なぜ、リース会社が地方創生に挑むのか? SMFLが描く太宰府の未来、その真意に迫る!

2019年10月、福岡県太宰府市に、SMFLと地元パートナー企業が立ち上げた古民家宿泊施設が営業を開始した。通過型観光地である太宰府に観光客の「滞在」を促し、地方創生に貢献するという計画の第一歩だ。ではなぜ、リース会社であるSMFLが地方創生に挑み、かつ太宰府の未来を描くに至ったのか。見すえる未来と込められた想いを、事業を推進したリーダーが語る。

いにしえの趣を今に伝える福岡県の太宰府天満宮。そのほど近くに、2019年の秋『ホテル カルティア 太宰府』がオープンした。元は、江戸末期から昭和初期にかけ3代にわたって活躍した絵師一族の住居で、昭和中期からの半世紀は会席料理店として活用されてきた建物を、リノベーションした施設だ。母屋部分にフロントとレストランが設けられ、蔵を改修した部屋も含めて客室は4室。いずれも「離れ」のようなゆったりとした造りで、古民家ならではの静謐さが漂う。

SMFL営業推進開発部部長補佐田部丈二
営業推進開発部 部長補佐 田部 丈二
「太宰府に点在する古民家を順次、宿泊施設としてリノベーションし、分散型ホテルにする計画です」

この事業の立役者の1人である、営業推進開発部の田部(たなべ)丈二が話す。

「今回はその第一弾です。新型コロナウイルス感染症の影響で工程が遅れましたが、現在は第二弾として少し離れた古民家2棟を改築し、9室の開業準備を進めています。最終的には7、8棟30室にまで増やす計画です」

利用者はフロントで鍵を受け取り、天満宮の参道や門前町の散策を楽しみながら予約した棟に行く。食事はホテルのレストランでとってもいいし、ほかの飲食店に行ってもいい。太宰府全体を宿泊施設として機能させる構想だ。

滑り出しは順調。メディアにも多く取り上げられ、上質な日本文化を堪能できると、国内外からアッパーミドル層を中心に評判を得ている。

埋もれた観光資源に、ファイナンスの光を照らす

「最終的な目的は、太宰府の地域全体の活性化です」。田部は、そう説明する。

「当社は2015年から新規事業の開発に取り組んでいます。その中で、地方の中小宿泊事業者のサポートを通して地方創生に貢献できないかという案が持ち上がりました。ちょうど同じ時期に、グループ会社である三井住友銀行が太宰府市の依頼を受けて、観光課題の解決に取り組んでおり、2016年、当社にも参加しないかと声がかかりました」

太宰府市の観光課題は、ひと言でいうと観光客の「滞在時間の短さ」だ。

太宰府は、太宰府天満宮のほかにも、大宰府政庁跡や「令和ゆかりの地」とされる坂本八幡宮、九州国立博物館など見どころが多数あり、年間約1,000万人の観光客が訪れる九州屈指の観光地だ。しかし1人あたりの滞在時間は長くて2~3時間。平均消費額は2,000円弱という調査データもあり、訪れる観光客数に対して、けっして多くない。

「人は来るけれどお金は落ちない、典型的な“通過型観光スポット”といえます」。もともと太宰府の観光エリアには宿泊施設が少なく、観光客は福岡市内に宿泊することが多い。泊まらないから、夕食もとらない。そのため現地での消費が伸びない。

「つまり、通過型から滞在型に変える必要があったのです。それには宿泊施設と、太宰府のエリアを周遊してもらうための仕組みをつくる必要がある。ついては、太宰府にある利活用されていない空き家や古民家を活用してはどうか、という構想が持ち上がりました」

すぐに参加を決意した。

「古民家の活用ということに関しては、当社の出番だと思いました。というのも、古民家はその土地の文化に根差した貴重な資産ではあるものの、一方で担保としての価値をつけづらい側面があり、なかなか融資が受けられないことが多い。しかし、リース会社である当社なら、設備をリースする形で、実質的に金融機関の役割を担うことができます」

SMFLが得意とする、リースという形ならば、埋もれがちな観光資源に光を当てて資金を投入し、新しい価値を生み出せるわけだ。

もう1つ、SMFLの力を発揮できる要素があった。

「先にも述べたように、2015年当時、地域の活性化にあたって中小宿泊事業者を支援したいと考えていました。しかしながら、そうした事業者は景気によって収益が大きく上下するため、我々もサポートしにくい状況がありました。しかし観光インバウンドが伸びて地方に多くの観光客が訪れるようになったのを受け、今こそ支援の体制を整えて成長を後押しするべきだと考えました」

そこで、直近のキャッシュフローに加え、エリアや客室稼働率、単価、設備の状況、利用客層など多様な軸から、ポテンシャルも含めて総合的に判断する独自の事業性評価基準を作成した。その基準があったことで、太宰府の案件でも事業の可能性を客観的に把握しながら進めることができたわけだ。

古民家をリノベーションしてホテル、レストランとして利用。趣深い雰囲気が利用者からも好評

「チャレンジすれば、次につながる」。資金計画から地元住民との調整まで。

古民家再生事業を始めるにあたっては、西日本鉄道と福岡銀行という、地元の大手企業と共同で株式出資し「株式会社太宰府Co-Creation」を設立した。

「地域課題を解決する事業なので、事業主体は地域の企業が望ましいと考え、ご相談させていただきました」

以降は、西日本鉄道が事業主として前面に立って、特に地域の企業や住民との交渉、広報などは西日本鉄道が中心となって対応した。

当初、太宰府市の観光課題は、まさに手付かずの状態だったという。そこで三井住友フィナンシャルグループと一緒に、ロードマップづくりに着手した。細かい課題を洗い出し、太宰府市は「太宰府市観光推進基本計画」を作成、その中に「門前町のリノベーションプロジェクト」も記載されている。

観光協会や自治体の協力を取り付け、リノベーション費用のファイナンスや新会社設立にあたっての資金面の調整、事業リスクの評価・整理など、「やることは五月雨式にふって来ました」と、田部は振り返る。

「SMFLにとっても新規事業ですし、私自身もほとんど初めての経験ばかりでした。事業計画書の作成もそうです。それまでは長くリースの営業職でしたので、お客さまの計画書はたくさん見てきましたが、まさか自分が手掛けることになるとは思ってもみませんでした。それでも、チャレンジすればできるものなんですよね。西鉄さんや福銀さんのプロジェクトメンバーにも、大いに助けていただきました」

地域住民や地元事業者の調整にも、努力を重ねたという。実は、企画に賛同して貸し出しを申し出た古民家オーナーが、途中で心変わりし振り出しに戻ったことも、何度か経験したそうだ。地元を思うが故に、「景観が損なわれるのではないか」などと心配する声や、地域事業者間の意見の食い違いなどに対しては、西日本鉄道や福岡銀行の担当者と一緒に、ときには自身が前面に出ながら、ていねいに意を尽くして説明した。

尽力のかいあり、施設完成後の地域の関係者を招いた内覧会では好評を博したという。

「古民家のオーナーさんも、建物が生かされてありがたい、とおっしゃってくれました」
嬉しさに身震いし、事業の手ごたえを感じた瞬間だ。

画面を拡大してご覧下さい。

西日本鉄道と福岡銀行とSMFLの3社で株式出資して太宰府Co-Creationを設立。SMFLがリース、NOTEが企画・設計を担当。太宰府Co-Creationはバリューマネジメント株式会社に物件賃貸兼業務委託。これにより、古民家の宿泊施設化や周辺観光資源との連携など歴史的資源を活用した観光振興を推進している。
地元企業である西日本鉄道と福岡銀行とともに、3社で太宰府Co-Creationを設立。ファイナンスだけではなく、ハンズオンで太宰府観光の活性化に挑んでいる

一気通貫で地域に伴走。他事業への展開にも期待

新型コロナウイルス感染拡大の影響で客足がいったん途絶えたが、6月に入ると次第に戻ってきた。コロナ禍を機に地域産業が見直される今、レジャーにおいても「密」を避けることが勧められている。『ホテル カルティア 太宰府』はまさにニューノーマルの時代の観光施設としてうってつけで、今後さらに注目度は高まるだろう。

もちろん、次のビジネスを期待する向きも小さくなく、すでにいくつかの成果を実感している。

まず、一連の地域活性化事業の知見を蓄積できたこと。田部は、体得したこの知見を横展開しやすいようにプロセスを整理。この知見が、SMFLの今後の地方創生事業の基盤の1つになることは間違いない。実際、別の地域で準備を進めている新事業に反映する予定だ。

パートナー企業とのつながりを得られたことも、大きな成果だ。

SMFLを、単に「ものを貸す会社」だと理解している企業は少なくない。しかし計画の立ち上げから、開業、運営に至るまで、一貫して伴走し続けたこと、ときに三井住友フィナンシャルグループのネットワークも駆使して柔軟に状況に対応したことが、協業した企業の認識を変えた。

「西鉄さんが、新規の案件を一緒にやらないかとお声をかけてくださいました。また太宰府の事業に関するリリースを見られたほかの企業さまからもお声がかかり、いくつか事業が立ち上がりつつあります。今後も多くの企業さまと協業し、地域産業や地方の活性化に貢献していきたいです」

ファイナンスだけではない。きめ細やかに、柔軟に、パワーを届け、これからも地方を元気にしていく。

(内容、肩書は2020年9月時点)

お問い合わせ

営業推進開発部 
TEL:03-5219-6344

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