リースのオンバランス化、議論続く。21年度内に草案公開も

2019年度、国際会計基準(IFRS)および米国会計基準で新リース会計基準が適用され、オペレーティング・リースがオンバランスされるなど、大きな影響が生じた。日本でも、2021年5月時点、計232社がIFRS適用もしくは適用を決定している。今後、多様なリースをどのように財務諸表に反映し、国際ルールとどのように整合性を取っていくのか。リース会計における長年のテーマについて、財務会計基準機構(FASF)の基準諮問会議委員を務める、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)常務執行役員・正脇久昌に聞いた。

オペレーティング・リースのオンバランス化、その後

企業活動における資産の効率的な調達手段として「リース」は身近な存在だ。一方で、会計上の取り扱い、とくに貸借対照表に計上する(オンバランス)かどうかについては、常に議論されている。財務会計基準機構(FASF)の基準諮問会議委員を務める、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の常務執行役員・正脇久昌は次のように解説する。

常務執行役員
正脇 久昌

「リースは、長年にわたって法律上『賃貸借』として会計処理(オフバランス)されてきた半面、資産の自社所有に近いもの(ファイナンス・リース)から一時的なレンタル(オペレーティング・リース)まで、多様な形態があることも特徴です。それらすべてに対して、会計上、同一の取り扱いをするのは、その実態を表さないということで、リースの実態を適正に表すべく、これまでに何度か改正が行われてきました」

一方、2000年代には、海外の企業が経営破綻した際、オフバランスのリースが巨額債務として顕在化した例が相次いだ。「そのため、ファイナンス・リースもオペレーティング・リースも一律でオンバランスとすべきではないかという議論が、国際会計基準審議会(IASB)や米国財務会計基準審議会(FASB)で繰り広げられ、10年間にも及ぶ議論を経て、従来はオフバランスであったオペレーティング・リースを含めて、2016年にすべてのリースをオンバランスとするように改定されました(2019年に強制適用)」

ただしこの改定は、IFRSと米国会計基準がそれぞれに決議したものであり、「統一基準」として誕生したものではなかったという。「両基準の間で、ファイナンス・リースやオペレーティング・リースの区分を残すか否かについて意見が分かれるなど、会計上のリースの取り扱いについて、議論の難しさを改めて感じさせる結果になりました」

国際基準との整合は、まず連結財務諸表から

日本でも現在、企業会計基準委員会(ASBJ)において、国際的整合性を尊重しつつ、同様の改定を行うべきかどうかが審議されている。「多様な形態のリースをどう扱うか。日本の法制度の中でのリースの位置付けや、事業者ごとに独自の商慣習を持つこともあり、高度な議論が重ねられています。具体的には、オペレーティング・リースのオンバランスのほか、会社法や税法といった関連法制との整合性、連結・単体財務諸表に対する適用範囲、重要性のないリースの簡便処理など、解決すべき課題は多くあります」(正脇)

そうした中、2019年度から日本では、IFRS任意適用企業で新しいリース会計基準の適用が始まった。昨年、順次決算発表が行われたが、すべてのリースがオンバランスになったことで、資産・負債が大きく増加した企業やあまり変わらなかった企業など、その影響はさまざまだった。「さらに言えば、新型コロナウイルス感染症への対応のため、リース料のリスケジュール(返済猶予)や減免時の取り扱いがタイムリーに公表されるなど、リースが社会情勢と密接に関わっていることを改めて感じたところです」(正脇)

多様なリースをどう財務諸表に反映するのか。これはリース会計の長年のテーマだ。「会計基準の今後を考える際、法制との関連の深い単体財務諸表よりも、まず連結財務諸表について国際基準との整合を図り、基準の変更に機敏に対応していくのが最良の選択だと言えるでしょう」

「国際基準との整合性については、ASBJやリース会計専門委員会で活発な議論が行われています。新リース会計基準では、借手が無条件の支払義務を負うことがリース資産をオンバランスする論拠となっていますが、2021年3月の基準諮問会議では『我が国の賃貸借では無条件に支払義務を負うわけではないので、オンバランスの論拠に欠けているのではないか』という意見や、『とくに、法律と関係が深い単体については検討を要する』という意見が出ています」

今後、複数の論点について審議が行われた後に、「早くて2021年度内」(正脇)に、草案が公表されると見通す向きもある。では、もし会計基準が変更された場合、現行の「リース税制」にはどのようなインパクトがもたらされるのだろうか。「コロナ禍が続く現在において、会計基準の変更に伴う税務処理の変更は、企業の設備投資を減速させる可能性があり、得策ではありません」と正脇は言う。「とりわけ中小企業等には、現在、利便性を念頭に置いた簡便な会計・税務処理が法令で認められています。そのため、会計基準の変更に伴って現行の税務処理が変更になると設備投資は減衰し、マイナスの影響が予測されます。であればこそ、現行のリース税制は維持するか、適用継続が望ましいでしょう」

SDGs推進、循環型社会におけるリースの果たす役割とは

近年、企業活動においても「所有から使用へ」や「サブスクリプション」などが普及し、効率的な資産利用が重視されている。「その点リースは、元来、『必要な時に必要なモノを借りて使う』をコンセプトとしており、かつ『3R』(リデュース<発生抑制>、リユース<再使用>、リサイクル<再資源化>)といった循環経済を実践するなど、SDGsやESGが社会の重要な課題となる中、企業が今後目指すべき方向性と合致しています」(正脇)

SMFLも、明確に「SDGs経営」を公表・実践している。「2020年度は、脱炭素社会への動きが世界的に加速する中、当社では『SDGs経営元年』として、『SDGs推進委員会』を司令塔に、環境・次世代・コミュニティ・働きがいの4つを重点テーマに据えました。例えば、お客さまのSDGs達成に向けた支援を目的に、リース料の一部をSDGs達成への貢献のために使用する『SDGsリース』の取り組みや、再エネ発電事業等クリーンビジネスをいっそう推進するなどの実践を重ねています」(正脇)

2021年度は、カーボンニュートラルに向けて「先端低炭素設備導入促進補償制度推進事業(低炭素設備リース)」の枠組みが設定された。SMFLも気候変動問題や顧客のトランジッションリスクへの対応として、積極的に取り組んでいく構えだ。循環型社会、脱炭素社会の後押しを続けるSMFLの取り組みに期待が高まる。

(内容、肩書は2021年6月時点)

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