圧倒的な業務コストの削減を実現。顧客企業のBCP対応も後押しする、帳票・契約手続きのデジタル化

リース取引では、契約書をはじめ必要とされる書類は多岐にわたる。リモートワークが浸透しつつある今、「出社して記名・押印」という従来の常識はアップデートされ、各種の電子契約システムの導入などのデジタル化に向けた動きが加速している。リース会社が挑むDXとそのインパクトについて、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の執行役員 事務企画部長・小林文子に話を聞いた。

進む、脱ハンコ。B2B取引では「取引時確認(本人確認)」も課題に

リース取引においては、リース会社とユーザーとの間で締結する「リース契約書・物件受領書(借受書)」、物件購入に際してメーカー・販売会社などのベンダーとの間で締結する「注文書・注文請書(兼請求書)」が新規契約時の代表的な書類だ。これらに加えて、物件代金の支払内容をベンダーに通知する「支払通知書」、さらに、リース期間中の中途解約手続きなどに必要な「変更契約(協定)書」、リース満了時の「リース期間満了案内」、そしてリース料の支払いの都度発行する「請求書」など、一連の取引に必要な書類は多岐にわたる。

「これらの業務には紙とハンコが欠かせず、各書類の記名・押印や授受のために出社することは、コロナ禍前は珍しい風景ではありませんでした」と、SMFLで営業をサポートする事務スタッフを統括指揮する事務企画部長・小林文子は振り返る。「新型コロナウイルスの感染症対策としてリモートワークが推奨されるようになって2年余りが経ちますが、B2Bの取引では、リースに限らず、紙ベースでの書類が数多く残っています。一方、銀行やカード会社、保険会社などのB2C取引では、Webによる電子取引が主流となっています」

執行役員 事務企画部長
小林文子

B2B取引のデジタル化を阻む要因の1つに、法令対応として必要な確認作業などがある。「リース契約では、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認など、単純に電子契約へ移行するだけでは済みません。業界全体として、関係する省庁への規制緩和要望を提出するといった働きかけも必要でした。コロナ禍の長期化に伴ってユーザーやメーカー・販売会社などのベンダーから各種書類の電子化の要望が増す中で、当社ではまずリース契約と各種変更契約・売買契約への電子契約導入に着手し、これを起点にデジタル化を加速させています」

リース取引のデジタル化を推進

リースは、機械設備などを中長期にわたって賃貸する取引であるから、契約時のみならず、契約した後もリース料の請求書や口座振替案内書などを継続的に発行する必要がある。「ユーザーがリース料の支払をはじめとした各種手続きなどを行うに際し、紙の書類での対応はリモートワークの阻害要因となっており、請求書など関連する帳票の電子配信・交付も進展しています」

2020年5月に、SMFLは業界に先駆けて電子契約の導入に踏み切った(本Webサイト記事:2021年3月22日付 「脱ハンコの『国産標準へ』」)。提供する電子契約サービスは、SMBCクラウドサインが提供するSaaS(Software as a Service)の「SMBCクラウドサイン」を共通基盤として活用。弁護士ドットコムと銀行の “ 最強タッグ ” が支えるセキュアなシステムとして好評を博し、導入企業数約14万社、電子契約市場で8割以上のシェアを占めている(2022年3月現在)。

デジタル化は「契約」だけにとどまらない。「脱ハンコをさらに推進するためには、関連帳票の電子配信・交付など、リース取引のプロセス全般をデジタル化していくことが重要です」と小林は語る。2021年6月には、企業のデータ活用支援事業を手掛けるウイングアーク1stとの協働で、「SMFLデータサービス」の提供を開始。従来のリース契約に関連する紙ベースの請求・支払関連の帳票を電子化し、取引先にデジタルで配信するサービスを提供している。

「SMFLデータサービス」で取引先にデジタル配信

請求・支払関連業務では、毎月の請求書や支払通知書を印刷し送付していたが、郵送によるタイムラグや大量の帳票印刷・発送にかかるコストが大きい。また、これらの業務はコロナ禍でも出社しなければならない要因の1つでもあった。

「まず第一弾として、機械設備の仕入れ先であるベンダー向けに、『お支払通知書』の配信を始めました。順調に利用先数も増え、登録者数は600社(2022年3月)を超えています。この2月には、お客さま向けのリース料などの『請求書』『口座振替のご案内』の配信にも着手しました。1月に電子帳簿保存法が改正されたことにより、先方でどのように書類を保存するのかも重要なポイントです。当社は請求書を受け取る側でもあるので、お客さま目線で電子化のメリットや活用法をご支援、ご助言できればと思っています」

リース取引プロセスのデジタル化

BCPにも資するデジタル化。セキュアなシステムで支える

一度踏み出したリース取引に係る手続きのデジタル化は、以前の紙とハンコの手続きに戻ることはない。ペーパーレス・ペーパーストックレスの加速化による時間とコストの大幅な削減効果に加え、環境への配慮にも資するからだ。さらに、BCP(事業継続計画)の観点からも期待される向きは大きい。「リモートワークや災害時など緊急事態におけるBCPへの対応が可能になり、レジリエンスな経営を実現するためにもデジタル化は欠かせません」

顧客へのデジタルサービスの提供は、SMFL社内で進むDXの裏付けに他ならない。2022年1月には、膨大なリース償却資産等に係る固定資産税の本申告業務のデジタル化を実現。「毎年1月1日時点で資産計上されているリース物件などの償却資産に係る固定資産税を、これまでは全国約1,900の自治体に向けて書面で申告してきたのですが、その際に約1,900枚の申告書と合計約4万枚の明細書をセットにして郵送するため、毎年400時間以上を費やしていました。これを地方税ポータルシステム「eLTAX」を用いた電子申告に切り替えたことにより、作業時間を約2時間まで圧縮し、95%の削減効果を生んでいます」

SMFLをはじめとするリース会社は、モノの賃貸やファイナンス機能の提供だけでなく、資産の所有にかかわる顧客の事務負担の軽減やコスト平準化、取引にかかわる与信リスクの回避など多様な役割を担ってきた。今後は、リース取引全般にデジタルを活用し、ユーザーやベンダー、ひいては社会全体に新たな付加価値と利便性を提供していく。社会のデジタル化を推進するSMFLの果たすべき役割は大きい。

(内容、肩書は2022年4月時点)