加速する「保有から利用へ」のパラダイムシフト。
新たな価値を生み出す“攻め”のITソリューション導入に、レンタルという最適解

リース業界最新動向 Vol.21 IT機器レンタル編

業務効率化やコスト削減を実現し、経営リソースを本業に集中できるのがレンタルサービスの利点だ。IT機器やロボットは技術革新が激しい分野だけに、必要に応じて柔軟に導入ができるメリットは大きい。こうしたIT機器のレンタル需要の高まりや最近の潮流について、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)グループでレンタルを主業とするSMFLレンタルの常務執行役員 コーポレートセールス事業部長の北原正に話を聞いた。

レンタルサービスの活用で業務効率化とコスト削減を実現

「パソコンに代表されるIT機器のレンタルニーズが高まっています。コロナ(新型コロナウイルス感染症)禍によりリモートワークの機会が増え、経済の先行きも見通しにくくなっていることから、自前で一式をそろえると高額になるサーバーやネットワーク機器をレンタルで利用する企業が増えています」

SMFLレンタル 常務執行役員 コーポレートセールス事業部長
北原 正

こう語るのは、SMFLレンタルの常務執行役員 コーポレートセールス事業部長の北原正だ。企業がIT機器をレンタルで導入するメリットはさまざまあるが、北原が挙げるのは、業務効率化と、保有に伴う総コストの削減効果だ。

「たとえばパソコンの場合、企業の担当者は機器導入時の初期設定に始まり、運用管理、故障対応、廃棄時のデータ消去・処分など、製品ライフサイクル全体で管理する必要があります。加えて管理に伴うコストも発生します。コスト要因の主たるものはセキュリティ対策や障害発生時対応などですが、ほかにもヘルプデスク体制の構築と運営も必要です。一方で、レンタルサービスを活用すれば、パソコンのキッティングや修理・メンテナンスにかかるコストもレンタル料に含まれ、ハードウエア保管のための倉庫も不要です。資産管理などの事務負担も軽減できます」

レンタル会社は保守サービス用の予備機を保有しているのが一般的なため、ユーザーはレンタル中に機器が故障しても予備機での代替が可能だ。「代替機を提供できるレンタルであれば、故障などのトラブルでパソコンが使えない・システムが運用できない時間が最小限で済み、業務への影響を軽減できます」

こういった、IT機器にまつわるさまざまな業務をアウトソーシングでき、結果として得られた時間とお金を企業の利益を上げるための活動に振り向けることができるのも、レンタルサービスの大きな魅力だ。

「IT機器をレンタルすれば、管理や運用に追われる “ 守り ” の情報システムから、新たな価値を生み出す “ 攻め ” のITソリューションへと変革をもたらすことも可能です」

期待される「保有から利用へ」の対応

IT機器の分野では、「すべてのモノがインターネットにつながるIoT時代の本格的な到来を迎え、従来のリースやレンタルといったハードウエア単体の期間定額料金による賃貸に加えて、ハードウエアの利用に付随する新たなサービスに対するニーズも高まっている」と、北原は言う。

「背景には『モノを保有する』時代から、『モノを利用する』時代へとパラダイムシフトが加速していることがあります。特に今後の潮流としては『サブスクリプション(定額課金)化』が注目されます」

すでにアプリケーションでは、ライセンスを購入するのではなく、使用した期間に対応した使用料を支払う形態が多くなってきている。この流れが「ハードウエアにも波及します」と北原は分析する。

「技術革新、クラウドサービスの拡大などIT環境の目覚ましい変化による必要な機器・サービスの変動、人材の流動化、そして企業におけるIT機器の利用期間の多様化などを考えた場合、ハードウエアもアプリケーションと同様、必要な時に期間の縛りなく柔軟に利用できるサブスクリプションの要望が高まっていくはずです」

「保有から利用へ」の流れの中で、「ハードウエア単体のレンタルでは『従量課金方式』のニーズも増えるでしょう」と、北原は指摘する。

「たとえば、パソコンを導入しているユーザーはピーク時を想定して導入台数を決定しているため、繁閑によって資産が遊休化することがあります。もし繁忙期に不足する台数だけレンタルで補うオペレーションを導入できれば、効率化とコスト削減につながるのです。ユーザーの利便性をさらに向上するためには、実稼働台数に応じてレンタル料が変動する従量課金方式のレンタルが適したケースが多いことでしょう。このように多様な料金体系を臨機応変に選択できるのも、レンタルサービスの魅力です」

実稼働台数に応じてレンタル料が変動する従量課金方式のレンタルや、期間制限のないサブスクリプション(定額課金)など、レンタルサービスでは多様な料金体系を臨機応変に選択することが可能となる

ロボットのテスト導入にも活用されるレンタル

経営環境の大きな変化への対応が求められる中で、IT機器と並んでレンタル需要が増えているのがロボットだ。「ウィズコロナ時代となった現在では、IT機器のほかに、工場、倉庫、オフィス、店舗などで人と協働してサービスを提供するロボット分野でも需要が高まり続けています。技術革新によるロボットの進化とレンタルによる多様な導入手段の提供により市場が拡大していて、特にサービスロボットと呼ばれるコミュニケーションロボット、清掃ロボット、配膳ロボットの需要が高まり続けています」

サービスロボットの多くはAI(人工知能)技術を搭載し、ユーザーが簡単にセットアップできる。感染症対策や人手不足対策として導入し、省人化を実現することで人手不足を補っている。一方で、ニーズはあるもののまだまだ導入のハードルも高いのが実情。そこでサービスロボットの導入時に活用されることが多いのが、短期レンタルサービスだ。

「高額な製品を本格導入する前などは特に有用性は高いでしょう。新商品として発売されるロボットの多くは、導入後、効果が検証できるまでに数カ月を要します。そのためまずは短期レンタルで試験導入し、効果検証した後に長期レンタルやリースに切り替えて本格導入するといったケースがよく見られます」

SMFLレンタルがレンタルしている物件(一例)

遠隔操作コミュニケーションロボット
“temi(テミ)”

AI (人工知能)搭載型清掃ロボット
“Whiz i(ウィズ アイ)”

物流支援ロボット
“CarriRo(キャリロ)”

協働ロボット “CRX”

顧客に寄り添った商品・サービスの提供体制を強化

急速に変化する市場環境と企業ニーズに対応するため、これからのレンタルには機器のラインアップ拡充と提供するサービスの多様化がますます求められる。

「われわれは、メーカーの制限なく幅広いラインアップの機器を取り扱っています。パソコンを例にすると、キッティング・サービスやソフトウエアレンタルなどのオプションサービスをメーカー問わず組み合わせるなど、ユーザーに最適なメニューをご提案することができます」

多様化する時代に、顧客のニーズへより迅速に対応できる体制も整えた。SMFLレンタルでは2022年4月、IT機器を専門に取り扱っていたIT事業部と、ロボットを主に取り扱っていた新規開発事業部を統合し、新たに「コーポレートセールス事業部(以下、CS事業部)」が発足した。

CS事業部では、これまで両事業部で取り扱っていたレンタル商品・サービスはもちろんのこと、今後取り扱う新たな商品・サービスについてもワンストップで提供できる体制が整った。取引先との窓口が一本化されたことで、SMFLの各営業部との連携も強化された。北原は言葉に力を込めて次のように述べる。

「新体制の下、お客さまに一層寄り添い、柔軟かつ複合的なご提案をスピーディーに行ってまいります」

時代の流れに即応し、進化の歩みを止めないSMFLグループのこれからの取り組みに注目したい。

(内容、肩書は2023年3月時点)

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