いま企業に求められる、ボーダーレスな“人的資本”
──SMFLのグローバル人材が語る、その「育成」と「成長」

いま企業に求められる、ボーダーレスな“人的資本”

多様な人材が組織で活躍すること(D&I=ダイバーシティ&インクルージョン)は、「人的資本経営」「持続可能な経営」の実現に不可欠な要件の一つ。Our Visionの一つとして、“ 社員のチャレンジと成長を応援する企業 ” を掲げる三井住友ファイナンス&リース(SMFL)も、「誰もがより良い未来に向けて活躍できる機会の創出」を目指し、邁進する。SMFLの海外事業の最前線で活躍し、まさに “ 人的資本 ” を体現するSMFLの社員2人が「グローバル人材の要諦」について意見を交わした。

「語学」よりも「実務」──グローバルビジネスの現場で育まれる “ 人的資本 ”

──昨今、「人的資本経営」の重要性が多方面で指摘されています。おふたり自身がまさにSMFLのグローバルな「人的資本」と言えそうですが、企業を成長させる “ 人材 ” として自らの価値を高めるという点では、常に自分の目標をストレッチして設定することが求められるのだろうと思います。その一方、目標とすべき “ ストレッチ範囲 ” を社員各自が自分で設定すること、あるいは上司が提示してあげることには、それぞれ難しさもあると思います。ニューヨーク支店副支店長を経て、2年前にはマレーシアの現地法人(以下、現法)社長に就かれた指村美樹さんの場合は、海外拠点の管理職として豊かな経験があります。これまで、ナショナルスタッフの目標設定にはどのように関与してきましたか。

  • 人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営。人的資本ドリブンな経営方針。

指村 「ちょうどよい」ストレッチの範囲・量・方向は人それぞれで、一律の物差しで測るのは難しいことですよね。上司が「ここまでならできるはず」と考えても、部下にとっては “ 適正なストレッチの範囲 ” を超えていると感じることや、人事評価への影響を恐れて「そこまではできません」と率直に言い出せないケースもあります。管理職としては、その目標設定を部下が楽しめているか、頑張りすぎていないかの見極めが重要です。私もその点を心掛けてきたつもりです。

──では、「グローバル人材」という言葉からおふたりが想起されるイメージを、これまでのキャリアを踏まえて教えてください。

SMFLマレーシア現地法人 社長
指村 美樹

指村 言わずもがなですが、グローバル人材とは、ただ英語や中国語などの「語学ができる人材」という意味ではありません。現地の商習慣やビジネスの背景、文化、法規制や税制などを理解して、「現地スタッフと一緒に仕事ができる」という点に本質的な意味があり、グローバルなマインドを持つ人材が求められているのだと思います。これはニューヨークでもマレーシアでも実際に私が感じてきたことです。

私がマレーシア現法の社長に任命されて赴任したのは、中山智晶さんがマレーシアから日本に帰国したのと入れ違いのタイミングだったので、直接お目にかかったのは今日が初めてです。中山さんは、入社3年目で社内公募の海外業務トレーニーに応募し、マレーシア現地法人初のトレーニーとして、ナショナルスタッフに同行・協働していましたね。中山さんが立ち上げた「ペナン支店」は順調に営業を続けており、お名前はかねがね聞いておりました(笑)。

中山 ありがとうございます。指村さんにそうコメントいただけて、とても光栄です。私が現在所属するトランスポーテーション事業部では、傘下のグループ会社SMBCアビエーションキャピタル(アイルランド)が保有する航空機を日本の投資家にリース付きで販売しています。SMBCアビエーションキャピタルは航空機リース業界で世界有数の機材数を誇り、まさに世界を舞台に事業展開するグローバル企業。SMFLでの私の部署の営業先は日系企業が中心ですが、SMBCアビエーションキャピタルとの日常的なやりとりには英語が欠かせません。ただし指村さんがご指摘された通り、外国語はあくまで付随的に求められるスキルと考えています。商談相手に何をどのように伝えられるか、日々の実務を通して何を達成できるか──グローバル人材たる要件は、ビジネスパーソンなら誰もが求められるものと本質的に変わらないと思います。

カギとなるのは、常識にとらわれない、柔軟な思考力

──海外で現地スタッフと一緒に働くことの難しさとして、どんな要素があるのでしょうか。

指村 よく指摘されることですが、職務内容を限定しない「メンバーシップ型」雇用が主流の日本企業とは異なり、欧米などの海外企業では職務内容が明確に規定された「ジョブ型」雇用が普通です。管理職の視点で見ると、ジョブ型にはこちらが求める成果の達成度合いのみでシンプルに人材を評価できるメリットがあります。その一方で、担当ごとの業務範囲が明確に決まっているので、人的リソースが限られたなかでのやりくりが難しいという側面もあります。特に米国ではその傾向が顕著ですし、マレーシアにも多かれ少なかれ似た状況があります。

SMFL トランスポーテーション事業部 主任
中山 智晶

中山 私が現在の職務に異動する前、マレーシアの現法に1年間赴任していたとき、現地スタッフの一人ひとりが職務内容の専門性にプライドを持って働く様子を目の当たりにし、強く印象に残っています。今の職務で海外とやりとりしていて感じるのは、日本に比べ海外の方が、上司・部下の職権がより明確に区分されているということです。海外の相手と交渉する場合には、キーパーソンを見定めてアプローチすると話が早く進みます。

──雇用形態やビジネスパーソンのマインドが日本とは異なる海外で、日本人が現地スタッフに受け入れられるために必要なことは何でしょうか。

中山 マレーシア現法で感じたのは「思考の柔軟性」の大切さです。「日本基準」の “ 常識 ” で凝り固まったマインドセットでいたら、お互いの理解が深まらず、思考が停止していたかもしれないと、振り返ってみてあらためて思います。幸い私の場合は、ビジネスのイロハもまだ身に付いていない若手だったこともあり、「何も知らないので教えてください!」という姿勢で相手の懐に飛び込み、現地スタッフもそれを受け入れてくれました。ただ、もし一定のキャリアを経てから海外に赴任していたら、そううまくは運ばなかったかもしれません。ジョブ型雇用が浸透していることもあり、「あなた自身は何ができるの? 私があなたに教えることは何もありませんよ」というスタンスの対応も容易に想像がつきますから。

指村 中山さんがおっしゃる通り、ジョブ型雇用では、各人が求められるもの、周囲がその人に期待することがはっきりしています。それだけに、見られ方がシビアにはなりますよね。

人事制度が、主体的なキャリア形成をサポート

──海外ビジネスに携わる上で利用された、SMFLの人事制度・研修制度について教えてください。

中山 私がマレーシア現法に赴任する際に利用したのは、「海外業務トレーニー」と呼ばれる海外研修プログラムです。SMFLの海外拠点で実務や現法運営に携わりながら、ファイナンス商品やスキームの組み立て・提案といった知識の習得を目指します。TOEICスコアが一定以上であれば誰でも応募できる制度で、私はもともと海外志向が強かったため、社会人3年目というタイミングで応募しました。SMFLでは海外業務トレーニーに加え、グローバルに活躍できる人材を育成するための多様な制度が用意されており、語学の習得を主目的に英語圏や中国語圏に派遣するプログラムもあります。

指村 SMFLは人材育成に力を入れている会社だと感じています。グローバル人材の育成プログラムのみならず、女性の管理職を増やす目的の研修から、若手社員の将来展望を見据えたトレーニングまで、多種多様な研鑽の仕組みと機会が用意されています。私自身、管理職に就くことを目指して、それらのプログラムを利用しながらキャリアを積み重ねてきました。グローバルな舞台で働く私のような女性管理職が増えることが、後輩たちの目標や励みにもなれば良いですし、自分の働く姿を見せることも、人材育成の一助になればと思っています。

──そんななかで「女性であること」がキャリア構築の妨げになっているとお感じになったことはありましたか。

指村 いえ、私が大変さを感じてきたのは、「女性であること」よりもむしろ、現地スタッフとのコミュニケーションでした。最も気を付けてきたのは、何よりもまず「相手の話を聞く」ことです。現法のスタッフには、「良いことも悪いことも、伝えてくれないと私には分からないし、改善もできない。まずは意見を聞かせてほしい」と常に話しています。話し合いでは、問題の重要性から課題の難易度、必要なリソース、対処に伴うリスク、対処しなかった場合のリスクなどに至るまで、あらゆることに耳を傾ける姿勢を大切にしています。そして特に米国では、意思決定が遅いこと、決断を避けることが一番信頼を失います。話を聞いた上で、できる限りその場で迅速にYES/NOを判断するよう心掛けています。

中山 指村さんは今控えめにお話しになりましたが、まだ女性の管理職のロールモデルが多くはないなかで、ニューヨーク支店の副支店長を経て、現在はマレーシア現法の社長を務めていらっしゃいます。海外を志向する私のような若手ビジネスパーソンにとっても、学ぶべきことや見習いたい点がたくさんあります。

SMFLの人材開発・育成の考え方

※1 キャリア開発シート:
社員一人ひとりが自らキャリアを切り開くために毎年制作しています。自分の将来について主体的に考え、また過去の経験を振り返り、自己の職務適性を把握するための機会としています。
※2 Job Format:
自律的なキャリア開発を支援するため、部店ごとに概要(業務内容、魅力など)とチャレンジ項目(求めるスキル資格など)を社内に公開しています。

グローバルな活躍を目指す、次世代への期待

──ご自身のこれからのキャリア形成について、どのようにお考えですか。

指村 当面はマレーシア現法をどれだけ大きくできるかに全力を注ぎます。もちろん、単に規模を大きくするだけでなく、後進にいかにつなぐかにも取り組んでいます。現法社長というポジションは、私のキャリアで初めての拠点長です。コロナ禍に伴う世界経済の閉塞感が解消されつつある今、本社が構想する成長戦略にどうやってマレーシア現法を乗せるか、日々考えています。そこにめどが立ったとき、自分の次のステップが見えてくると思っています。

中山 マレーシアから日本に戻り現在の職務に就いて、今年で丸3年になります。今あらためて航空機ビジネスの奥深さを実感しています。日々、学ぶ姿勢を忘れずに、まずは目の前のことをしっかりこなすこと。さらに、海外と日本との懸け橋になれるよう、ビジネスのカウンターパートであるSMBCアビエーションキャピタルにとっての私自身のプレゼンスをもっと高めていきたいです。

──最後に、海外勤務を志向するビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

中山 働く場所が国内であれ海外であれ、経験から何を得て何を学べるかは、本人の意識次第だと思います。また、海外業務トレーニーのような制度を利用して頑張れるかどうかも同様です。確かに言葉の壁はあるかもしれません。しかし、たとえ正確無比とまでいかず多少ブロークンな言葉でも、懸命にコミュニケーションを図ろうとする姿勢が何よりも大切です。「柔軟な思考」を心掛けていれば、海外勤務のハードルはそれほど高くないはずです。ビジネスパーソンとして成長したい意志があるのならば、ご自分の会社の制度を積極的に利用し、若いうちに思い切って一度は海外に飛び出してほしいと思います。

指村 少しでも興味があるなら積極的に手を挙げてもらいたい、と思っています。それもぜひ、中山さんがおっしゃるように、若いうちに。SMFLのニューヨーク支店には常に若手トレーニーが在籍していますが、彼らが育ち、別の現法や国内での国際関連業務に携わって、グローバル人材へと飛躍してくれることを願っています。ただし “ 過度なストレッチ ” といいますか、無理のしすぎはもちろん禁物。先輩や上司など周囲とのコミュニケーションを上手く取り、時には息抜きもしながら、「どうやって自分を伸ばすか」を探ってほしい。

ただし、海外に出れば言葉の壁にはぶつかるでしょう。でも言葉はあくまで伝えるための道具。「うまい・へた」は二の次で、通じ合うことがまず重要です。そのために必要なのは、自分の意見を持つこと、人の話を遮らず聴くこと、否定から入らないこと。そして、言われっぱなしにはならないこと。相手の意見を否定せざるを得ない場合は、自分の意見を論理的に説明し、それでも相手が納得しないときは、逃げずに議論する。また、コンプライアンスや会社の規定に抵触しない限りは、「郷に入れば郷に従え」という場面も出てきます。リスクを測りながら現地の慣習に合わせる柔軟性を持ち、必要があれば社内を説得する。現地スタッフの立場も踏まえて、複眼的に物事を考えることが肝要だと思います。その点を理解した上で、現地でさまざまなことを吸収してもらいたいと思います。

  • 新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で取材・撮影を実施しております。

(内容、肩書は2023年6月時点)

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