循環型社会の具体化に欠かせない、リース物件の「出口戦略」。
3Rを推進し、再資源化・遵法廃棄の専門組織のポテンシャルに迫る

リース業界最新動向 Vol.20 リースの「満了」編

一般的なリース取引では、契約期間が終了することを「満了」という。契約終了に伴う顧客対応はもちろん、リースの延長の交渉力、膨大な事務処理能力など、満了に関する業務は広範である。また、法令知識や物件知識など、高い専門性も求められる。「モノの “ 出口 ” を担う重要な業務だからこそ、循環型社会へ貢献できる可能性を秘めている」と、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の専務執行役員・西河哲也は話す。

対外交渉と大量の事務作業。専門的知見を有する、異色の「満了」を担う組織

専務執行役員
西河 哲也

多くの企業にとって、リースは資金の効率的な運用に欠かすことのできない金融サービスである。契約期間が終了する「満了」のフェーズでは、大手リース会社の場合、営業とは異なる専門部が担当するのが一般的だ。「契約終了に伴う顧客対応はもちろんのこと、リースの延長(再リース)・解約・終了などの手続き、さらに物件の所有者としてリユース(2次利用、転売)・廃棄、最終的な物件処分も担います。満了に当たる業務は広範であり、高い専門性も求められます」と、西河は話す。

「お客さまとの交渉力、膨大な事務処理能力、物件知識、そして法令知識が求められます。つまり満了業務は “ 対外交渉 ” と “ 大量の事務 ” の両方をこなす異色の立場で、かつリース契約の最後の仕上げを担う重要な組織なのです」

求められる最優先事項は、法令遵守だ。「たとえば、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)では産業廃棄物の排出事業者が最終処分まで責任を負うことが定められています。そのため、返還される物件の収集運搬や廃棄処理を委託する業者は慎重に選定する必要があります。また、リユース時の転売先の選定においても、徹底した情報管理など、お客さまが安心して取引できる体制を有している企業との取引が求められます」

“ モノ ” を多く取り扱うリース会社だからこそ、「モノの知識が重要です」(西河)

「中古売買事業を、専門部隊として組織化している場合もあります。工作機械、半導体製造装置、医療機器など、二次マーケットが発達している物件は、リース満了物件の取り扱いのみならず、当社をはじめリース会社が中古売買事業者として既に中心的な役割を果たしています。また、再リース収益・物件売却収益の確保はリース会社にとって貴重な収益源でもあるため、ノウハウの向上が求められます」。リース会社が「モノの目利きのプロ」たるゆえんだ。

リース契約終了物件の処理フロー

リース会社ならではのASPサービスで、物件管理の一元化を推進

リース会社に限らず、企業の物件管理に事務の効率化は不可欠で、適切な排出物管理を可能にするASPサービス※1の提供はリース会社ならではといえる。一例としてSMFLが提供する排出物遵法管理サービス「PBasis(ピーベイシス)※2」を西河は挙げる。

「排出物の基本情報や契約書、許可証の内容から、マニフェストの発行、排出量の集計・管理に至るまで、企業の排出物情報を “ 見える化 ” し、一元管理を実現するASPサービスを提供しています」(西河)。これにより、産業廃棄物の契約書・許可証情報とマニフェストなどとの整合性の確認が円滑に行え、「コンプライアンスの強化と、有価物や一般廃棄物といった排出物の種類にかかわらず、全排出物情報のトータル管理による業務工数とコストの削減の実現に寄与しています」と語る。
「長らくマンパワーを頼りにしてきた業務を見える化・脱属人化し、物件の管理や処分の遵法処理を支援、再資源化率の向上と環境負荷の軽減に貢献することは、リース会社にとって積年の課題です」

  • ※1インターネット上でソフトウエアを利用できるサービス
  • ※2「PBasis」はパナソニックホールディングス株式会社の登録商標です

リース満了後の “ 3R ” を推進し、循環型社会の実現に貢献

「3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進し、循環型社会の実現に貢献することでSDGs達成を後押しすることができます。さらにESG(環境・社会・企業統治)視点から当社の業務の質を上げるなど、まだまだ取り組む余地は残されています」と西河は指摘する。

たとえばSMFLでは、SDGsに関するさまざまな取り組みの中で、リース満了を迎えたパソコンの寄付を通してSDGs目標1(貧困をなくそう)に貢献している。2019年には、沖縄県内の生活困窮家庭の子どもたちに食事支援や生活指導を行う施設「子供の居場所」に対して、300台を寄付した。2021年にも生活困窮家庭の教育支援事業(学習支援、居場所支援)を行う認定NPO法人キッズドアに対して40台を寄付した。子どもたちへの教育機会の創出とITリテラシー向上につながることから、目標4(質の高い教育をみんなに)へも寄与している。

DXを導入し、効率的な満了業務を実現

今後は「さらなる業務効率化を図るためRPA(Robotic Process Automation)※3や人工知能(AI)などデジタル技術の活用が進みます。お客さまへ総合的・複合的なサービスを提供する上で、リース取引の仕上げを担う満了業務はますます重要になります」と西河は語る。

SMFLでも、満了業務を専門に担うリソース業務第一部とリソース業務第二部でデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現している。2021年5月に自社開発のRPAやAI OCR技術を導入し、物件明細書を自動でテキストデータ化するなどして、大量の満了業務の効率化を達成したのだ。SMFLではリース契約先の要望に応じて、複数で構成されるリース物件一式のうち、一部を見直して再リース料金などを計算する業務がある。従来はデータの入力に多くの時間を要していたが、AI OCRシステムを開発・導入して以来、現在では2割程度の時間まで短縮できるようになった。担当部門の100人弱の社員が本システムを利用しており、リース契約先からの要望に効率的に対応する体制を整えている。

  • ※3ソフトウエアロボットによる業務自動化

満了の一部業務の所要時間を従来の2割程度まで短縮

西河は、世界規模で環境問題への対応が求められる中、「資源や製品の循環を通して環境への負荷を減らす循環型社会のみならず、経済成長も同時に実現するサーキュラーエコノミー(循環型経済)※4への貢献もリース業界全体に期待される重要な役割です」と断言する。「多種多様なモノを扱うリース会社だからこそ、モノの出口を担う満了業務は環境に貢献できるさまざまな可能性を秘めているのです」
SMFLは満了業務・中古売買事業を通じて3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進し、循環型社会の実現に貢献していく。

  • ※4サーキュラーエコノミー(循環型経済)
    従来の3Rの取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動

(内容、肩書は2023年1月時点)

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