レンタルPCに、サステナブルな選択肢が誕生
安曇野産「Reborn VAIO」がSMFLグループと奏でる、サーキュラーエコノミーの新世界
天然の資源を使ってモノを生産する「動脈領域」に、廃棄物を回収してリサイクルする「静脈領域」をつなげる──そんな “ 血液循環 ” のようなサーキュラーエコノミーの実現こそ「リース会社の使命」だと、三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)は自らを任じる。2025年4月には「地球環境部門」を創設し、環境エネルギー事業とサーキュラーエコノミー事業を一体的に推進する体制を整えた。従来、リース・レンタル満了後に返却されたパソコン(以下、PC)について、再利用可能なものは中古品として流通させる一方、再利用が難しいものは廃棄されるケースが多かった。こうした課題に対する新たな解決策として生まれた象徴的な事例がある。PCメーカーのVAIOと、SMFL、SMFLレンタルが協業する「PCリファービッシュ事業」だ。2025年9月にスタートした同事業は、使用済みPCを「VAIOが自社で再生」し、新たな価値を持つ製品としてレンタル市場に再投入する取り組みである。協業の狙いと事業展望を3社のキーパーソンに聞いた。
満了済PCを “ 生まれ変わらせて ” 再活用。「循環の心臓」役はリース会社の “ 本懐 ”
北アルプス連峰を望む信州・安曇野の地にあるVAIO本社工場。今、工場の一角では、リース・レンタル期間が満了した「VAIO」ブランドのPCが運び込まれ、熟練スタッフの手で次々と “ 新品同様 ” に生まれ変わっている。キーボードや天板は一新、筐体の中もきれいに清掃され、製品ごとにシリアル番号が新たに付与されて「Reborn」(再生)するのだ。
この新しい「循環」をVAIO社と共に作り出したのがSMFLグループだ。SMFL 地球環境部門 サーキュラーエコノミー本部 CE推進部長の吉田伸樹が、その背景を説明する。
地球環境部門
サーキュラーエコノミー本部 CE推進部長
吉田 伸樹
「日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの目標達成に向けて、サーキュラーエコノミー(循環経済。以下、CE)は、資源効率の向上や排出削減を補完する有効な経済・産業モデルの一つと言えます。SMFLでは2023年4月に全社横断的なワーキングチームを立ち上げ、お客さまの課題をヒアリングしながら取り組みを進めてきました」(吉田)
SMFLは、2025年4月に「地球環境部門」を新たに設置。環境エネルギー本部とサーキュラーエコノミー本部を同じ部門内に設置して一体的に運営する体制を整えたことで、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進する “ エンジン ” を強化したのだ。
リース事業が主業の一つであるSMFLがCEに取り組む理由を、吉田は「CEの中核をなす『プロダクト・アズ・ア・サービス(以下、PaaS)』(製品のサービス化)という考え方が、まさにリース・レンタルの仕組みそのもの」だからと強調する。「PaaS」とは製品を “ 売り切り ” するのではなく、“ サービスとして提供 ” するビジネスモデルだ。「レンタルやリースで使われたモノは、契約期間満了を迎えるとリース・レンタル会社に戻って来ます。SMFLは戻って来たモノをメーカーと協力して『リファービッシュ』、つまり “ 磨き直して再生 ” し、再び市場に送り出すわけです。このループを回せるのは、アセットホルダーであるリース会社だからこそ。本事業の意義はそこにあります」(吉田)
リース・レンタル満了PCをメーカーが自社で再生
VAIO社の安曇野工場では、リース・レンタル満了済PCを30項目以上に及ぶ同社独自の厳しいチェック基準をクリアした上で、熟練スタッフの手で “ 新品同様 ” にリファービッシュ。その後、SMFLレンタルの事業を介して再び市場に投入し、「循環」の輪を作り出している
VAIO×SMFLグループのリファービッシュ事業 スキーム図
響き合った理念と戦略──「環境貢献」への共鳴から生まれた協業
VAIO社とSMFLの関わりは、「VAIO」PCのエンドユーザー向け販売金融、つまりPCリースから始まった。年間数千台規模のリース取引を通じて両社は信頼関係を築き、2023年頃、大口のPCリース契約の満了時期が近づきつつあった折に、「環境貢献」をにらんだ協業の道を共に探ることになった。
法人営業本部
Reborn VAIO事業室 室長
花村 英樹 氏
協業に踏み出した出発点を、VAIO 法人営業本部 Reborn VAIO事業室の花村英樹室長はこう語る。「2014年の創業以来、当社が経営戦略の軸に据えてきたのが、“ 環境経営 ” です。製品開発においては、長寿命かつ高付加価値でライフサイクルを通して環境負荷の低い設計を目指すとともに、ライフ・サイクル・アセスメント(製品・サービスの環境負荷を定量化して評価する手法)も活用して取り組んできました」(花村氏)
そのような取り組みの延長として2023年、同社は使用済みPCの再生(リファービッシュ)と再資源化事業の可能性に着目。試験的に「Reborn VAIO」数百台をBtoC(個人向け)で発売したところ、即座に完売した。その手応えに花村氏は「CEの観点のみならず、ビジネスとしても成り立つと確信しました」と振り返る。
「Reborn VAIO」ビジネス化の戦略的パートナーとして同社が選んだのは、SMFLだった。その理由を花村氏は「理念の共鳴、つまり信頼感の深さです」と言い切る。
「それまでに育んできたSMFLさんとの関係のなかで、“ 環境経営 ” というビジネスの軸足が我々と一致する──という信頼を持てたことが決め手でした。使用済みPCの販売先や活用方法には、いくつかの選択肢があったと思います。利潤だけを追求するのであれば、中古PC業者などに売却し、より高い価格で買い取ってもらうという方法もあったでしょう。
しかし、SMFLさんは『地球環境部門』という大きな組織を創設するほど、環境分野に注力しています。私たちは、利益だけでなく地球環境を大切にする姿勢に共感し、事業を開始しました」(花村氏)
その裏でSMFLの吉田も、VAIO社の姿勢に「感銘を受けていた」という。「他社に先駆け、メーカー自らがリファービッシュ事業に挑むVAIO社の姿勢──私たちリース会社がアセットホルダーとして大量に保有するPCでそれを生かせば、『VAIO』ブランドのPCが『Reborn VAIO』としてもう一度回転します。これはぜひ一緒にやりたい、やるべきビジネスだと強く感じました」(吉田)
協業のスキームを両社で検討した結果、PCのレンタル事業を手掛けるSMFLレンタルも参画し、3社の協業が始動した。
“ リファービッシュ ” PC──再生された「プレミアム中古」はシリアル番号も一新
VAIO社が行う自社製品リファービッシュには、メーカーならではの修理・整備ノウハウと、部品供給力という強みがある。通常なら生産終了後、3-4年を経過すると部品がEOL(End of Life)となり入手が困難になる。特に量産用の部品は追加発注が難しく、サービス用に確保された専用部品とは異なり、新たな調達がほぼ不可能になる場合が多い。しかし、VAIO社は部品を自社で保有する体制を整えているうえ、必要に応じてサプライヤーと交渉し再生産を発注することも可能だ。こうした取り組みにより、「Reborn VAIO」は長期的な部品維持を実現し、結果として高い競争優位性を生み出している。
一般的な中古PCやリユースPCとは一線を画するその「品質」について、花村氏はこうも付け加える。「そもそも、『VAIO』ブランドのPCは、回収されて戻って来たときの状態が良好なのです。多くは “ まだまだ使える ” 状態。製品(新品)の生産段階での高耐久・高品質という設計思想が効いています。リファービッシュ不能な状態で戻って来るケースは、『VAIO』ではほとんどありません」(花村氏)
さらに強力な差別化要素が、再生PCにシリアル番号を設定できる点だ。「これはメーカーでなければ絶対にできません。他の第三者が再生しても、元のシリアル番号は残りますから。新しいシリアルナンバーが付与されたPCなら、お客さまもより一層安心してご使用になれます」(花村氏)
こうした強みを背景に、VAIO社は「Reborn VAIO」を「プレミアム中古」と位置付ける。新品と同等のサービスを適用する一方で、価格帯は10万円以下(2026年2月時点)。これは同社にとって大きな意義を持つ。「『VAIO』ブランドのPCは高品質な分、新品の価格も高めです。10万円前後という普及価格帯の製品はなかなか製造できなかったのですが、『Reborn VAIO』が空白の価格帯を埋めてくれました」(花村氏)
サーキュラーエコノミー視点で見る、PCのリサイクルとリファービッシュの違い※
| 項目 | リサイクル | リファービッシュ |
|---|---|---|
| 目的 | 資源の再利用 | 製品としての再利用 |
| 主な対象 | 使用不能・老朽化したPC | まだ使える、または修理可能なPC |
| 処理内容 | 解体・破砕し、金属や部品を資源回収 | 清掃・修理・部品交換・動作確認 |
| 製品としての再利用 | しない | する |
| データの扱い | 物理破壊・完全消去後に処理 | 完全消去後に再出荷 |
| 環境負荷 | 原材料採掘を抑制 | 製造工程そのものを削減でき、より低い |
| CO2削減効果 | あり | より大きい |
| コスト構造 | 処理費用がかかる場合あり | 新品より安価で販売可能 |
| 主体者 | 処理業者、自治体、メーカー | メーカー |
| 市場での位置付け | 廃棄物処理・資源循環 | サーキュラーエコノミーの実践例 |
- ※この表は標準的な違いを示すもの。Reborn VAIOのリファービッシュは、純正部品交換および新品製造時の基準に準じた品質保証を伴う点が特徴(PCメーカーのみ対応可能)
「レンタル対応」に潜むジレンマを、保証期間の延長&修理体制の強化で解消
「良いことずくめ」のように見える「リース・レンタル満了PCの再活用」だが、実は “ 悩みどころ ” もあった。SMFLレンタル コーポレートセールス事業部 副事業部長の金子幸弘が事情を明かす。
コーポレートセールス事業部 副事業部長
金子 幸弘
「レンタル契約では通常、万一の故障時に同一機器を用意できなければ、他の機種に交換して対応します。しかし『Reborn VAIO』には “ CO2削減 ” “ サステナブル ” というコンセプトがある。他の製品に換えてしまうと、そこに共感して同機を採用されたお客さまにとって “ 選択の根拠 ” が失われることになります。この潜在的なジレンマは、何としても解決すべき課題でした」(金子)
3社が知恵を絞って導き出した打開策は、VAIO社が「追加で3年間のメーカー保守」を新たに設けることだった。通常1年の保証期間を3年に延長するとともに、レンタル期間中の故障にも同一機種の継続使用を前提にした修理に対応できるよう、社内の体制を調整・強化した。
直近の目標達成の先に描く “ エコシステム完成 ” で「廃棄ゼロ」へ
VAIO、SMFL、SMFLレンタルの関係深化により、SMFLレンタルが顧客と交わした既存のVAIO製品のレンタル契約台数は増加の一途をたどる。2022年は約800台だった契約台数が、2025年12月時点では約7,300台と、約9倍に増加した。2025年12月までの累積貸出総数は約3万台に達する。金子はこれを「『VAIO』ブランドの訴求力が高まった効果」と見ており、「SMFLレンタル内での占有率はまだトップではありませんが、シェアの伸び率はトップです」と手応えを語る。Reborn VAIOの登場は、「VAIO」ブランドをさらに高め、VAIO製品のレンタル契約台数を一層増加させる一助となり得る。
VAIO社が掲げる「Reborn VAIO」の出荷目標は「2026年3月期中に5,000台」。これに伴うCO2の削減量は、約68万5,000トンになると試算されている。
花村氏は「3年以内に数万台の規模に拡大したい」とその先を見据える。思い描く将来像は「エコシステム」(生態系)の完成だ。
まず、新品の「VAIO」PCをSMFL・SMFLレンタルがリースまたはレンタルする。契約期間満了後は、SMFL・SMFLレンタルがPCを回収しVAIO社へ売却する。VAIO社がリファービッシュして「Reborn VAIO」を生産した後は、SMFLレンタルが市場に再投入する。さらに契約期間が満了した「Reborn VAIO」をリサイクルへ──この循環を回し切ることで「“ 廃棄ゼロ ” の未来を目指す」と花村氏は語る(スキーム図参照)。
「新品のリース満了時に、『CO2削減報告書』をお客さまにお渡しするなど、返却を促すインセンティブも構想しています」(花村氏)
SMFLが期待を膨らませるのは、PCで成立したこの循環を多方面へと拡大することだ。CE推進部長の吉田は、自らが温める未来図でその可能性を示唆する。「PC、プリンターから、フォークリフトまで……リースの対象が “ 動かせるモノ ” ならば、それが『戻って来る仕組み』は成立します。メーカーさんの意識にも変化が生じつつあることが、営業の現場から伝わってきます。リースやレンタルという枠組みを、“ 金融 ” や “ 割賦 ” という販売拡大の手段としてだけではなく、“ 製品が自社に戻って来る仕組み ” として活用しようという動きがあるのです」(吉田)
実際、SMFLレンタルの金子は、顧客からの「注目度は高い」とし、グループが掲げる「SDGs経営で未来に選ばれる企業」という理念完遂への展望を示す。「現在、SDGs活動の “ 深化 ” や “ 本気度 ” が問われています。そんななかで『Reborn VAIO』の登場は、カーボンニュートラルにお客さまが直接寄与できる商品が、ラインアップに加わったことを意味します。SMFLグループ全体にとっても大きな前進と言えるでしょう」(金子)
SMFLグループは、SMBCグループや住友商事グループとの連携も視野に、CE事業の拡大に向けた歩みを進める。
Reborn VAIO の製品特長の詳細はこちら
(内容、肩書は2026年3月時点)
お問い合わせ
SMFL CE推進部
TEL:03-6695-1076
SMFLレンタル コーポレートセールス事業部
TEL:03-6272-4085





