脱炭素社会の実現に向けて、急速に多様化する再エネ事業ニーズに応える
脱炭素社会の実現に向けて、日本政府は、石炭火力発電所の早期退役など具体的な目標、ビジョンを示し、市場では再生可能エネルギー関連ビジネスへの機運が一層高まっている。リース会社に問われているのは、急速に多様化するニーズに対しての高いファイナンス力や、事業者として、あるいはエネルギーサービス提供者としての総合アレンジ力だ。この分野の最新動向について、再エネ事業を幅広く手掛けている三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の専務執行役員・西河哲也に話を聞いた。
2030年、再エネ比率36~38%へ
世界経済の舵(かじ)は、すでに脱炭素社会の実現に向けて大きく切られている。このことは、SDGsへの関心の高まりとともに、官民を問わず等しく認識されてきた。
政府は2050年カーボンニュートラル実現のため、2021年7月に経済産業省が新たなエネルギー政策の原案を発表した。その中で、2030年の再生可能エネルギー比率を、22~24%としていたこれまでの目標から36~38%と意欲的な数字に引き上げている。
「この高い目標値達成に向け、再エネへのさらに積極的な施策が動き出すでしょう」と話すのは、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の専務執行役員・西河哲也だ。
「2020年7月に低効率な石炭火力発電所の縮小は発表されていましたが、今回の計画では原子力発電の比率20~22%は据え置かれました。ただしこの数字も、原子力規制委員会に申請した27基の稼働が必要になるという点では、簡単に達成できるわけではありません」
競争力のあるビジネスモデルの実行と、多様な事業資金提供がカギ
西河は次のように分析する。
「原発再稼働により発電不能分が出るとすると、太陽光に限らない再エネ発電設備の加速的増設と、LNG(液化天然ガス)火力とのバランスを考えた増設となるのが現実的なシナリオだと思われます。
こうした環境下でリース業界に期待されることは、①固定価格買取制度(FIT)に頼らない太陽光発電、②巨額の事業資金を必要とする洋上風力発電、③地域特性を考慮した中小水力・バイオマス・地熱発電などの3つの推進です。さらにその他再エネへの協業案件も、SMFLには具体的に寄せられています」
ここには従来型のリースによる資金提供はもちろん、メザニンファイナンス(劣後ローン)や、エクイティ投資による資本参画あるいは自家消費を前提としたエネルギーサービス形態など、多様な資金ニーズや電力供給形態ニーズに応えていくことが求められている。
なお、①のFITに頼らない太陽光発電について西河は、「FIT価格の度重なる切り下げで、すでに経済性を失っているのでは? という質問を受けることも多い」と言う。
「システム価格も相応に下がっていますから、真に競争力のあるビジネスモデルの実行が求められ、より専門性の高い市場に変貌したとの認識を持っています。事業認定確定後まだ実現していない全国10兆円規模の未実現事業※も、総合力を駆使できる事業者のみが実現し得るでしょう。
それぞれの事業に対するより深い知見と専門性、それらを持つ専業パートナーとの密接な提携が、これからの環境エネルギー事業のメーンプレイヤーであり続けるための競争力の源泉になります」
西河はこう断言する。
※ 令和3年4月28日 資源エネルギー庁 「2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方」P15を基にSMFLにて推定
「太陽光発電設備の屋根置きに代表されるオンサイトPPA(電力販売契約)やオフサイトPPAなど、自家消費ニーズが急速に高まっている再エネ由来の電力の利用にとどまらず、熱エネルギーを回収して再利用する熱電併給モデルや蓄電サービス事業の商業化、さらには水素やアンモニアを活用した発電といった新技術による脱炭素の動きも注視する必要があります。我々SMFLはパートナー企業と協働し、こうした先端の動きにも役割を見出していきます。すでに水素ではいくつかの実証実験プロジェクトに参加しています。
そして、これらすべてを包括的に備えた『仮想発電所(VPP)』プラットフォームの実現など、複雑化する市場のニーズを的確に捉え迅速に応えるため、地産地消型の高度な脱炭素エネルギーインフラの実現に貢献することがリース会社に求められています」
業界トップクラスの実績と各分野の事業に対する深い知見で、脱炭素社会に貢献
SMFLグループでは、現在も拡充を続ける太陽光発電事業をはじめ、風力、バイオマス、バイオガス、中小水力、地熱などあらゆる分野の再エネ事業に取り組んでいる。
この取り組みを支える環境エネルギー分野のスタッフは、長く培ってきた経験に基づく、各分野の事業に対する深い知見と専門性を持っている。
例えば、太陽光発電事業の分野では、事業規模や設備のリース期間などに合わせて、リースやプロジェクトファイナンスなど、ユーザーのニーズに応じた最適なスキームをアレンジすることができる。
下に、SMFLグループが再生可能エネルギー発電事業向けに提供している、金融ソリューションの一例を挙げたい。
- リース
SMFLと発電事業者が設備のリース契約を結ぶほか、各種担保契約、売買契約などを締結できる。また、SMFLが設備を所有し、地主との地上権設定契約の主体となることで、固定資産税の支払いや保険付保を行う。
- プロジェクトファイナンス
特定事業に対して融資を行い、そこから生み出されるキャッシュフローを返済の原資とする手法。 SMFLでは、デットファイナンスからエクイティファイナンスまで多様なファイナンスをアレンジしている。
- エクイティ出資
事業のスポンサーとしてプロジェクトの特別目的会社(SPC)などにエクイティ出資を行う。出資割合は、TK出資(匿名組合出資)などの出資形態や関係当事者の事業への関与度合いなどを踏まえて、適切な割合を設定する。
SMFLグループでは、再生可能エネルギーの各分野において専業パートナーと密接な連携を築いており、幅広いサービスを提供することが可能だ。プロジェクトの現場をよく理解している──それは、初めてエネルギー事業に参入する顧客企業やパートナーにとっては “ 頼もしさ ” を感じる点だ。
補助金コンサル事業を手掛けている、SMFLの戦略子会社・SMFLみらいパートナーズを含めて、省エネ設備を対象とした補助金活用型リースの実績に関しては、大手総合リース会社の中ではトップクラスだ。
また足元では、企業の「脱炭素」に対する意識の高まりとともに、CO2(二酸化炭素)フリーに関する相談が増えてきているという。そういった中で、オンサイト発電をはじめとしたエネルギーサービスやCO2フリーのクリーン電力の媒介など、SMFLみらいパートナーズが提供する “ 脱炭素ソリューション ” が特に好評を得ているという。
SMFLグループの総合的な対応力は、脱炭素社会の実現のカギとなるだろう。
(内容、肩書は2021年10月時点)