ごみは、捨てる時代から、生かす時代へ。SMFLが共に見据える新たな食品リサイクル事業

新しい食品リサイクル事業への挑戦 Vol.3 -Archaea Energy Group×三井住友ファイナンス&リース-

東京都羽村市の「羽村バイオガス発電所」は、コンパクトな都市型プラントだ。臭いも煙もほぼ出さず、騒がしい音も立てず、今日も黙々と食品廃棄物から電気をつくっている。その佇まいが私たちに語るのは、1つにはこれからの循環型社会のあり方であり、もう1つは、たとえ小さな資本の企業でもリース会社とスクラムを組めば、大きなプロジェクトを立ち上げられるという事実。さらには、パートナー企業に寄り添って共に苦況に立ち向かう三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の精神だ。

脱炭素社会に貢献するプラント。エネルギーを産出し、雇用も創出

「羽村バイオガス発電所」は、食品廃棄物の中間処理機能も有する都市型発電所だ。バイオガス発電事業ベンチャーのアーキアエナジーが2020年8月に建設した。処理と発電の流れはこうだ。関東一円の食品工場やスーパー、コンビニなどから運び込まれた食品廃棄物を発酵タンクで発酵させ、バイオガスを取り出す。そのガスでエンジンを動かし電気エネルギーと熱エネルギーをつくる。熱エネルギーは発電所内で利用し、電気は再生可能エネルギーとして電力会社に売電する。一方、発酵後の汚泥は液体と固体に分けられ、液体は下水放流基準値以下に処理した後、下水に放流される。固体は現状では最終処分事業者に渡される。

食品廃棄物の処理量は年間約30,000t(年間発電量は850万kWh。一般家庭1,550世帯分の年間消費量に相当)。焼却処分するには重荷であった生ごみを、エネルギーとしてよみがえらせ、地域に還元する。まさに循環型社会のカギになる施設だといえる。オペレーションにあたるのは、アーキアエナジーの100%子会社である西東京リサイクルセンターだ。社員は地域で雇用した18人。全員、研修を何度も重ねて安全教育を受け、現場のプロフェッショナルとして活躍している。雇用創出や働きがいの提供という点でもSDGs実現に寄与するプラントだ。

SMFLは、プラント建設にあたって、総事業費35億円のうち22億円分相当の設備をリース。その手法は、事業の収益からのみ資金を回収するノンリコースのプロジェクトファイナンスを採用した。ただしバイオガス事業のファイナンス手法としては前例がなく、導入は難航した。しかし、事業実現に社運を賭したアーキアエナジーの植田徹也 代表取締役の強い意志と、SMFLの環境エネルギー開発部・根本誠太郎らの奮闘が結実し、2020年3月に契約が成立、同年8月にプラントが竣工した。

本来ならば同年10月には発電機を動かし始める予定だったのだが、突然の不運に襲われた。新型コロナウイルス感染症の波が押し寄せてきたのだ。

羽村バイオガス発電所。1,500世帯以上の電力需要を賄う

敷地面積は3,321㎡で、廃棄物処理量は168t/日。一般家庭約1,550世帯の年間電力消費量に相当する、約850万kWh/年の発電量を持つ。CO2削減効果は3,885t/年に相当。写真は左から、バイオガス発電所全景、メタン発酵槽、破袋分離機への原料投入する場面

※ 1tのCO2は、25mプール(25m×10m×2m)1杯の体積に相当

「苦しいときこそ共にありたい」。貫く、不断の支援

「コロナ禍の影響は大きかった」と、植田氏は声を落とす。「まず、搬入される廃棄物の量が予定を大幅に下回りました。営業自粛や短縮などの影響で飲食業界からの廃棄量が減り、しばらくは1日の処理量が数十tにとどまりました。加えて、当プラントに導入したドイツ製の発電機は、有資格者でないとスタートさせられない決まりなのですが、依頼していたドイツ人技術者がコロナ禍で来日できず、発電機を予定通りに始動できなかったのです」

八方手を尽くして国内の有資格者を探し当て、ようやく発電開始にこぎ着けたのが2020年12月。その間、再生エネルギーの売電による収益はゼロという厳しい状況だった。

しかし、この苦況はSMFLの真価を問う試金石ともなった。植田氏が振り返る。「SMFLさんは逆境から逃げず一緒に対策を考えてくれました。そもそも、いくつかの企業があったなかで、各方面との調整を粘り強く重ねてこのプロジェクトにファイナンスしてくれたのは、SMFLさんです。さらに、プロジェクトはプラントができたら終わりではなく、今後まずは20年間、しっかりと回し続けないと成功とはいえません。大切なのはこれから。とりわけ、本当に軌道に乗るまでのここ1~2年間が重要な期間です。SMFLさんはその事情を理解してくださり、グループの総力を挙げてプロジェクト完遂までサポートすると言ってくれています。実際に根本さんは、廃棄物回収業者との連携を保つために、今も毎日のようにパートナーと連絡を取り合ってくれています。しんどいときに伴走してくれることを、本当にありがたく思っています」

根本は隣で照れくさそうだ。だが深くうなずいて、言った。「バイオガスの事業は前例が少なく、想定外のことも十分起こり得ます。コロナ禍に伴う今回の困難もまさにその例。しかし、収益があがらないから手を引く、という考えは当社にはありません。苦しい状況のときこそ、“ どう乗り越えましょうか ” と一緒に考えていきたいし、それができるのが当社の強みだと思っています」

アーキアエナジー株式会社 代表取締役 植田徹也氏(左)。SMFL 環境エネルギー開発部 部長補佐 根本誠太郎(右)

相次ぐ問い合わせ。SDGs達成に向けたプロジェクトを全国に

根本は、「今回のプロジェクトで学んだことは多い」とも話す。「バイオガス事業のノンリコース・プロファイの進め方も学びました。加えて、廃棄物事業のデューデリジェンス(資産査定)、つまり “ 何をどう明らかにすればいいのか ” が分かった点は大きいですね」(根本)

根本の下にはすでに、社内はもとより、グループ会社や関連企業から、「廃棄物を有効に処理してほしいのだが……」「自分たちも処理事業や発電事業に参画したい」といった問い合わせや要望が相次いでいる。「廃棄物事業のより広い範囲に目が利くようになって、もっといろいろな課題を解決したい。我々がご支援できる業態は多いはずです。ファイナンスを通してそういう事業の役に立つプロジェクトを進めていきます」(根本)

一方、植田氏にはこんな展望がある。「差し当たってはまず、メタン発酵後の汚泥を肥料化し、長野県の大規模農家さんに使ってもらう実証実験を進めています。食品廃棄物から電気を生み出して地元で使っていただく仕組みと、畑に戻してまた食物を育てる仕組み、この2つにより、食品の循環を確立したい。有用性に対する評価も非常に高く、現在、東京都にたい肥登録を申請しているところです。2021年中には農家さんへの供給が始まる見通しです」

いずれはこの施設を、地域の環境教育の生きた教材としても活用してもらう予定だそうだ。「都市型バイオガス発電所ももっと増やしたいですね。その意味で、この羽村のプラントができたことのインパクトには手応えを感じています。バイオガス発電所とはどういうものか、どうオペレーションすればよいのか、実際に見て理解してもらえるので、事業を進めやすくなりました。私は、行政が “ ごみを処分する ” 時代はすでに終わり、民間企業が主体になって “ ごみを生かす ” 時代が来ていると思っています。地域の課題や状況に応じたリサイクルのプロジェクトを、今後も展開していきます」(植田氏)

小さな、だが開拓精神に溢れた企業が時代の扉を開くその隣に、きっとSMFLがいるはずだ。

※ 新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で、取材を実施しております。

(内容、肩書は2021年11月時点)

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