オフィスに欠かせない空調をより省エネに。エアコン×リースで地球温暖化の抑止に貢献

2021年1月、ダイキン工業と三井住友ファイナンス&リース(SMFL)が新たなリース取引をスタートさせた。ダイキン工業が開発した 低温暖化冷媒R32を用いたエアコン(ディショナー)を対象にした、SMFLのSDGs リース『みらい2030®(ミライニーマルサンマル)』だ。このリースを活用すれば、ユーザーはエアコンの入れ替えによって地球温暖化の抑止に貢献でき、メーカーはエアコンの拡販につながる。まさに“三方よし”のメニューをつくったダイキン工業株式会社 空調営業本部 事業戦略室の名倉裕司氏と、SMFLリテール開発部の大平雅人が、今回の両社による協業の意義とその進め方について意見を交わした。

エアコンの入れ替えで温暖化対策への参加が可能に

周知のように、ダイキン工業は空調分野のリーディングカンパニーだ。エアコンなどの機器だけでなく、冷媒という熱交換に欠かせない化学物質も開発している。

「エアコンを使うには電力を要します。オフィスビルの電力消費の4割を空調機器が占めているほどです。当社は空調メーカーとしての責任から、温暖化への影響の低減を使命に掲げ、環境負荷の低い冷媒やエアコンの開発に取り組んでいます」

その中で開発に成功したのが、R32という冷媒だと、ダイキン工業株式会社 空調営業本部 事業戦略室の名倉裕司氏が説明する。

ダイキン工業株式会社 空調営業本部 事業戦略室 名倉 裕司氏

「従来、世界的にもR22という冷媒が用いられていました。これはオゾン層破壊物質を含む温室効果の高いガスで、1987年にモントリオール議定書により規制がかかり、2019年末をもって生産終了となりました。その間、R22の代わりにR410Aという冷媒が登場しましたが、これはオゾン層破壊物質を含んでいないものの、二酸化炭素の温室効果を1とした温室効果係数は2,090に上ります」

対してダイキン工業のR32は、オゾン層破壊物質を含まず、温室効果係数は675。R410Aの3分の1に抑えられる画期的なものだ。

このR32を搭載したエアコン(以下、R32エアコン)に入れ替えるだけで、温暖化対策に参加できる。2019年のR22エアコン生産終了を受け、新エアコンの普及を急ぐ名倉氏らが販売方法を考えているときに、SMFLから提案されたのがSDGsリース『みらい2030®』だった。

「2012年にR32搭載のエアコンの生産を開始し、現在買い替えをお願いしています。事業として拡販を図る狙いもありますが、R32エアコンは省エネ性能にも優れており、このエアコンの普及が環境負荷低減になる。販促の方法を考えているときに、SDGsリースのお話を伺ったわけです」

低温暖化冷媒R32の総合的な温暖化影響

R32の特徴の1つには高い環境性が挙げられる。R32はODP(オゾン層破壊係数)がゼロ。また、GWP(地球温暖化係数)が675と、従来冷媒の1つである R22に対して63%の低減を実現している。
また、R32は熱交換効率の良い冷媒であるため、冷媒充填量もR410Aと比べ30%削減させることが可能。これにより、冷媒をR32に切り替えるだけで環境負荷を76%削減できる可能性がある。

(ダイキン工業ウェブサイトより)

低温暖化冷媒R32の優れたエネルギー効率

(ダイキン工業ウェブサイトより)

前提条件

  • 1. 3.5kW スプリット型エアコンの冷房専用機
  • 2. CSPFはISO16358-1に基づき計算
  • 3. ピーク電力使用料の測定条件は、室内/室外温度が27/35℃DB
  • 4. インド・インドネシア・マレーシアにおける比較

※ダイキン工業試算

20年来のパートナーシップが新リース取引の土台に

SMFLリテール開発部 大平 雅人

『みらい2030®』(以下、SDGsリース)は、SMFLが2019年12月から取り扱いを開始したリース取引で、『評価型』と『寄付型』の2つの金融商品で構成されている。今回のダイキン工業との協業でベースとしたのは、寄付型にあたる。

「複雑な仕組みではなく、ダイキン工業さんが開発した環境負荷の低い冷媒R32搭載のエアコンのリース契約をしていただくと、契約料の0.1%が公益財団法人知床財団に寄付されるというもの。2021年1月以降の契約が対象です」

SMFLリテール開発部の大平雅人が説明する。

R32エアコン※1を対象にした、SDGs リース『みらい2030®』のスキーム

※1 低温暖化冷媒R32を搭載したエアコン

SDGsリースを活用することで、知床の森林や野生生物の保護・管理を行う知床財団に寄付ができる

「新しいエアコンへの入れ替えを環境貢献に役立てたいという、ダイキン工業さんの考えに賛同しました。エアコンなら、小さい店舗や個人事業所、病院なども取り組みやすい。多くの企業にSDGs貢献の機会を提供したいという当社のSDGsリースの目的と合致しています。こうした点から、当部門でSDGsリースを扱うことになったとき、真っ先にダイキン工業さんにお声がけしました」

実はこのSMFLからの提案に対し、名倉氏は当初「意義のある取り組みだが、SDGsという軸ではそれほど大きな拡販は見込めないのではないか」と思ったと、率直に話してくれた。

ではなぜ話が進んだのか。引き続き名倉氏が語る中で、ダイキン工業とSMFLの信頼関係が浮かび上がった。

両社のパートナーシップ構築は20年前に遡る。

「2000年当時は、エアコンのリースはほとんど行われていませんでした。しかしエアコンの購入や買い替えは、資金的な余裕のない小規模事業者さんにとって負担です。そこでSMFLさんがリース販売を提案してくれました」

SMFLがエアコンを購入しユーザー企業に貸し出すことで、ユーザーは安価にエアコンを導入でき、ダイキン工業にとっては販促にもなるという手法だ。

以降、年間契約件数が約2,000件、契約中のユーザー企業が3万5,000社という事業規模に成長した。

「2003年から、契約期間中に故障した場合に無償で修理に対応するという『ダイキン安心保証リース』も始めました。これもSMFLさんの提案によるエアコン業界初の試みで、今では全契約の7割を占めるに至っています。拡販を考えるときもSMFLさんは即座にキャンペーンのご提案などをしてくれます」

こうした実績があったからこそ、SDGsリースも「SMFLの提案ならのるべきだ」と考えたのだという。

事業を通して社会課題の解決に寄与したい、SDGs達成に取り組む仲間を増やしたい――。両社に共通する思いと20年来の絆が、ダイキン工業バージョンのSDGsリースに結実したわけだ。

「このリースでR32エアコンの販売数が伸びれば、ダイキン工業さんも当社もうれしい。ユーザー企業もエアコンを新しくするだけで地球温暖化抑止に貢献ができる。“三方よし”です」と、大平が話す。

コロナ禍をバネに、二人三脚で取り組みを続ける

2019年、ダイキン工業がR32の特許を無償開放し、話題となった。自社のR32エアコンの普及促進と併せ、エアコンメーカー各社の技術革新を期待しての決断だという。エアコンの新時代の幕開けを、ダイキン工業が先導しているのは事実だ。そしてSMFLがその隣にいることも間違いない。

「コロナ禍を機に換気設備へのニーズも高まっており、2020年からSMFLさんと拡販を進めています。このような社会課題解決に貢献する事業を、引き続き一緒にやっていきたいですね」

名倉氏からうれしい言葉が聞かれた。

「今回のSDGsリースは、最低でも年間30億円の取り扱いが目標。この取り組みをモデルに、SDGsリースの幅を広げたい。また、これまで対象ではなかった製品や新製品も積極的に取り入れ、ダイキン工業さんと一緒に成長を続けたいと考えています」
大平も意欲を語った。

R32の世界標準化を目指して

SDGsリースの対象製品の1つである、天井埋め込みカセット形 Sラウンドフロー(360°全周吹出し)

2012年11月。ダイキン工業は、低温暖化冷媒R32を搭載した住宅用エアコン(ディショナー)「うるさら7」を発売。優れた環境性・エネルギー効率・経済性・安全性を実現したR32の製品化は、日本国内のみならず世界でも先進的な取り組みとして好評を博した。

現在、R32エアコンは住宅用から業務用まで幅広く製品展開し、すでに世界市場に2,500万台以上を投入している。

すべての冷媒が従来冷媒からR32に置き替えられた場合、2030年における温暖化削減効果は、アマゾン熱帯雨林が1年間に吸収するCO2の半分以上に相当する約8億トン(CO2 換算値)に達するとダイキン工業は予測※3

気候変動への具体的な対策にもつながる低温暖化冷媒R32のデファクトスタンダード(事実上の標準化)を目指して、技術開発を進めていく考えだ。

※3 2020年6月時点 ダイキン工業による推定値

※新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で、取材を実施しております。 

(内容、肩書は2021年3月取材時点)

お問い合わせ

リテール開発部 
TEL:03-3515-1305

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