事業変革へのカギは、「人財開発力」と活用
──「More Than Finance®」で引き出されたゼンリンの底力

More Than Finance®がもたらした共創の深化(後編)

地図情報サービスのリーディングカンパニー・ゼンリン(福岡県北九州市)は現在、中長期経営計画「ZGP2030」で掲げた事業変革を進めている。そして、その事業変革を担う人財開発に取り組むべく導入されたのが、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)が提供する経営支援プログラム「More Than Finance®」(MTF)だ。このプログラムを通してゼンリンが得たものは、単なるスキルやノウハウではなく、行動変容を経験した社員たちの「人財としての力」の高まりだった。MTF導入の経緯をレポートした前編に続き、後編では実際のプログラム内容と成果を中心に紹介する。ゼンリンのエリアソリューション本部 副本部長兼九州支社長・古賀寛人氏と、SMFL のMTF推進部 部長代理の中村寛祐に詳しく話を聞いた。

課題の真因を探り、顧客に成り代わって提案する

三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)が提供する経営支援プログラム「More Than Finance®(以下、MTF)の最大の特長──それは、顧客企業に合わせてプログラム構成を柔軟にカスタマイズする点にある。まず、MTF推進部員が、顧客企業の経営層や現場担当者に丹念にヒアリングを実施。その結果に基づいて、30種類以上あるセッションから最適なものを組み合わせたり、新たな内容を盛り込んだりして、顧客企業ごとにオリジナルのプログラムを設計する。

今回のゼンリンのケースでも、SMFLのMTF推進部 部長代理の中村寛祐は、ゼンリンのエリアソリューション本部 副本部長兼九州支社長である古賀寛人氏と、経営課題の見直しからプログラムの設計に至るまで綿密な対話を重ねた。中長期経営計画「ZGP2030」の個々の目標を従業員の日々の実務に落とし込むべく、MTFでアプローチすべき人財像について意見交換を続け、「Growth」の領域から2つのセッションを選んだ。内容をゼンリンの現場により近づけるために、想定顧客を「官公庁の防災担当」や「ガス会社の営業部長」といった粒度で細かく設定し、受講者のチーム構成も世代や役割を考慮して入念に調整した。

株式会社ゼンリン
エリアソリューション本部 副本部長
兼 九州支社長
古賀 寛人 氏

ゼンリンの古賀氏はこう語る。「中村さんは、当社が直面する課題を本質から理解しようと、何度も対話を重ねてくださいました。その結果、『顧客の真の課題を聞き出すこと』と『聞き出した課題から価値提案すること』を今回のMTFの軸とすることが決定。仮説を検討する段階で通常以上に複数のフレームワークを入れたり、課題を深掘りするため現場により近い状況設定を考えてくれたり、テーラーメイドでセッション内容を提案してくれました」(古賀氏)

ここで、ゼンリンが導入した「2つのセッション」の実際の内容を見てみよう。

1つ目は、顧客の現状を聞き出す力を養う「セールスヒアリング・スキルセッション」。同セッションを構成するコンテンツは、「ヒアリングスキルの重要性」を知るところから、「顧客情報の収集・分析」の実践、「VOC(顧客の声)から真のニーズを探る方法」、少人数グループでの「面談によるロールプレイ」などで構成された。顧客のニーズを探り当て、顧客から課題を聞き出すプロセスを体得するためのセッションだ。

2つ目は、顧客の視点に立って提案するスキルを磨く「価値提案向上セッション」。「価値提案とは何か」で顧客のベネフィットを考えるところから、「自社の特徴」をチームで話し合い、「顧客のプロファイル」を行って仮説を検討し、「売り手視点を顧客視点に変換する」ところまで、顧客の期待に基づくより高度な提案力を養う構成となっている。

ゼンリン向けセッションの概要

受講者の感想

正解は提示しない。潜在課題への自律的な気付きをサポート

SMFL MTF推進部 部長代理
中村 寛祐

今回のプログラムの狙いについて、中村はこう語る。「ゼンリンさんは、“ 課題解決型ビジネスへの転換 ” を進めるために、『お客さま自身ですらまだ気付いていない潜在課題を把握する』ことを重視しておられました。その方向性を踏まえ、〈顧客を知る⇒仮説を立てる⇒ヒアリングする⇒提案に落とし込む〉という一連の流れをサポートできるよう、構成を工夫したのです」(中村)

MTFは、一般的な研修と異なり、「正解を提示する」ことを目的としない。受講者自身が課題に気付き、自ら考え、行動を変える。そんな行動変容を促すきっかけづくりに重点が置かれる。講義形式を採らないのはそのためだ。受講者同士の対話を重視した少人数のワークショップ形式で実施され、現場の課題や気付きを言語化しながら共有し、深化させていく。

長崎から広がる実践と成果。全国展開を見据えた “ ビジネスパートナー ” へ

実際、セッションの現場からは、どのような声が上がったのだろうか? 2024年7月と12月、「セールスヒアリング・スキルセッション」と「価値提案向上セッション」をゼンリン初のMTFプログラムとして長崎支店で実施。19名の受講者は、地域共創プロジェクトを推進するゼンリン長崎支店の中核メンバーだ。

古賀氏はこう語る。「地域課題を解決するためには、さまざまな地域のプレイヤーたちと何度も対話を重ね、共創して新たな価値を創造する人財が必要です。そこで、将来の全国展開を見据えて、まずは長崎の地域共創プロジェクトをリードするメンバーたちに参加してもらいました」(古賀氏)

19名の受講者の職種は、営業担当、渉外活動を行う情報共創担当、企画開発担当、情報収集を行うサーベイ担当、業務推進担当、コンシューマービジネス担当と多種多様。日々、地域の顧客との関係性を発展させ新たな「地域共創」活動を担っている、まさに最前線の人財である。

なぜ、長崎からスタートしたのか──長崎県は、ゼンリンが取り組む「地域共創」の重点エリアで、地域連携の土壌があった。2020年に産学連携の研究や新規事業のための拠点を開設し、2021年から2023年にかけて、長崎市・佐世保市・大村市と包括連携協定を締結。自治体や地域企業と協力して観光DXの実証などを行い、新たな価値創出に挑んでいる。

受講者に聞くと、今回のセッションに確かな手応えを感じた様子がうかがえる。セッション後のアンケートには、「明日からすぐに実践できる内容だった」「商談の前に、事前にお客さまを深く知ろう、と意識が変わった」といった声が多く寄せられた。

古賀氏が言う。「従来の地域拠点における営業活動は、当社の商品サービスの利用価値を提供するプロダクトセールスが主体であり、提供できるプロダクトに合わせて、お客さまにヒアリングを行っていた側面があります。その意味ではお客さまの課題感を深掘りできていなかったと感じます。今回のMTFを通じて、顧客視点で本当に役立つ提案をするためには、顧客をしっかりと知り、潜在的な課題について何度もディスカッションを繰り返し仮説を立てる必要がある、という意識が、受講者にしっかりと根付いたようです」(古賀氏)

古賀氏はまた、MTFがきっかけとなり、変革へのムーブメントが社内横断的に広がっていることも感じるという。「効果は間違いなく広がっています。事前にお客さまをよく知ろうと調べることで、お客さまと実際にコミュニケーションを取る時間が増え、長崎のあるプロジェクトでは顧客接点が1.2倍に増えたというデータもあります。長崎支店では、官公庁や地元企業など、これまで接点がなかったお客さまから引き合いがあったり、今まで提供したことがなかったソリューションへのご相談が増えたりしています」(古賀氏)

長崎での成果を踏まえ、ゼンリンは今年度(2025年度)にはMTFを全国に展開している。「長崎での成果が、うれしいことに社内で広まっていき、他の本部からもMTFを受講したい、という声が届いています。今年度には札幌と名古屋、福岡で実施するなど、MTFの全国展開に踏み切りました」(古賀氏)

中村は、「伴走者としてのSMFL」の未来を見据える。「我々SMFLはMTFを通して、お客さまと長期的なパートナーシップを構築することを目指しています。リースやファイナンスの取引にとどまらず、経営上の本質的な課題にも寄り添いながら、共に考え、共に成長していく──そんな “ ビジネスパートナー ” としての関係を育てていきたいのです。人的資本経営が重視される今だからこそ、人やチームの力をどう最大限に引き出すかは、企業の価値を大きく左右します。MTFはその部分をピンポイントでサポートできるのです。今回、ゼンリンさんとの関係性が深化したように、お客さまに寄り添うMTF、SMFLであり続けたいと思っています」(中村)

潜在する課題を探り当て、自律的に前進する意識変容、行動変容を促す──。SMFLの「More Than Finance®」はそんな人的資本強化のプラットフォームたるべく、“ 金融の枠を超えて ” 企業の成長を後押ししていく。

全国展開先として選ばれた福岡支店。2025年7月に開催された実際のMTFのセッションの様子

(内容、肩書は2026年1月時点)

お問い合わせ

MTF推進部 
TEL:03-6695-6139

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