入が可能なソリューションを提供している。

「計測器市況が回復する中で、レンタル会社は最新の技術潮流に対応し、ユーザー目線のソリューションを提供し続ける必要があります」
日進月歩の技術革新の最前線で次の潮目をどう読むか。SMFLレンタルの次の一手に注目が集まる。

  • ※3V2X(Vehicle to X):クルマとあらゆるモノをつなげる通信技術のこと

(内容、肩書は2023年4月時点)

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