「脱炭素」を軸に攻めに転じた大企業。設備投資意欲が好転し、リースも需要増が鮮明に

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により企業の設備投資が減少したため、2020年度のリース取扱高は大きく落ち込んだ。ただ、20年度後半からは大手企業の設備投資意欲の回復が鮮明となり、リースの相談が再び増えている。特に引き合いが多いのが「脱炭素」関連だ。コロナ禍におけるリース業界の市況を振り返りつつ、ここ最近の法人向けリースの概況について、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)のコーポレートビジネス部門を統括する代表取締役専務執行役員・池田剛久に聞いた。

20年度後半から大手企業の投資意欲が回復。リースも好転

新型コロナウイルス感染症拡大の影響は広くリース業界にも及んだ。リース事業協会がまとめた20年度のリース取扱高は前年度比13.9%減の4兆5,910億円。近年で最低だった10年度の4兆5,553億円に次ぐ低い水準で、リース設備投資額も前年度比14.1%減の4兆2,903億円にとどまった。SMFLの代表取締役専務執行役員・池田剛久はその理由について解説する。

「コロナ禍は特需のある業界を含め、あらゆる業種・企業に資金需要をもたらしましたが、対応に追われた金融機関は主に銀行・地方銀行・信用金庫などです。資金調達におけるリース需要の相対的な減少に加えて、足元の設備投資が減衰したことで、リースの取り扱いは減りました」

代表取締役専務執行役員
池田 剛久

ただ、潮目は変わりつつある。池田は特に大手企業の投資意欲の好転を実感していると語る。

「20年度通期で見ると、大手・中小を問わず企業が設備投資を抑制した影響により、たしかにリース需要は低迷しました。当社の事業でいうと特に『販売金融』の落ち込みが目立ちました。しかし、20年度後半からは大手企業において設備投資意欲が回復し、リースの引き合いが再び増えています。当社のコーポレートビジネス部門の20年度通期の業績も増収となったほどです」

大手企業の投資意欲の回復と、これに伴うリース需要の増加の流れは21年度に入ってより鮮明になっているという。コロナ禍で先行きが見通しにくい状況が続くと見られることから、万一に備えて資金調達の多様化を進める企業が多く、費用処理の平準化による収支改善のニーズもリース需要の増加を後押しする。

20年度の大手企業の決算は、非製造業の回復の遅れが目立つものの、製造業では好決算が相次いだ。21年度は製造業、非製造業ともに業績の回復傾向が続く見込みであることもリース業界には追い風だ。「企業業績の持ち直しを受け、当社も含めリース大手各社の多くが21年度の増収増益を見込んでいます」

脱炭素などのSDGs、5G関連の引き合いが旺盛

具体的にはどういった分野におけるリースの引き合いが増えているのか。池田によると、20年は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」関連のニーズが多かったが、いま一番大きいのは「SDGs(持続可能な開発目標)」関連だという。国が20年10月に「カーボンニュートラル」を宣言したことを受け、とりわけ「脱炭素」への関心が高まっている。

しかし、企業からは「具体的に何をすればいいか分からない」との戸惑いの声も聞かれるそうだ。1970年代のオイルショック以降、国内企業は世界に先駆けて徹底的に省エネを進めてきた経緯があり、これ以上の省エネの取り組みは乾いた雑巾を絞るようなものだからだ。

そこでSMFLグループでは、脱炭素に対する顧客の不安や懸念を解消して新たなニーズに応えるべく、各種の省エネソリューションに加えて「カーボンフリー電力の導入」「PPA」(Power Purchase Agreement=自家消費型太陽光発電の第三者所有による電力購入契約)と呼ばれるソリューションを提供している。

「PPAは、太陽光発電設備をお客さまの建物の屋根に無償で設置し、発電した電力のうち、お使いになった分だけを買い取っていただくというビジネスモデルです。お客さまはイニシャルコストが不要で、保守や運用の手間もかかりません。カーボンフリーの電力購入と組み合わせれば、トータルで100%の脱炭素を実現できます」

脱炭素のための省エネ設備の導入に際しては、企業には「国や自治体の補助金制度を上手に活用したい」というニーズがある半面、多岐にわたる補助金制度から自社に最適なものを選んで申請するのは簡単ではなく、独特のノウハウが求められる。

「当社は太陽光・風力・バイオマス中小水力・地熱といった再エネ分野における幅広い取り組みに加え、省エネ分野では豊富な補助金採択実績があります。初期投資費用を抑えるリース活用のご提案はもとより、各種補助金の選択から申請手続きのご支援まで、脱炭素投資のトータルでのサポートが可能です」

脱炭素以外に、池田が中長期的に企業の注目度が高いと実感する分野が、適切な「サプライチェーンの見直し」と高速通信規格「5G」関連だ。

「昨今、調達プロセスにおける企業の人権デューデリジェンスへの要請はいっそう高まり、企業活動を進めるうえでの “ 義務 ” ともいえるでしょう。現実問題として、直接・間接的にサプライチェーン(供給網)を持つ日本企業にとっても真っ先に取り組むべき課題の1つですし、サプライチェーンの見直しを急ぐ企業が増えています。リースの観点からすれば、新たな設備投資につながる可能性もあります」

「5Gでは国内の商用サービスが始まっていますが、全体的には実証実験の段階です。5Gの基地局の導入やシステム構築のコストは高いため、これらに関連するリースやレンタルのニーズの拡大が予想されます」

さらに池田は、コロナ禍以前からの「所有から利用へ」の流れが今後も続くと見る。SMFLではとりわけパソコンのレンタルサービスが好調という。

「従来は中小企業のお客さまのご利用が多かったのですが、ここ3~4年、大手企業のお客さまの引き合いが増えています。コロナ下のIT環境の整備という事情に加えて、これまでパソコンの導入・保守を担っていたシステム部門などの人材をAI(人工知能)やIoTといった新しい価値を創造する事業に振り向ける必要性が高まっているためです。コピー機や複合機についても同様に、定額で利用する流れが強まっています」

SDGs経営を通して、新たなビジネスのあり方を模索

SMFLは、SDGsへの取り組みを通じて未来に貢献し、自らの新たな成長を実現するために「環境」「次世代」「コミュニティ」「働きがい」の4つを重点課題として掲げている。「脱炭素や人権問題、5Gなどのテクノロジーの社会実装など、眼前の社会課題は多種多様です。当然ながら、解決へと向かうお客さまの道程もさまざまですが、どんなご要望であっても、グループとしてお客さまに最適なソリューションをご提案できるのが当社の強みです」

グループの総合力を結集し、SDGs経営を掲げて脱炭素社会を後押しし、ウィズコロナ・アフターコロナの新たなビジネスのあり方を模索するSMFLのこれからの取り組みに注目したい。

(内容、肩書は2021年9月時点)

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