水素エネルギー解説(1)基礎編│水素の特徴や仕組み、製造方法
脱炭素社会の実現に向け、次世代のクリーンエネルギーとして「水素」への期待が高まっています。本記事では、水素の性質、エネルギーとしてのメリット、エネルギーを取り出す仕組みを解説します。さらに、環境貢献度で分類される「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の3種類の水素の違いについても、詳しく見ていきます。
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水素は次世代のクリーンエネルギーとして注目されていますが、具体的な用途や活用方法についてご存知でしょうか。
本記事では、歴史の長い水素の活用方法と、今後期待される、「発電」「モビリティ」「産業」の3分野における水素エネルギー実用化の例を紹介します。
本記事について
本記事は、脱炭素を推進する三井住友ファイナンス&リース株式会社が社内啓蒙用に発行した「次世代エネルギー『水素』の最前線」を再編集し、脱炭素の取り組みの一環として制作したものです。
脱炭素社会の実現に向け、次世代のクリーンエネルギーとして「水素」への期待が高まっています。本記事では、水素の性質、エネルギーとしてのメリット、エネルギーを取り出す仕組みを解説します。さらに、環境貢献度で分類される「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の3種類の水素の違いについても、詳しく見ていきます。
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次世代のクリーンエネルギーとして、世界的に注目を集めている水素ですが、実は昔からさまざまな産業分野で活用されています。
水素は、1970年代ごろから液体酸素と組み合わせることでロケットの推進剤として活用されてきました。単位質量当たりの発熱量がほかの一般的な燃料に比べて非常に大きいためです。
| 低位発熱量(MJ/kg) | |
|---|---|
| 水素 | 120 |
| ガソリン | 44.4 |
| 天然ガス | 50 |
この「軽くてパワフル」という特性は、水素が持つエネルギーとしてのポテンシャルを示しており、さまざまな分野への応用が期待される理由の一つとなっています。
※1 出典・参照元:国立研究開発法人産業技術総合研究所「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)終了報告書」(研究題目「水素エンジン燃焼技術」)に基づきSMFLにて作成
水素はロケット燃料としての利用だけでなく、非常に多岐に渡る産業分野で活用されています。
主な活用例は下記の通りです。
そのほか、マーガリンなどの油脂加工や光ファイバーの製造プロセスなど、身近な製品の製造にも活用されています※2。
※2 出典・参照元:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「水素エネルギー白書」
出典・参照元:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「水素エネルギー白書」に基づきSMFLにて作成
特に「発電」「モビリティ」「産業」の3分野では、実用化された技術から将来の技術開発まで、脱炭素社会の実現に向けた水素活用の取り組みが進められています。
従来の火力発電所を活用して、燃焼時にCO2を排出しない水素を使って発電する取り組みが進んでいます。
実証が開始されている「混焼発電」は、天然ガスなどの化石燃料に水素を混ぜて燃焼させる発電方法です。化石燃料の使用量を減らし、CO2排出量を削減できます。既存の発電設備を一部改修することで水素混焼が可能なため、大規模な設備更新を伴わずに脱炭素化を進められる手法として期待されています。さらに将来的には、化石燃料を使わず、水素のみを燃料とする「専焼発電」の実現も目指されています。
混焼発電や専焼発電は、設備に関わる技術開発に加え、安定的かつ安全に運用する技術基準の整備も並行して進められています※3※4。
出典・参照元:
※3 経済産業省「資料5 グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築 2024年度WG報告資料(NEDO)」
※4 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「脱炭素社会に向けて発電分野でのCO2フリーを実現するドライ方式水素ガスタービンコージェネレーションシステム」
最近では、都市ガスなどから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて発電する家庭用燃料電池が普及しています。発電だけでなく、発電過程で発生する熱を活用し、お湯を沸かすことで給湯や暖房として利用できる点が特徴です。
電気と発生時に生じる熱を無駄なく使えるため、家庭での総合エネルギー効率は90%にも達し、省エネやCO2排出量の削減に貢献します※5。
日本は世界に先駆けて2009年に市場導入を実現し、経済産業省によると2030年までに累計300万台の普及を目標としています※6。
出典・参照元:
※5 資源エネルギー庁「第3節 エネルギーコストへの対応」
※6 資源エネルギー庁「2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」
燃料電池自動車(FCV)は、走行時にCO2を排出しない自動車として注目され、実用化されています。水素と酸素の化学反応で発電し、モーターを動かす仕組みです。
走行時だけでなく、水素の製造や供給などの工程で排出されるCO2を考慮しても、ガソリン車よりCO2排出量を削減する効果が期待できます。例えば天然ガスを原料に製造した水素を使ったFCVの場合、走行時までの全工程におけるCO2排出量はガソリン車の約半分という分析結果もあります※7。
※7 出典・参照元:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「水素エネルギー白書」
水素の活用は乗用車にとどまらず、バスやトラック、倉庫などで稼働するフォークリフトなど、商用車・特殊車両の分野にも広がっています。
商用車は稼働時間が長い傾向にあり、長時間の外部充電を必要とせず、短時間でエネルギー補給ができる水素との相性が良いとされています。その中でもFCバスは、すでに東京都で100台以上導入され、他自治体でも導入が進んでいます。
また、燃料電池トラックにおいては、先行的な水素需要を創出することを目的に6つの地方公共団体が「重点地域」に選出され、実際に車両導入が進められています※8。
※8 出典・参照元:経済産業省「第1回『燃料電池商用車の導入促進に関する重点地域』を選定しました」
エネルギー密度が高い水素の特性を活かし、船舶や鉄道、航空機といった分野でも、水素を燃料とする技術開発が進められています。
日本では水素燃料船など、クリーンな燃料を使用する船に関する設備の整備を支援する「ゼロエミッション船等の建造促進事業」など、水素燃料船の国内生産体制の構築に向けた制度整備が進んでいる状況です※9。
また、航空機分野では、水素を燃料として使う水素航空機の開発が行われている一方で、欧州を中心にグリーン水素とCO2を合成したeSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)にも水素が活用されることが期待されています。
※9 出典・参照元:国土交通省「ゼロエミッション船等の建造促進事業」
製造業の工場で使用されるボイラーや工業炉の燃料を、化石燃料から水素へ転換する取り組みが進んでいます。
特にセメント、鉄鋼、化学産業などの製造工程では、高温の熱を安定的に供給する必要があり、多くの場合は化石燃料が熱源として利用されています。これらの産業は電化など従来の方法では脱炭素化が難しい分野として「Hard-to-Abate(ハード・トゥ・アベイト)」領域と呼ばれています。
水素は燃焼時にCO2を排出しない上、単位質量当たりのエネルギー密度が非常に高く、高温の熱を効率的に得られます。産業用途に適しており、水素は「Hard-to-Abate」領域で脱炭素を実現する有望な燃料としての活用が期待されています。
近年、鉄鉱石から鉄を取り出す製鉄工程において、水素を活用する「水素還元製鉄」が注目されています。製鉄では、鉄鉱石に含まれる酸素を取り除く「還元」と呼ばれる工程が必要ですが、従来は石炭由来の炭素がその役割を担ってきました。
この還元工程で水素を用いると、酸素と結びついて発生するのはCO2ではなく水(H2O)となるため、鉄鋼業におけるCO2排出量の大幅な削減が期待されています。
日本では、鉄鉱石から鉄を取り出す過程において、従来は還元剤として使われてきたコークス(石炭を加工した燃料)の一部を水素に置き換える「高炉水素還元」の実証が進められています※10。
※10 出典・参照元:NEDO グリーンイノベーション基金「製鉄プロセスにおける水素活用 | NEDO グリーンイノベーション基金」
水素は、かつてのロケット燃料としての利用だけでなく、今や企業の脱炭素化に向けた取り組みにおいて有効な選択肢の一つとなりつつあります。
水素は、大規模な産業用途だけでなく、徐々に一般消費者の身近な領域でも活用され始めています。例えば、一部では水素焙煎コーヒーや、水素で焼いた料理を提供する飲食店が登場しています。
(三井住友ファイナンス&リース株式会社 ネクストビジネス開発部 水素担当 高橋純平)
こうした取り組みが広がる中で、水素を安定的に供給する仕組みづくりは、今後ますます重要になります。
次回の記事では、水素エネルギーを活用するために欠かせない「輸送」と「貯蔵」の技術について解説します。
次世代エネルギーとして注目されている水素の供給には、気体の水素を扱いやすい形態に変換して輸送・貯蔵する水素キャリア技術の確立が不可欠です。本記事では、代表的な4つの水素キャリアについて、それぞれの特徴を解説します。
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文・編集:株式会社メンバーズ
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