水素エネルギー解説(2)活用方法編│発電・モビリティ・産業利用の最新事例
水素は次世代のクリーンエネルギーとして注目されていますが、具体的な用途や活用方法についてご存知でしょうか。本記事では、歴史の長い水素の活用方法と、今後期待される、「発電」「モビリティ」「産業」の3分野における水素エネルギー実用化の例を紹介します。
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脱炭素社会の実現に向け、次世代のクリーンエネルギーとして「水素」への期待が高まっています。
本記事では、水素の性質、エネルギーとしてのメリット、エネルギーを取り出す仕組みを解説します。さらに、環境貢献度で分類される「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の3種類の水素の違いについても、詳しく見ていきます。
本記事について
本記事は、脱炭素を推進する三井住友ファイナンス&リース株式会社が社内啓蒙用に発行した「次世代エネルギー『水素』の最前線」を再編集し、脱炭素の取り組みの一環として制作したものです。
水素は、エネルギーとして利用する際に二酸化炭素(CO2)を排出しない特性を持っています。そのため、脱炭素社会の実現に向けた重要な選択肢として注目されています。
水素(H2)は水素原子(H)が2つ結びついた気体です。宇宙に最も多く存在する元素で、宇宙を構成する元素の約90%(原子数比)を占めています※1。しかし、地球上では単体の水素ガス(H2)としてはほとんど存在せず、その代わりに、水(H2O)や炭化水素(メタンなど)といった化合物の形で存在しています。
常温では無色・無臭・無味の気体であり、地球上に存在する気体の中で最も軽いという特徴を持っています。
また、水素は酸素と反応しやすく、燃焼や化学反応によってエネルギーを生み出します。その燃焼の際には水(H2O)が生成され、CO2は排出されません。
加えて、水素は、マイナス253℃まで冷却すると液体化し、体積が気体状態の約800分の1まで縮小します※2。このように気体の水素を別の形に変えることで、一度に大量の水素を効率的に貯蔵・輸送できます。
出典・参照元:
※1 文部科学省「一家に1枚水素」
※2 環境省「水素社会実現に向けての取り組み」(令和6年度水素利活用に向けた「自治体連絡会議」)
水素エネルギーは、なぜこれほどまでに脱炭素の重要な要素として世界中から期待されているのか、その理由として、水素の3つの特徴を解説します。
前述の通り、水素は燃焼しても水しか排出しないため、エネルギーとして利用する段階では、地球温暖化の原因となるCO2を排出しません。
化石燃料のように排気ガスを出さず、環境への負荷が低い、クリーンなエネルギーと言えます。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変動する特性を持っています。そのため、電力の需要(使う量)よりも供給(つくる量)が上回る時間帯が発生し、余剰電力として無駄になってしまうケースがあります。
この課題を解決する有効な手段の一つが、水素の活用です。余剰電力を水素に変えて貯蔵することで、後から発電や熱利用などに使うことができ、再生可能エネルギーの活用を最大化できます。この再生可能エネルギー由来の電気を水素として貯蔵する技術を 「Power-to-Gas(P2G)」 と呼び、社会実装に向けた動きが進められています※3。
※3 出典・参照元:資源エネルギー庁「第3節 “水素社会”の実現に向けた取組の加速」
水素は、水の電気分解だけでなく、天然ガスやバイオマス(生物由来の資源)など、多様な資源から製造できます。
特定の資源に依存することなくエネルギーを確保できるため、多くの資源を海外からの輸入に頼る日本にとって、エネルギーを安定的かつ継続的に確保することは、エネルギー安全保障(エネルギーセキュリティ)を強化する上で、重要な選択肢となるでしょう。
水素の持つ化学的な性質を活かし、どのようにして電気や動力といったエネルギーに変換するのでしょうか。ここでは、主な2つのエネルギー転換の仕組みについて解説します。
出典・参照元:経済産業省「水素・燃料電池戦略協議会ワーキンググループ(第4回)‐資料2 水素発電について」に基づきSMFLにて作成
天然ガスなどと同じように、水素をガスタービンやエンジンといった装置で直接燃焼させて、熱エネルギーを取り出す方法です。このエネルギーを利用してタービンを回し、発電機を駆動させて発電するほか、強力な動力としても活用できます。また、燃料電池と比較して、化学反応を伴わない仕組みのため、水素の純度を気にせずに使えることが特徴です。
この直接燃焼という手法は、既存の火力発電所の設備やエンジンの技術を一部応用できると考えられているため、ほかの発電方法に比べて、比較的スムーズな技術移行が期待されています。さらに、動力や電力として利用するのではなく、電化では必要な温度を確保することが困難な「Hard-to-Abate(ハード・トゥ・アベイト)」領域においても、化石燃料に代わる直接の高温熱源として期待されています。
出典・参照元:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年6月版)」に基づきSMFLにて作成
燃料電池発電は、水素と空気中の酸素を化学的に反応させて電気と熱を直接発生させる「燃料電池(Fuel Cell、略してFC)」という仕組みを利用する方法です。
燃焼のように一度熱エネルギーに変換する過程を挟まず、化学反応から直接電気を取り出すため、エネルギーを電気に変換する効率が非常に高いという特徴があります。また、水素をガスタービンやエンジンなどの装置で直接燃焼する方法と異なり、機械的な動作で発生する騒音や振動が小さいため、水素燃料電池車(FCV)などで活用されています。
一方で、燃料電池に使用される水素は、劣化防止のために国内規制で99.97%の高純度が求められます※4。そのため、コストや技術面などで水素キャリア(輸送・貯蔵手段)の選択に影響します。
燃料電池の技術は、燃料電池自動車(FCV)や、家庭でお湯と電気を同時につくり出す家庭用燃料電池システムなどで、すでに実用化が進んでいます。
※4 出典・参照元:環境省「水素サプライチェーンにおける温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン」
一言で「水素エネルギー」といっても、その製造方法によって環境への貢献度が異なります。製造過程におけるCO2排出量の観点から分類される3種類の水素の違いと、脱炭素社会で特に重要視される水素について解説します。
出典・参照元:経済産業省 資源エネルギー庁「次世代エネルギー『水素』、そもそもどうやってつくる?」に基づきSMFLにて作成
水素は、その製造過程におけるCO2の排出量の違いから、主に「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の3種類があります。
世界各国がカーボンニュートラルの実現を目指すなか、製造から利用まで一貫してCO2を排出しない「グリーン水素」が、脱炭素社会の切り札として期待されています。
その普及に向け、製造技術の確立、そしてコスト低減を実現することが、今後のエネルギー政策における重要なテーマとなっています。
本記事では、水素の基本的な性質から、エネルギーとしての利用の仕組み、そして「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」といった製造方法による違いまでを解説しました。
では、水素エネルギーを、具体的にどのように「つかう」のでしょうか。次回の記事では、水素エネルギーの活用方法や発電・モビリティの最新事例について解説します。
水素は次世代のクリーンエネルギーとして注目されていますが、具体的な用途や活用方法についてご存知でしょうか。本記事では、歴史の長い水素の活用方法と、今後期待される、「発電」「モビリティ」「産業」の3分野における水素エネルギー実用化の例を紹介します。
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(内容、肩書は2026年6月時点)
文・編集:株式会社メンバーズ
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