なぜ武蔵野グループは、次世代の経営人材の育成をSMFLに託したのか?
自己変革を促す「More Than Finance®

なぜ武蔵野グループは、次世代の経営人材の育成をSMFLに託したのか? 自己変革を促す「More Than Finance®」

自ら学び、自ら考え、挑戦し、成長し続ける「人財」の育成を求めていた中食産業の雄・武蔵野グループ。同社の行動指針集「武蔵野イズム」を実践するために導入した三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の経営支援プログラム「More Than Finance®」(MTF)、その背景と効果に迫る。

自ら学び、自ら考え、挑戦し、成長し続ける「人財」の育成

SMFL MTF推進部 上席部長代理
井上 久美子

SMFLが提供する、ワークショップ型セッションの経営支援プログラム「MTF」。顧客企業の役員や社員が参加し、意識改革などを通して次世代のリーダー育成を目指す。セッションをファシリテートするSMFL MTF推進部の井上久美子は、MTFに臨む姿勢を次のように語る。「そもそも私たちSMFLは『研修』を主業とする企業ではありません。すでに確立されたフレームワークを用いるわけではなく、あくまで私たちが社内で人材育成・開発プログラムとして、実際に試行錯誤しながら積み上げてきたベストプラクティスをご提供します。その効果を私たち自身が実感しているからこそ、自信を持ってお客さまにお勧めできますし、お客さまにとっても受け入れやすいのだと思います」

そんなMTFの興味深い事例が埼玉県内で進行している。舞台は朝霞市。コンビニ向けを中心に、弁当・おにぎり・総菜・パン類・麺類などを製造販売する武蔵野グループだ。持ち株会社の武蔵野ホールディングス(HD)と、傘下の3つの事業会社(武蔵野、武蔵野フーズ、武蔵野ロジスティクス)からなる。グループ全体の売上高は約2,400億円。全国に27カ所の工場と約1万4,000人の社員・パート従業員を擁する。商品開発力の高さに定評があり、「ツナマヨネーズおにぎり」を生み出したことでも広く知られる。

SMFL 城北営業部長
奥田 和幸

コンビニ業界の隆盛とともに成長を続けてきた武蔵野グループが、実は意外な課題に直面していることを知ったのは、SMFL 城北営業部長 奥田和幸だった。奥田は次のように振り返る。「武蔵野グループさんとはそれまでの長いお取引を通じ、経理部門だけでなくさまざまな部署との人のつながりが自然と築かれていました。ある時、人事部の方々とお話ししているなかで、喫緊の重要課題として人材育成の具体的な施策を検討していらっしゃる、と伺いました。それならば当社の経営支援プログラムである『MTF』が最適だと判断し、ご提案することになりました」

武蔵野グループの経営陣が直面する「人材育成の課題」とはどのようなものだったのか。同グループならではの事情を、武蔵野HD専務取締役 人事部長の金戸良志彦氏が明かす。「社員各層のなかでも、特に工場長と工場長候補に関してです。次世代の経営を担う彼ら・彼女らの部下に対する『指導・育成能力』と、『エンゲージメントを高めるコミュニケーションスキル』をかねてから向上させたいと考えていました。コンビニ向け中食ビジネスに求められるのは、目まぐるしく変化する消費トレンドを先取りして商品を企画・開発し、必要な量を必要なタイミングで各店舗に確実にお届けすること。そのためには、コンビニの変化に後れを取らぬよう、私たちも商品の製造工程や生産管理の手法を進化させ続ける必要があります。工場は我々の事業にとっていわば心臓部。それを率いる工場長や工場長候補のマネジメントスキルを伸ばせるか否かは、経営全体の行く末を左右する大きな課題なのです」

株式会社武蔵野ホールディングス 専務取締役 人事部長
金戸 良志彦 氏

業界有数の企業規模に成長したからこその危機意識が、経営陣にのしかかっていたのだ。

社員一人ひとりが経営意識を持ち、自己を律して変革にチャレンジする姿勢をいかに浸透させるか、だ。

実は武蔵野グループでは以前より自己変革を促す基盤となるものが存在していた。『武蔵野イズム』──と題された冊子の存在である。

全社員に1冊ずつ配布されるその冊子には、同グループ社員が意識に置くべき行動規範が記されている。「自ら学び、自ら考え、挑戦し、成長し続ける人財の育成」を理念に掲げ、同グループ創業者で現・取締役会長の安田定明氏による経営哲学をまとめた「行動指針集」だ。社員各自がこの規範を足掛かりにして「自律人財」へと変革することを促したい、との思いが込められている。

その思いを金戸氏はこう話す。「当社グループの社員は、総じて真面目。皆、『武蔵野イズム』を熟読玩味じゅくどくがんみしてくれています。しかし、『武蔵野イズム』が求める水準に本当に達しているのかというと、いまだ及ばず、が正直なところ。武蔵野グループの持続的成長のためには人の変革が必要で、その変革の中核を担うべきは、やはり管理職です。『武蔵野イズム』の真の実践のためにも、次の一手を探っていたところだったのです」。そんな模索のさなか、SMFLから提案されたのが、MTFだった。

強化ポイントは、エンゲージメントとリーダーシップ

SMFL 城北営業部 上席部長代理
長谷川 厚

こうしてMTFの採用が決定した。プログラム実施に向けたセッションの設定を主導したのは、SMFL 城北営業部の長谷川厚。営業担当者として普段から武蔵野グループに接してきた長谷川はこう語る。「武蔵野グループさんには理想とされているリーダー像があります。私も『武蔵野イズム』を拝読し、そのイメージは理解しつつありました。MTFの提供を通じて、セッション参加者がその理想像に近づくためのお手伝いができるのではないか、と考えました」

具体的にどんなプログラムを提案するべきか──長谷川とMTF推進部はまず、金戸氏をはじめとする武蔵野グループ人事部のメンバーに徹底的にヒアリングを実施。その結果、「指導・育成能力の向上」「エンゲージメントを高めるコミュニケーションスキルの向上」という2つの課題認識が共有された。これを踏まえてSMFLから「エンゲージメント(包容力リーダーシップ)」のセッションが提案され、実施が決定した。

株式会社武蔵野ホールディングス 人事部課長
畠山 耕一 氏

武蔵野HD人事部課長の畠山耕一氏は、このテーマ設定を歓迎したことを振り返る。

「人材育成・開発のために何をすればよいか悩んでいた私たちの課題感を、SMFLさんはしっかりと受け止めてくださり、具体的な形に落とし込んでくださいました。『このプログラムならぜひやりたい!』と最初から思えるものでした」

コロナ禍などの諸事情により、まずは武蔵野HDの本部スタッフ10人を対象に2022年2月に初回のセッションを、次いで各工場の製造リーダー12人を対象にした2回目のセッションが同年6月に順次実施された。具体的にはどんな内容だったのか。現場でファシリテーションを担当したSMFLの井上がこう解説する。

「『部下が生き生きと働ける職場を作るために、リーダーが取るべき行動について学び、翌日から職場で実践できるよう計画すること』をエンゲージメントセッションのゴールに設定して、ゲームやユーモアを取り入れ、参加者が『体験』から学べるアクティビティを盛り込んだワークショップを実施しました。参加者は緊張していることが想定されたため、導入ではいかに場をほぐすかという雰囲気づくりを心掛けました」

セッション後、武蔵野HDの金戸氏から、“ たっての要望 ” が示された。「今回得たものを参加者が現場で実践し、そこで学んだことをぜひ振り返って検証してほしい」というのだ。

そこで後日、本部スタッフ向け・工場スタッフ向けにそれぞれのセッションに対する「振り返りセッション」を実施した(2022年5月・10月)。SMFLの井上がこう続ける。「セッションは単なる研修ではなくビジネス活動の一つのため、実施して終わりではなく、その後の効果や成果を検証することが重要となります。『振り返りセッション』では自身の経験を振り返り、参加者同士の対話の中から、自身の行動のどこが良かったのか、どこが悪かったのか、お互いにフィードバックを行いながら教訓を引き出し、次の実践を計画しました」

株式会社武蔵野ホールディングス 人事部係長
坂本 未来 氏

さらに同年11月、武蔵野グループはSMFLに対し、製造リーダー向けの第2次セッションを新たに依頼。セッション追加の背景を、武蔵野HD人事部係長の坂本未来氏がこう説明する。「以前、当社が製造リーダー社員を対象に実施した360度評価で、『総論として業務遂行能力が高い一方、長期的視野での構想/戦略立案・論理的な説明に関する能力は低い』という結果が得られていました。要するにテクニカルスキルは高いけれども、変革は苦手ということです。人事部として、放っておくわけにはいきません。何か策を講じる必要がありました」

新たな依頼に伴い経営陣からは、「社員一人ひとりが経営思考を養い、その上で自律的なキャリア形成を志して組織の運営を担うようになってほしい」との期待も示された。綿密なディスカッションを経て実施されたのは、「武蔵野イズム」にのっとった「企業変革とリーダーシップ」セッションだ。2022年12月、前回の製造リーダー向けセッションに参加した12人を対象に、再度実践的な演習が行われた。

MTFを経て、「部下へのコーチングを強く意識するようになった」

武蔵野HDの畠山氏は、一連のセッションを経た参加メンバーについて、「意識の変革が確実に起こり、さまざまな気付きを得ている」と見る。参加者から彼の下に寄せられたのは──「部下に対するコーチングをより強く意識するようになった」「リーダーシップの在り方を体系的に学べた」「エンゲージメントやリーダーシップについて、そして自分自身について、あらためて深く考える良い機会になった」──といったコメントの数々だという。

これらの声に畠山氏は、「『武蔵野イズム』に記されている行動指針について、これまで皆、頭では理解していながら十分に実践するまでには至っていませんでした。MTFのセッションを通し、行動指針が意味するところの理念を身をもって感じたことで、実践に向けた自信を深めたようです」と手応えをにじませる。

武蔵野HDの坂本氏も、MTFの効果を実感してこう話す。「社内で実施する内輪の研修とは異なり、外部の方たちから受けた助言や指導は、やはり自己変革へのより強い動機になったようです。何か策を講じなければと、焦りを感じていた私たちにとっても、MTFは解決に向けた一筋の光となりました」

武蔵野HDの金戸氏は第2次セッションを振り返り、こう評価した。「第2次セッションの演習テーマは『経営状況が良くない菓子メーカーをどう立て直すか』というものでした。我々武蔵野グループの状況とは全く異なるシチュエーションで社員たちに考えてほしいと思い、この設定をSMFLさんにお願いしたのです。日常の前提を取り払った状況下で、いかに自ら学び、自ら考え、それを言葉として表現するか──『武蔵野イズム』の本当の実践をシミュレーションできる貴重な場になりました」

武蔵野HDの意識変革をサポートする、SMFLの「More Than Finance®

■ セッションの概要

回数 時期 対象者 テーマ 内容
初回 2022年2月 本部スタッフ10人 エンゲージメント 部下が生き生きと働ける職場を作るために、リーダーが取るべき行動について参加者全員で、気付きを積み重ね、翌日から職場で実践する。
2回目 2022年5月 本部スタッフ10人振り返り
3回目 2022年6月 各工場の製造リーダー12人
4回目 2022年10月 各工場の製造リーダー12人振り返り
5回目 2022年12月 各工場の製造リーダー12人 企業変革とリーダーシップ 「経営状況が良くない菓子メーカーをどう立て直すか」を仮想テーマとし、「武蔵野イズム」にのっとった実践場面をシミュレーション。意識改革を行う。

■ Before/After

Before 経営陣からの期待 After
マネジメント能力は高いが、変革期に必要な人の巻き込みなどが苦手
  • 一人ひとりの経営思考
  • 自律的なキャリア形成
  • 組織の運営を担う人材
  • 意識の変革が確実に起こり、さまざまな気付きを得ている(武蔵野HD人事部課長・畠山氏)
  • 行動指針が意味するところの理念を、身をもって感じたことで、実践に向けた自信を深めた(同上)
  • 外部の方たちから受けた助言や指導は、やはり自己変革へのより強い動機になった(武蔵野HD人事部係長・坂本氏)
  • 「武蔵野イズム」の本当の実践をシミュレーションできる貴重な場になった(武蔵野HD専務取締役人事部長・金戸氏)

■ 参加者の感想

部下に対するコーチングをより強く意識するようになった/リーダーシップの在り方を体系的に学べた/エンゲージメントやリーダーシップについて、そして自分自身について、あらためて深く考える良い機会になった

MTFがより強固にする、両者のパートナーシップ

MTFがもたらした効果を踏まえ、武蔵野グループが目指すのはどんな未来か。金戸氏が力強く語る。「当社グループでは食品事業に加えホテル事業も、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンの周辺などで展開しています。コロナ禍からの出口が見え始めた今、国内外からのお客さまも戻り始めており、ホテル事業は今後も拡大していくつもりです。主軸の食品事業に関しては、海外市場の開拓を視野に入れています。今の時代、いずれの事業でも、さまざまな国籍の人材を生かせる多様性は不可欠。管理職層社員にはますます高いマネジメントスキルが求められることになる。その意味でも、MTFには今後とも大いに期待しています」

期待の言葉をかけられて、SMFL の井上は次のように応えた。「実務の環境とは異なる非日常の状況を演出し、楽しみながら学んでいただくことで、その体験は深くかつ長期的な記憶として参加者に刻まれます。それが、確実な効果につながるのだと思います。これからもお力になり続けられるよう私たちも努めます」

今回、武蔵野グループとMTFの設定を主導したSMFLの長谷川は、金融の枠を超えたソリューション・プロバイダーの役割を務めることにもなった今、自らの立脚点をこう顧みる。「MTFをご提供するために大切なのは、何よりもまずお客さまを深く理解していること。これは、金融サービスをはじめとするさまざまなソリューションをご提案するプロフェッショナルとして当然の前提でもあります。お客さまに寄り添い続けることを何より大切にするSMFL社員の一人としても、武蔵野グループさんがMTFに寄せてくださるご期待には身が引き締まる思いです」

次いで、SMFLの奥田は、今回のMTFの成果をこう総括した。「MTFという、金融を超えた価値提供を評価していただけたことを何よりうれしく存じます。今後も頼りになるパートナーとしてご信頼いただけるよう、さまざまなソリューションをご提供してまいります」

自己変革を重ねることで、さらなる高みを目指す武蔵野グループ。金融にとどまらない多様なソリューションで顧客の課題を解決し続けるSMFL。今後さらに深まるであろう両者のパートナーシップに注目していきたい。

  • 新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で取材を実施しております。

(内容、肩書は2023年3月時点)

お問い合わせ

MTF推進部 
TEL:03-6695-6139

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