激甚化する自然災害や緊急医療搬送に真価。欧州最大手と共に、SMFLがヘリコプターリース市場をけん引

激甚化する自然災害や緊急医療搬送に真価。欧州最大手と共に、SMFLがヘリコプターリース市場をけん引

三井住友ファイナンス&リース(SMFL)がヘリコプターリース事業に進出した。アイルランドに本拠を置く業界第2位(欧州最大)のLCI Helicopters Limited(以下「LCI」)と連携し、ジョイントベンチャーの「SMFL LCI Helicopters Limited」(以下「SMFLH」)を設立。2020年6月に始動した。新領域への挑戦でSMFLが目指すものは何か。

医療搬送ニーズ増。機動性を生かして洋上風力発電への貢献も

抜群の機動性を特徴とするヘリコプターは、離島・山岳など交通アクセスに難のある地域での医療搬送や、救難・探索・その他の災害対応など、緊急性の高い局面と分野でその実力を発揮する。とりわけ近年は、森林火災や洪水など、気候変動との関連が密接な激甚化した自然災害が世界の至るところで頻発。過酷な状況下で人命と財産に救いの手を差し伸べることのできるヘリコプターの需要は、切実さを伴って急増している。

さらに見落とせないのは、その活躍の場の広がりだ。今後特に需要の伸びが期待できる分野の1つが、洋上風力発電施設に人や資材などを届ける搬送ビジネス。ヘリコプターリース事業を主業務として担当している川上慧(SMFL航空事業開発室)がこう解説する。「欧州各国が世界に先行して実用化に取り組んできた洋上風力発電は、再生可能エネルギーとしてすでに十分な実績があります。米国では今年(2021年)3月、バイデン大統領が向こう10年間で洋上風力発電設備の導入を大幅に拡充する計画を発表したばかり。日本でも、『2050年カーボンニュートラル』を達成する有力な選択肢の1つとして期待されています」

トランスポーテーション統括部航空事業開発室 室長代理
川上 慧

発電設備の命脈は、稼働の安定性だ。それを担保する保全業務と補給のため、洋上の施設までスピーディに人と物資を運搬する手段として、ヘリコプターの機動性は無二のものである。「洋上風力発電のほかにも、ヘリコプター活用の場は年々広がっています。従来の緊急医療搬送や災害救難などのニーズと併せ、山岳・遠隔地での消防、沿岸警備や警察関連ニーズなど、今後の着実な需要拡大が見込まれます」(川上)

市場予測によると、2019年から2030年までの世界のヘリコプター需要(下記図参照)は年平均約3%(乗員数4人超の機材。全世界で約21,000機から28,000機へ)の成長が見込まれ、規模は小さいながらブルーオーシャンが存在する事業領域だ。特に新興国地域では、世界全体に占める地域別シェアが23%から27%にまで伸びるとの見通しもあり、前途有望なエリア。加えて日本国内でも、自治体等の医療・防災サービス拡充のための需要増加などの読みも含め、年平均2%の成長が期待されている。

国・地域別ヘリコプター需要予測(機体数ベース)

出所:市場調査会社の情報を基にSMFLが作成

国内初のヘリコプター専業リース会社の誕生。[業界第2位の実績]×[財務力+世界的な営業ネットワーク]が武器

トランスポーテーション統括部航空事業開発室 室付室長 兼 LCI出向
小野寺 武哲

これまでも航空機リースや航空機エンジンリースなど、運航会社への機材導入支援を通じてグローバルアセット事業を手がけてきたSMFL。日本のリース会社では初となるヘリコプター専業のリースビジネスへの進出に当たり、LCIをパートナーに選んだ背景には2つの大きなサポート材料があった、と川上は明かす。「まず業界第2位(誕生当時は第3位)のヘリコプターリース会社というプレゼンスの大きさ。彼らがすでに築きあげたグローバルな運航会社との信頼関係はとても魅力的でした。加えて、このビジネスを通してSDGsやESGの推進を図るという当社の経営理念にLCIが深い共感を示してくれたこと。この点も大きな決め手になりました」

時代の流れも味方したという。SMFL航空事業開発室 室付室長として本プロジェクトの中心的役割を担い、現在はパートナーのLCIに出向して名実共に協働体制で事業を推進する小野寺武哲が補足する。

「業界全体に成長機運が高まるなか、折よく、LCIでも自らの事業をサポートしてくれるパートナーを求めていたのです。時間をかけて各方面と議論を重ねたすえ、私たちは相互理解を深めて合意に至ることができました。企業文化や生い立ちの違いなどからジョイントベンチャー設立までには紆余曲折がありましたが、LCIならではの業界専門知識や顧客とのリレーションシップ、SMFLだからこその強固な財務力とグローバルな営業ネットワーク。互いの強みを持ち寄れる共同事業により、時代の波を捉えて “ 次 ” を目指そう──両社の理念と戦略が一つに実を結んだのです」

プロジェクトの最終段階に至り、出来しゅったいした新型コロナウイルスの感染拡大という大きな障壁に直面しながらも、両社は新会社の設立に向けて歩みを続けた。2020年6月、SMFLが90%、LCIが10%を出資し「SMFLH」が誕生。SMFLの連結子会社としてグループ企業の仲間入りを果たし、今冬で1年半が経過した。

この間、事業規模は狙い通り安定的に成長。事業開始時は19機だった保有機数はすでに30機を数え、順調にスケールアップを実現。1年半で資産規模は1.5倍となった。川上の感想に意気込みがにじむ。「コロナ禍での事業開始は想像以上にチャレンジングでしたが、事業そのものは順調な滑り出しでした。引き続き、保有機数の拡充に努め、より多くのヘリコプターを運航会社に提供して、医療機関・自治体・再生可能エネルギー発電事業者など、お客さまの役に立ちたい。また、足元ではコロナ禍で苦しむ世界各国で緊急医療用途を中心に多くの引き合いがあり、ヘリコプターに対するニーズは潜在的に高い期待値があると実感しています」(川上)

現在のところ、営業展開の主舞台はヨーロッパ。むろん、アジア大洋州でのさらなる拡販も視野に入れる。日本での事業展開について小野寺は、「国内市場規模は相対的に大きく、アジア大洋州のなかでは、国土が広く資源開発が盛んなオーストラリアに次ぎ2番目の導入機数を誇ります」とした上でこう語る。

「とはいえ、日本は経済の発展が進んだ社会であること、加えてもともと自然災害が多いこともあり、ヘリコプターの導入はすでに一巡した観があります。市場は成熟しているといえるでしょう。そこで狙い目となるのが、今後の入れ替え需要です。安全性や飛行性能の向上した新機材へのニーズを敏感に察知しリプレイスのタイミングを逃さずにアプローチできるよう、関係者とのリレーション強化を進めている状況です」(小野寺)

ヘリコプターが積極的に活用されている主要用途

行動の10年へ。SDGs達成に向けて、ヘリコプターリースで貢献

まずは視界良好。成長期待の風に乗って離陸したヘリコプターリース事業は快調な航跡を空に描き、スタート初年の飛行を続けてきた。だが、パイロットたちの視野がとらえている目的地は、業容の拡大という水平線を越えた向こう側にあるようだ。

ジョイントベンチャー「SMFLH」の誕生は、実は難産だったという。設立に向けた準備段階。小野寺・川上らによる事業開始に向けた意欲を、新型コロナウイルスの感染拡大という社会環境が阻もうとした。社内にも「経営リスクが読みにくい新事業の設立より、今苦境にあえぐ日本経済を財務面で支えることを優先するのが、われわれの社会的使命ではないのか」との声があがる。

「なるほど。しかし……」そう感じたと、川上は言う。「私たちが目指す事業での用途を考えれば、ヘリコプターの提供は、医療機会の提供に通じる人命を守る支援活動であり、コミュニティへの貢献でもあります。さらにクリーンエネルギー創出の後押しにもなると確信しています。『なぜ今のこのコロナ禍で』ではなく、今だからこそ、当社の経営理念である『SMFL Way』を具現化すべきだと。SGDsへ貢献できることが、社内での説得材料になりました」(川上)

“ 医療機会の提供による健康の増進 ” “ 災害対応による地域課題の解決 ” “ クリーンエネルギーの活用 ” “ 空の移動革命による技術革新への寄与 ” ──これらは、SDGsが掲げる17目標のうちの4つだが、SMFLHの事業目的はまさにこれと符合しており、その産みの苦しみのさなかですでに、「社会貢献のDNA」をはっきりと胚胎していたのである。

川上の言葉がそれを裏書きする。「この事業の狙いは、ずばり、保有機材の多くを社会課題の解決のために提供することです。運航会社へのヘリコプターのリース提供を通じ、人々の生活を支える持続可能な社会の実現に貢献していきます」

SMFLHのリース先「Westpac Rescue Helicopter Service」によるレスキューシーン

小野寺がうなずき、展望を添えた。「ヘリコプターリースというビジネスは、マーケットとしては大きなものではありません。機材もまた、航空機などに比べれば、ごく小さなものです。しかしヘリコプターリースが提供できる社会サービスは、決して小さくありません。社会のさまざまな場面で人類が直面する多くの課題の解決に貢献する、大きな力を秘めているのです。仮に将来、使用する機材がヘリコプターから別の手段に取って代わったとしても、不変のサービスを社会に提供できるよう備えていくことが、私たちに課された使命の1つだと確信しています」

昨年、2030年までのSDGs達成に向けた「行動の10年(Decade of Action)」がスタートした。「今何を行うか」が企業にも問われている。決められたゴールはない、可能性は無限大だ。時を同じくして飛び立った「SMFLH」の目的地に注目しながら、私たち一人ひとりもより良い社会の実現に向けて “ 行動 ” を実践したい。

設立から1年半で資産規模が1.5倍に拡大
ヘリコプターへの世界的な需要に応え続けるSMFLH

LCI Helicopters Limited
CEO
Jaspal Jandu氏

──SMFLとの共同事業がスタートして、1年半が経ちました。この間の成果を、どのように捉えていますか。

Jaspal氏 当社(LCI)とSMFLの共同でのヘリコプターリース事業は、今年(2021年)9月までに新たに12機の新型ヘリコプターを取得・契約しました。これにより設立後1年半で、資産規模を1.5倍に拡大することができました。強固なパートナーシップを基盤にしたわれわれの共同事業を迅速にドライブさせることができ、とても光栄に思います。

──市場におけるLCIのプレゼンスを教えてください。

Jaspal氏 LCIは、多様な用途で使用されている最新世代の中型機と、準大型機に分類されるヘリコプターを大手メーカーから取得し、さまざまな運航会社に提供しています。とりわけ、緊急医療サービス(EMS※1)、探索救難用途(SAR※2) 、洋上風力発電所への人員搬送など、システム障害による中断が許されない“ミッションクリティカル”な成長分野に注力し、確固たる地位を築いています。

──今後のヘリコプター需要について教えてください。長期的にみて、どのような成長曲線を描くでしょうか。

Jaspal氏  ヘリコプター需要は今後も堅調に推移し、長期的にみても増加すると考えています。アジアや新興国を含む主要地域での人口増加に伴って、多くの主要国のように、EMSや洋上人員輸送のためのヘリコプター需要が大幅に増加すると予想されます。調達方法においても、リースを活用したヘリコプターの調達がグローバルで増加傾向にあります。背景には、資本的支出※3を伴う直接購入と比較して、柔軟に対応できるというリースの利点を運航会社に評価いただき、より一般的になってきていることが挙げられます。

──LCIとSMFLがタッグを組むことで、今後、どのようなシナジーを期待できますか。

Jaspal氏  第一に、アジア大洋州地域でのプレゼンス強化です。当社のリース機体の約3分の1は、アジア大洋州地域で運航されており、加えて当社は、EMS市場をリードする存在です。一方SMFLも、日本をはじめとするアジア大洋州市場において、堅固な顧客基盤と影響力をベースに、航空機や航空機エンジンリース分野で優れた実績を持っています。加えて、社会課題の解決に資する分野へのコミットメントにより、LCIにとっても必要不可欠なパートナーとなっています。われわれのタッグが、今後もヘリコプターリース事業のさらなる成長をリードすることを期待しています。

  • ※1Emergency Medical Services
  • ※2Search and Rescue
  • ※3法人が有する固定資産の修理・改良などのために支出した金額のうち、その固定資産の価値を高め、またはその耐久性の増加に役立つと認められる部分に対応する金額。取得原価に含まれる

※ インタビューはリモートにて実施いたしました。

※ 新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で、撮影を実施しております。

(内容、肩書は2021年12月時点)

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航空事業開発部 
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