小口リースは新時代へ。完全オンライン手続きにより、紙の契約プロセスを大幅に圧縮

三井住友ファイナンス&リース(SMFL)のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している。中小企業向け小口販売金融(以下、小口リース契約)を展開しているリテールリーシング部門では、2021年1月、顧客と交わすリース契約を電子化した。審査申込から契約締結までの手続きすべてをオンライン上で一度に完結させる。今後は、新たな販売金融モデルの構築にも期待が集まっている。

“必要”なのに、進まなかったデジタル化。コロナ禍で一変

リテール開発部 副部長
星野 陽

販売金融とは、設備機器を販売する会社(以下、サプライヤー)が、リース契約の手続きも代行する、販売支援型のビジネス。SMFLでは、小口リース契約を分掌するリテールリーシング部門が取り扱っている。

リテール開発部の副部長を務める星野陽は、「リテールリーシング部門にとってデジタル化は、かなり前から切実な課題になっていました」と語る。

小口リースは案件の数が多い。その分、処理すべき事務量も膨大だ。年間約10万件を超える契約手続きが、紙の契約書で交わされていた。手作業による処理に限界があるのは明らかだった。

星野が振り返る。

「できる限り多くのお客さまとのリース契約を円滑に進めていくために、約4,000社のサプライヤーからの審査申込を自社開発の『SECOND PLUS』でデジタル化し、自動審査システムの『ACD』と組み合わせ、ビジネスプロセスの効率化を図っていました。また、出先から申込書類や契約書類を画像送信できるスマートフォンアプリ『SMART SECOND』も自社で開発し、内製化によるデジタル対応の基盤は出来上がりつつありました」

しかし、一連のビジネスプロセスの肝である顧客との「リース契約」をデジタル化するには大きな「壁」があった。以前からの商慣習や紙とハンコ文化、デジタル化への抵抗感などだ。社内外への浸透には、時間を要したという。

「紙ありきのビジネスプロセスの弱点が露呈したといえるかもしれません」(星野)

このようなビジネス環境下で、突然世界を襲ったのが、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大だった。社会は、一変した。

リモートワークの仕組みづくりと業務のデジタル化が急務──。この認識が社内のみならず、サプライヤーや顧客などの取引先にも、瞬く間に共有された。

だがそのときの星野は、より強い危機感を抱いていた。「コロナをきっかけに、従来型の販売金融というビジネスモデルは、早晩、立ち行かなくなるかもしれない」。

「感染リスク回避のために、サプライヤーと顧客の間での対面商談の頻度が減少することで、『リース契約完了』までのサイクルが長くなります。取引先の利便性を第一に考えると、旧来のやり方に何も手を打たなければ『今回のリース契約は見送ることにしよう』となり、商機を逸することにつながりかねない。販売金融のビジネスモデルを変える新たな仕組みを、早急に構築する必要に迫られました」

緊急事態宣言下の2020年5月、「在宅勤務プロジェクトチーム」と並行して、「リテールリーシング部門電子契約プロジェクト」が発足。小口リースのデジタル化に向けた動きが一気に加速した。

「SMFLだけじゃない」。サプライヤーも顧客も、肩を組んで変革を目指す

SMFLには、デジタル化を推進するための強力な武器がある。デジタルシステムを自社開発する「完全内製化」の体制と専門人材だ。営業部門とITエンジニアは社員同士。いつでも、隔たりのない細やかなコミュニケーションが直接とれて、デジタルシステムの利用者の声を迅速に反映でき、細部の仕様変更にも臨機応変に対応できる。

幸い、小口リース契約向けの自動審査システム「ACD」とWEB審査申込システム「SECOND PLUS」の運用が既に始まっていた。このシステムに加え、オンラインでリース契約の申込を行えるシステムと、電子契約締結を可能にする「SMBCクラウドサイン」を導入し、「審査申込から契約締結まで」のビジネスプロセスをデジタル化した。

「審査申込から契約締結まで」をデジタル化したこの新システム。脱ハンコもさることながら、もう1つ、大きな効果を発揮している。ヒューマンエラーの防止である。パイロット版を稼働開始した2021年1月以降、手書きの契約書にありがちな記入漏れや書き間違いなどの不備が早い段階で是正され、差し戻しに伴うリワーク作業が大幅に減った。その結果、そこに費やされていた時間を他の業務に振り替えて、有効に活用され始めている。

いま、営業部隊は、電子契約サービスを紹介しながら、全国の取引サプライヤーへの普及を推し進めている。もちろん、フィードバックのため、現場の声に耳を傾けることにも力を注ぐ。だから、普及推進の呼びかけは、こうだ──「一緒になって、社会にイノベーションを起こしませんか」。

小口リースのビジネスプロセスをデジタル化

「商談の入口から契約満了まで」。一気通貫のシステムも視野に

今回のリテールリーシング部門の電子契約プロジェクトのチーム編成においても、他のDXプロジェクトと同様に、営業・事務・開発・法務などの各部門の専門家によってメンバーが構成されている。星野は、そのリーダーとしてPT(プロジェクトチーム)を束ねている。

以前の所属部署で、システム開発部隊を率いるリーダーたちの多くに知己を得ていたこともあり、プロジェクトのまとめ役として白羽の矢が立った星野だが、自身ではその理由を「超アナログ人間だからですよ」と笑う。

SMFLが目指すデジタル化は、単にパソコンやスマートフォンで操作できる仕組みを構築するだけの「IT化」ではない。また、たとえ処理速度が速くても、現場で使いこなせるものでなければ評価されない。常に重視されるのは、開発するシステムのユーザビリティの高さなのである。

使いやすさにこだわるシステムをつくるには、現場を知る人からの意見が欠かせない。特にUI(ユーザー・インターフェース)に関しては、システムを実際に操作する利用者の声が重要だ。

「超アナログ人間である私が『使いやすい』と感じるシステムならば、パソコンを扱い慣れていない方でも使いこなせるはず。使いやすさ、分かりやすさを徹底的に追求して、『ここまでのものができるのか!』といった高揚感をもお届けしたいんです。先行きが見えづらいビジネス環境下で、私たちの取り組みを通して明るい話題を1つ提供できればいい。それが、PTメンバーの総意です」と、星野は目を輝かせる。

将来的には、リモート商談やタブレットでの操作を可能にするモバイル対応を予定し、いずれは、“審査申込から契約締結まで”を超えて、「小口リース契約に関するプロセスのすべてを一気通貫で行えるようにしたい」(星野)。次は、“商談の入口から契約満了まで”との構想である。

「良質で安定した金融サービスを提供し続けることは、当社の重要な使命です。サプライヤー、顧客に利用いただくことで、さまざまなご要望をいただきますので、そうした声に応えながら、継続的にブラッシュアップしていきます。利便性の追求に終わりはありません」(星野)

進化し続けるビジネスモデル。それがもたらす販売金融の新たな姿。デジタル先進企業・SMFLの視界には、これまでの社会とは異なる近未来のビジネス透視図がとらえられている。

Case Study

株式会社ワイズ

不安はすぐに解消。体験してみてわかる便利さ

「電子契約」の導入背景

OA機器の販売に際して、SMFLのリースを利用しています。今回の電子契約の手続きにあたっては、業務の簡素化や、それに付随した取得書類の軽減、契約書の手戻り軽減などを期待していました。もちろんコロナ禍では、顧客に訪問しづらい環境のため、できる限り訪問回数を減らしたいという意向をもっていました。

導入効果と今後への期待

マニュアルを見るだけで十分に理解でき、滞りなく、ラクに作業することができました。非常に簡単。こうした新しいツールに苦手意識のあるスタッフも、一度利用してみれば「便利さ」を実感できるので、とてもポジティブにとらえています。

好評だったのはスタッフだけではなく、顧客からも「簡単に手続きできた」との声が届いています。比較的、年齢を重ねた世代の方が多かったのですが、サクサクと手続きをしていただけたようです。

また、工数を削減し、生産性が向上するのも嬉しいですね。プロセスが電子化されることで、契約書の記載ミスや押印漏れなどの対応が不要になるのも大きなメリットだと思いました。押印が不要になるので、契約業務をスムーズに進められるなど、業務の簡素化も図れました。

今後の期待としては、セキュリティ面を心配する顧客向けに、アドバイスやサポートをしていただけると心強いです。また、引落口座についても、デジタルで完結できるようにしてほしいですね(※)。今後の一層のサービス拡充を期待しています。

※SMFLに利用可能な「リース料等の引落口座」を登録されている場合は、2021年4月以降に電子化対応を予定しています。

Case Study

株式会社テレコム

手戻りが少ない上に、手続きもラク。ネガティブな要素がありません

リース利用のメリット

主力商品である業務用無線機や車載機について、SMFLのリース取引を利用しています。リース契約は、期間があらかじめ定められているため、機器の入替時期も把握しやすくなり、顧客への入替提案を遅滞なく行えることが大きなメリットだと考えています。リースを活用したビジネスモデルは、当社にとっても馴染みやすく、既に社内で定着しています。

「電子契約」の導入背景と効果

コロナ禍では、顧客との対面接触に配慮が必要です。その折に、SMFLの電子契約を活用できたのは、渡りに船という状況でした。効果としては、以下のようなものがあります。

  • コロナ禍において、電子契約は対面での感染リスクをなくすことができる
  • 遠方の顧客に対して、訪問時間を削減できる
  • 手戻りを軽減できる。書類送付や不備手間の削減(特に遠方の顧客とのやり取りでは、日数を要します)
評価と今後への期待

「ラク」をできたというのが、いちばんです。運用にあたって、ネガティブな意見は上がってきていません。ぜひこの手軽さを、ほかのスタッフにも伝えていきたいですね。実は以前に、SMFLの橘社長のインタビュー記事を拝読していたので、デジタル領域に力を注ぐSMFLの姿と、今回の電子契約プロジェクトが重なり、その熱量を実感しました。

今後の期待としては、電子契約でも、契約獲得時の高揚感をもっと実感したいところです。というのも、電子契約だとリアルに顧客と対面しているわけではないので、契約をとれたときの感動がわきづらいのは否めません。それと、リース契約に関連する書類の電子化にも対応していただけると嬉しいです。

(内容、肩書は2021年3月時点)

お問い合わせ

SECOND+セコンドプラス電子契約チーム 

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