新体制で次なる成長ステージヘ──"ピープルファースト"から生まれる変革に挑むシークス。「信頼」を基盤にSMFLとのパートナー関係を深化
電子機器受託製造サービス(以下、EMS)で国内最大級のシークスは、2025年4月、平岡和也氏を代表取締役 社長執行役員とする新体制をスタートさせた。世界14カ国・約50拠点を展開し、連結従業員数約8,700人を擁する※1までに成長した同社を率いる平岡氏は、今、新たな求心力の旗印を掲げ、“ 継承から生まれる変革 ” に挑んでいる。その挑戦に伴走するのが、三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)だ。SMFLは機械設備のリースに加え、経営支援プログラム「More Than Finance®」を提供し、同社の変革を支援。両社が共に重視する「信頼」を基盤に育まれてきたパートナーシップの軌跡と、両社が見据える将来展望について聞いた。
- ※12025年12月末時点
新体制の出航──変革の針路を探るなかで得た気付き
代表取締役 社長執行役員
平岡 和也 氏
シークスが新体制を発足したのは、2025年4月。社⻑就任前、主に中国事業を率いてきた平岡和也⽒が新たな成⻑戦略の中核に据えたのは、「ピープルファー スト」の旗印の下で「縦軸と横軸が有機的に交わる組織体制」という企業像だ。内外の営業拠点(縦軸)と、人材育成・機能連携(横軸)が、統一性を帯びて緊密かつ相互に機能し、顧客にとっての最適解を導き出す組織への構造転換だった。
とはいえ、あらためて団結し船出した経営陣には、1つの課題意識があった。“ 横軸 ” の中核をなす「人材育成」面の強化だ。平岡氏はこう表現する。
「当社では従来、OJT(職場内訓練)がメイン。『先輩の仕事を見て覚える』が当たり前の社風でした。しかし、例えば海外拠点に赴任した若手社員が、現地スタッフとのコミュニケーションをうまく取れない、マネージャー層向けの研修体制の整備が不十分──こうした部分をいかに強化するかは、前社長の時代から取り組みが始まり、後任の私に託された課題でした」(平岡氏)
代表取締役 専務執行役員
丸山 徹 氏
COS(首席補佐官) 代表取締役 専務執行役員の丸山徹氏も、こう振り返る。
「当社は元来、“ 営業職こそ花形 ” という会社でした。その企業風土のなかで『俺の背中を見て学べ』とする文化も根強くあったのです。結果的に、『研修』という発想が後回しになっていた面は否めません」(丸山氏)
あるとき、社員たちの報告に目を通していた平岡氏が、1つの事実に刮目した。「More Than Finance®」(以下、MTF)というワークショップ型のセッションを受講した社員たちが当時の社長に提出した「受講後レポート」だった。MTFは、従来の取引を通じ親密な関係を築いていたSMFLが提供する経営支援プログラムだ。
「これは面白いぞ! とピンときました。参加者全員が受講後のレポートに『気付きを得られた』と書いていたのです。『仲間に動いてもらうことや動かすことの大切さ』、『リーダーとマネージャーの違い』、『自分と同じことをほかの受講者も考えていたことを知ることができた』……など。そして、その “ 気付き ” をステップとした『次の段階』への展望を、皆が記していたのです」(平岡氏)
さまざまな視点や多様な価値観に触れたことが、自己成長につながり、今後の成長にベクトルが向けられている──。
「振り返れば自分自身、この会社で成長する過程で同じようなことを経験してきたじゃないか、と。このMTFで得られた成果を基盤にして社内の研修制度を構築すれば、当社の企業価値は必ず高まる。そう確信しました」(平岡氏)
MTFから始まった変化──個人の気付きとカルチャー変容
小澤 昭久
SMFLでは、事業の主軸であるリース・ファイナンス取引、再生可能エネルギー関連ビジネスや不動産関連ビジネスなどを営むとともに、経営支援プログラムとしてMTFを一定の取引先企業に提供している。
主に機械設備のリースを通してパートナーシップを深めてきたシークスに対して、2022年6月以来、「エンゲージメント」「企業変革とリーダーシップ」などをテーマに7回にわたりセッションを実施してきた。
MTFの目的について、SMFL執行役員 京阪神営業本部長の小澤昭久はこう解説する。
「機械設備リースのような “ ハードウェア ” のソリューションに対し、MTFは人材育成面での課題解決をお手伝いするいわば “ ソフトウェア ” のプログラムです。お客さまの個別の事情・状況・課題に応じてオーダーメイドでカスタマイズします。ビジネスパートナーとして、人材育成面でも共に成長・発展していくことを目的としています」(小澤)
重田 麻樹郎
小澤が述べたMTFの大きな狙いを、同じくSMFL 大阪北営業部長の重田麻樹郎が補足する。「MTFのコンセプトは『対話の場の提供』です。何かを “ 教える ” ということではなく、多様なコミュニケーションを通して参加者自身が “ 気付き ” を得るためのワークショップ──シークスさんとともに作り上げた7回のセッションも、その時々の課題にテーマの照準を合わせて実施しました」(重田)
シークスの丸山氏は、MTFを契機に社内で醸成され始めた変化を、次のように語る。「セッションの回数を重ねていくうちに、社員から『私もぜひMTFのセッションに呼んでください』という声があちらこちらで聞かれるようになってきました。もともと “ 研修 ” という発想が後回しだった当社にとって、これはいわば “ 革命的 ” な文化変容でした」(丸山氏)
尾﨑 新
コンプライアンスなどのテーマをはじめとする研修体験の有無が、今では人事の考査にも関係していると丸山氏は明かす。その点について、シークスを担当する大阪北営業部 上席部長代理 尾﨑新も手応えを感じている。
「MTFを経験することが、昇進・昇格にとってある種の “ 必修 ” 科目になっている、とおっしゃっていただいたことがあります。お役に立つものを実施できたことを実感し、大変うれしく感じました」(尾﨑)
シークスの本社従業員377人(2025年12月末時点)のうち、2026年3月末までに97人がMTFのプログラムを受講している。
意識変革をサポート──シークス向け「More Than Finance®」のセッション概要
| 実施月 | 参加者 | テーマ、期待される効果 | MTFコンテンツ |
|---|---|---|---|
| 2022年6月 | 海外マネージャー | 部下育成 部下のモチベーションアップ |
「エンゲージメント」 (オンライン) |
| 2022年9月 | 海外アシスタント マネージャー |
部下育成 部下のモチベーションアップ |
「エンゲージメント」 (オンライン) |
| 2023年3月 | 東西の業務改善 メンバー |
業務プロセスの改善 | 「Leanセッション」 |
| 2023年5月 | 国内の役員 | 企業文化の変革 | 「企業変革とリーダーシップ」 |
| 2023年10月 | 国内各部のマネージャー | 部下育成 部下のモチベーションアップ |
「エンゲージメント」 |
| 2025年1月 | アシスタントマネージャー候補生 | 問題解決手法の習得 | 「チームによる問題解決手法」 |
| 2025年11月 | アシスタントマネージャー候補生 | 主体性の発揮 | 「リーダーシップ」 |
企業理念を礎石にして築いた社内研修体制「シークスアカデミー」
MTFがシークス社内に及ぼした影響がもう1つ、2023年に始動した社内研修制度「シークスアカデミー」だ。制度設計の検討は前社長時代に着手し、現在はエンゲージメント強化・ポータブルスキル習得・専門技術・グローバル対応の4階層・計8コンテンツで構成される研修体制がほぼ整ったところだ。
シークスアカデミーの成り立ち、および、制度創設にあたり「エンゲージメント」を重視した理由を、丸山氏はこう説明する。
「MTFを通し、社員たちがその重要性を学んだ “ ポータブルスキル ” 、つまり『どこでも通用するスキル』を身に付けるための8コンテンツを、ピラミッド型の枠組みに構成したものです。その基礎部分に、社員の「エンゲージメント強化」を置きました。実は研修制度に関し、その在り方や取り組み方を考究するなかで、ある取引先の方から助言を受けたことがあったのです。『研修の意義を全社に広く共有・浸透させるには、“ 創業のフィロソフィー ” とセットで制度を設計し、機能させること』と。それならば当社には、確たる企業理念『SIIX Principles(以下、シークス・プリンシプルズ)』※2がある。これを土台に据えようと考えました」(丸山氏)
「シークス・プリンシプルズ」について平岡氏は、「当社のフィロソフィーであるとともに、ハート&ソウル(心と魂)そのもの」と公言する。策定されたのは、2002年。だがそれから20年以上にわたり、海外ローカルスタッフへの浸透が不十分という課題認識も持っていた。
そこで、アカデミー制度の整備に並行して、「シークス・パイオニアーズ」というグローバル幹部育成プログラムを立ち上げ、各国のメンバーが自国に持ち帰って展開するモデルを実践。この試みが成果を上げたと平岡氏は言う。
「土台部分への浸透は、海外スタッフ間での共有も含めて、一定の水準を達成できました。これを基盤に、アカデミーの上層部分とMTFを積み重ね、研修体系を構築・充実させています」(平岡氏)
シークス・プリンシプルズを「絶対に譲れないもの」(平岡氏)とする一方で、およそ四半世紀前に策定されたこの理念には「時代の変化に応じたトランスフォーメーションも必要」とも指摘し、平岡氏はしなやかな思考の一端をのぞかせる。
「シークスが今後、新たな事業をどれだけ興せるか──新しいことを始めるのは、難しいチャレンジであると同時に、心がワクワクする仕事です。そういうトキメキにあふれた企業でありたいのです」(平岡氏)
- ※2SIIX Principles:「企業として取り組むべきビジネス上のテーマ」「社会で果たすべき使命」「目指すべき企業の姿」「大切にするべき企業としてのあり方や姿勢」の4本柱で構成される同社の企業理念
シークスアカデミーの基本概念
「継承」から生まれる「変革」──パートナーシップが開くチャレンジの扉
シークスは2024年に策定した中期経営計画(2024〜2026年)「VISION3」のなかで、「人的資本経営で『ヒト』を大切にする(人財)会社」への完全転換を掲げた。また、2025年7月にジャカルタで行われた同社のグローバル戦略会議では、平岡氏が「成長戦略の “ ど真ん中 ” に社員を置く。『ピープルファースト』でいきます」と宣言している。
社長就任以来、平岡氏は社内に向けても、機会を捉えてこんな呼びかけを続けているという。
「建前でごまかさず、率直に、本音の対話を徹底しよう」
「本質を突いた会話を心掛けよう」
掲げられた旗印、社長が発信するマインドセット見直しの提唱は、世界各地の拠点組織(縦軸)にもじわじわと浸透し、同社の人材育成・連携機能・企業文化(横軸)を変えつつある。
こうした変革の効果は、経営指標の数値からも読み取れる。2026年度第1四半期には、全地域セグメントが黒字を達成。19期連続増配の実績を持つシークスが、「内側からの変化」をテコに、さらなる成長に向けて飛躍しようとしている。その伴走役を、SMFLが担う。両社のパートナーシップを深めるために、SMFLの小澤にはこんな考えもあるようだ。
「SMFLでは、2020年に従来の経営理念・経営方針を再定義し、『SMFL Way』を制定しました。この私たちの新たなアイデンティティーとなる『SMFL Way』を浸透させるツールとして、社内でMTFを活用しました。その経験を生かし、『シークスプリンシプルズ』の浸透や、あるいは時代に即したトランスフォーメーションに際しても、ビジネスパートナーとして、MTFを活用したご支援の実現に向けて構想を練っています」(小澤)
重田も、“ 次の一手 ” を考えていると語る。「電子機器受託製造の工程で、モノによっては “ 自前で所有 ” することの合理性が低い設備もあるのではないかという思いが、かねて私にはありました。そうであれば、そこにSMFLの機能を利用していただければと思います。SMFLにはお客さまのニーズに合わせてさまざまなソリューションがあることに加えて、新しいことにチャレンジする社員を応援する企業風土があります。平岡社長がおっしゃった “ 心がワクワクする ” チャレンジにシークスさんが乗り出すときには、当社もシークスさんの最良のビジネスパートナーとして、ぜひ伴走できればと思います」(重田)
「確かに、すべてを自前で賄う時代ではありませんね」と平岡氏は応じ、「ビジネスを拡大する際は、信頼できるパートナーとぜひタッグを組んでチャレンジしたい」と述べて、言葉を重ねた。
「信頼関係の価値を、私たちはビジネスという文脈を超え、シークスにとっての人生観のようなものとして、非常に重く捉えています。SMFLさんとの間でも信頼関係を基盤にして、今後さらに本音の対話と本質を突いた会話を深めていきたいです」(平岡氏)
そこには、前身企業「阪田商会」の立ち上げから、電子部品輸出部門の分離・独立を経て、現在のシークスに至るまで脈々と受け継がれてきた「創業のフィロソフィー」がにじんで響いた。平岡氏は最後に、こんな胸の内を明かした。
「EMSという業態を超え、新しい枝がシークスからどんどん伸びていくようなこと──『信じられる? これ、おれがシークスでやった仕事やで』と言えるようなことを、社員の皆には考えてほしいのです。そんな会社であってこそ、おもろいと私は思うのです」(平岡氏)
「設備を使ってモノを作る」ハードウェアの回転と、「人の知恵と手で人材を育成する」ソフトウェアの循環。シークスとSMFLのパートナーシップには、その両輪が備わっている。「More Than Finance®」なども駆使し、両社は新たな地平を切り開く。
(内容、肩書は2026年8月時点)
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