SMFLの「PBasis」が強力にサポート。排出物の遵法管理が生み出す新たな価値
重大な経営リスクにも直結する「廃棄物ガバナンス」。排出事業者である企業の取り組みを強力に支援しているのが、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)が提供する排出物遵法管理サービス「PBasis※1」だ。企業活動に伴って生じるあらゆる排出物を一元管理し、排出物ごとの再資源化率や、再資源化した内容までを把握。さらにスコープ3における、静脈物流のCO2発生量を把握するプラットフォームにもなるという。循環型社会、脱炭素社会の実現を後押しするPBasisの提供価値について、前編に引き続き、廃棄物工学研究所代表取締役・田中勝氏(岡山大学名誉教授)と、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)に話を聞いた。
- ※1「PBasis」はパナソニックホールディングス株式会社の登録商標です
企業のあらゆる排出物情報を「見える化」
田中 勝 氏
自社から出る廃棄物を適正に処理すること。そして自社のみならず、委託先にも不正な処理を決してさせないこと──そんな「廃棄物ガバナンス」が今、企業に求められている。「循環型社会」と「サーキュラーエコノミー」を実現するためにも、廃棄物ガバナンスの構築は急務なのだ。廃棄物工学研究所の代表取締役で岡山大学名誉教授の田中勝氏は、次のような課題を示し、突破の方向性を示唆する。
「地球環境は今、3つの大きな危機に直面しています。『資源の浪費に伴う危機』『生態系の危機』『温暖化の危機』です。3つの危機を回避して地球環境を守るために、これまで廃棄されていた製品や原材料などを資源に転じ、リサイクルする、あるいはエネルギー源として利用するなどして、循環・有効活用できる持続可能な社会・経済へと進化しなければなりません。その担い手として、企業には重い『責任』があるのです」(田中氏)
田中氏が言及した「責任」の具体例を、SMFL理事リソース企画部長の松村賀央はこうひもとく。「企業が負っている重大な責任の1つが、『排出事業者責任』です。産業廃棄物の処理を外部委託する場合でも、処理の責任は排出事業者にあります。『外部に任せたのだから、そこから先は関係ない』では許されません。事と場合次第では、見過ごせない経営上の大事に至る恐れもあります」
松村の言葉には、警鐘の音が響く。にもかかわらず、現状、各企業の取り組みが十分とはいいがたい。その一因として田中氏が指摘するのは、「廃棄物処理の関連部門をコストセンターと捉える意識」の根強さだ。
「会社組織のなかで、廃棄物処理・リサイクルに関わる業務や部署は、直接的な利益を社にもたらすわけではありません。ですが、環境への負荷を低減するには、事業活動の全段階での取り組みが不可欠。この点で分掌や部署に軽重はなく、コスト/プロフィットと対比するような意識からは脱却してほしい。企画→設計→生産→販売→保守・メンテナンス→廃棄・リサイクル──の各段階を通した廃棄物管理、すなわち『製品ライフサイクルマネジメント』を重視すべきなのです」(田中氏)
Panasonicが自社使用目的で開発し、改良を重ねる「PBasis」
松村 賀央
こうした課題に応えるソリューションが、SMFLの排出物遵法管理サービス「PBasis」(ピーベイシス)だ。その中身とユーザーメリットを、松村はこう説明する。「産業廃棄物・一般廃棄物・有価物などの基本情報や処理委託契約書、許可証の内容はもとより、マニフェスト(廃棄物管理票)の発行、排出量・再資源化率・委託費用の集計・管理に至るまで、企業から排出されるものの情報をすべて『見える化』し、一元管理するASPサービス※2です」
排出物の種類を問わず、顧客企業(グループ)全体から出る全排出物の情報をトータルに管理、それによって業務工数とコストの削減にも寄与する。つまり、PBasisが実現するのは、排出物に関する「コンプライアンスの強化」と「管理の効率化」である。
- ※2 ASPサービス:ASPはアプリケーション・サービス・プロバイダ(Application Service Provider)の略。インターネット上でアプリケーションを提供するサービスの提供者(事業者)のことであり、ASPサービスは、そのような事業者から提供されるソフトウエアやサービス
室田 康彦
実は、このPBasisを開発したのは、Panasonicである。SMFLリソース企画部の室田康彦が、共同推進に至る背景を概説する。
「PBasisは、廃掃法を遵守しながら排出物の管理を効率的に行う目的で、もともとはPanasonicさんが自社グループ用に開発したシステムです。これをブラッシュアップし、顧客向けサービスとして外販を開始した段階で、私たちSMFLも顧客として使用。ユーザーとして機能検証し、排出物管理の効率化・コンプライアンスの強化を十分に実感したところで、『ぜひ私どものお客さまにも使っていただきたい』とPanasonicさんに協業を申し入れました。現在は、サービスの提供窓口をSMFLが務め、システム運営と機能向上をPanasonicグループが担うかたちで、お客さまに提供しています」(室田)
そもそも自社グループで用いるために開発したソリューションである。遵法性は折り紙付きで、大手上場企業から中堅・中小企業まで多様な業態で採用されている。導入企業からは、「現場担当者任せになっていた廃棄業務のフローを整理でき、現場と本社の役割が明確になることで効率的で精度の高い管理手法を確立できた」(電子部品メーカー)といった声が届く。なお、東西2カ所、国内最高水準のデータセンターで運営管理されており、BCP対策も万全であることも特筆すべき点であろう。
サプライチェーン排出量(スコープ3)の算定・開示にも貢献
廃掃法の徹底遵守、つまり「コンプライアンス強化」は、「管理の効率化」と表裏一体の関係にある、と松村は指摘する。「廃掃法が定める処理手続きのルールはとても複雑。経験と勘に頼って遵法性を徹底できるほど簡単なものではありません。また、表計算ソフトに手入力で管理していれば、ミスが発生することもあります。もちろん管理に誤りがあれば、遵法性も脅かされてしまいます。PBasisは、そんな属人的エラーの抑止にもつながるのです」
さらにPBasisは、「サプライチェーン排出量」の静脈物流(スコープ3)での管理にも役立つと松村は言う。サプライチェーン排出量とは、事業活動に関わる全領域で排出される温室効果ガス(GHG)の合計量のこと。田中氏は、以下のように補足する。
「サプライチェーン排出量は3領域で構成されます。事業者が自ら直接排出するGHGの量(スコープ1)、他社から供給された電気や熱・蒸気の使用に伴う間接排出量(スコープ2)、スコープ1と2以外の間接排出量(スコープ3)です。ここでテーマになる『廃棄物の処理』はスコープ3に該当します。ただし国内企業では、スコープ1と2の算定や削減に関して一定の進展が見られるのに対し、スコープ3への取り組みはまだこれから。脱炭素の緊急性が世界的に高まり、ESG経営への転換が社会的に希求されるなか、昨今はスコープ3も加えたサプライチェーン排出量を算定・開示する企業が増えているのです」(田中氏)
松村がさらに続ける。「PBasisは、廃棄物の排出量や再資源化率、コストだけでなく、静脈物流でのCO2の排出状況や実績についても一元的に把握・管理できる機能を備えています。そのため、サーキュラーエコノミーの推進に向けたプラットフォームとしても有効です」。SMFLはこのほど、Panasonicグループと共同でサーキュラーエコノミーに関連する特許を取得。工場から出る廃棄物や、製品・商品の主要構成素材(銅・鉄・アルミ・プラスチックなど)と形状に関するカテゴライズの方法、およびその管理システムについての新たな枠組みだ。松村によると、この分類方法は「資源循環における『共通言語』の1つ」になるという。
「資源循環を推進するには、排出事業者と廃棄物処分業者の連携が欠かせません。本特許の分類手法が広く浸透すれば、排出事業者はカテゴリだけで素材概要を把握できます。処分業者はその情報によって必要な処分方法と資源価値をより正確に見極められるので、再資源化が可能な廃棄物の構成比が増加します。こうしたことを考え、今回の特許は幅広い普及のために “ 無償 ” としました。このカテゴリを製品情報の1つとしてメーカーが提供すれば、製品ライフサイクルを踏まえた資源循環の効率もより高まるでしょう。すでにPBasisでは、この分類に基づく機能を試験的に実装し、評価を始めています」(松村)
循環型社会に至る道筋を俯瞰的かつ実践的な視点から見つめてきた田中氏も、PBasisと新特許のカテゴライズを次のように評価する。「すべてを『見える化』することで、『より安全で安心できる処理を安定的に提供する』──まさしく、廃棄物処理のあるべき姿に資するシステムだといえます」(田中氏)
松村が展望を語る。「私と室田が所属するSMFLのリソース企画部は、リース契約が終わった物件を適切に処理する『リース満了(リースアップ)対応業務』をミッションの1つとしていて、その手法もさまざまです。リースの枠にとどまることなく、環境問題への対応を迫られているお客さまに最適なソリューションを提案したい──『PBasis』はそんな思いを具体化したサービスです。さらに今後は、廃棄物が排出されるという事象そのもの、つまり資源循環をめぐる諸課題へのトータルサポートにも、PBasisを活用しながら注力する方針です」(松村)
廃棄物ガバナンスへの取り組みを通じ、循環型社会とサーキュラーエコノミーの実現を目指すSMFLの “ 次の一手 ” に注目したい。
- ※新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で取材・撮影を実施しております。
(内容、肩書は2023年5月時点)
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