サーキュラーエコノミーの基本と推進のポイント。未来を見据えて長期的な戦略を
持続可能な社会の実現のために「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への転換が求められています。そもそもサーキュラーエコノミーとは何を指し、実現に向けてどのようなステップが必要なのでしょうか。また、これまで日本で推進されてきた「3R」とは何が違うのでしょうか。本稿では、サーキュラーエコノミーの基本や、企業が循環経済を見据えた新たなビジネスモデルへと転換する上での課題や解決のヒントなどを紹介します。
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欧州連合(以下、EU)のサーキュラーエコノミー規制は、EU市場でのビジネス展開や、EU域内への部品・製品を輸出している企業にとって、今後の戦略に影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、EUにおける環境政策の最新動向を解説します。また、日本の企業活動に直接影響するエコデザイン規則(ESPR)やデジタル製品パスポート(DPP)といった規則を取り上げ、ポイントを分かりやすくお伝えします。
本記事について
本記事は、サーキュラーエコノミーを推進する三井住友ファイナンス&リース株式会社が社内啓蒙用に発行している「Circular Economy Newsletter」を再編集し、サーキュラーエコノミー普及の取り組みの一環として制作したものです。
EUはサーキュラーエコノミーの最前線にあり、その方向性は国際的な企業活動に広く影響を及ぼしています。ここでは、日本企業の事業環境にも影響を与える可能性のあるEUの政策推進と意思決定の仕組みを整理します。
EUは、「欧州グリーンディール」と呼ばれる包括的な政策を通じて、サーキュラーエコノミーへの移行を含む持続可能な経済への転換を推進しています。その実現に向けて2020年から2030年の10年間で少なくとも1兆ユーロ規模の投資が計画されています※1。
※1 出典・参照元:経済産業省「資料3 2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き」
持続可能な社会の実現のために「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への転換が求められています。そもそもサーキュラーエコノミーとは何を指し、実現に向けてどのようなステップが必要なのでしょうか。また、これまで日本で推進されてきた「3R」とは何が違うのでしょうか。本稿では、サーキュラーエコノミーの基本や、企業が循環経済を見据えた新たなビジネスモデルへと転換する上での課題や解決のヒントなどを紹介します。
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EUの政策は、主に4つの主要機関が連携して策定・決定するため、各機関の役割を理解しておくことが重要です。
| 組織 | 役割 | 補足説明 |
|---|---|---|
| 欧州理事会 | EUの政治的な方向性と優先課題を決定する最高意思決定機関 |
|
| 欧州委員会 | 新しい法案を提案する権限を持つ執行機関 |
|
| 欧州議会 | 市民の声を政策に反映させる立法府 |
|
| EU理事会 | EU各国の利害を調整しながら政策を決定する共同立法機関 |
|
出典・参照元:外務省「欧州連合(EU) 概況」に基づきSMFLにて作成
欧州委員会が政策の土台となる法案を提案し、この法案を審議し採択する立法機関として、欧州議会とEU理事会があります。
このようにEUの政策は複数の機関の連携によって決まりますが、特に重要なのは、採択権を持つEU理事会と欧州議会の重視する点が異なる点です。例えば、欧州議会は環境を重視する傾向がある一方、EU理事会は加盟国の産業競争力を重視する傾向があります。こうした立場の違いは、実際の規制内容や施行時期に直接影響を及ぼす可能性があります。
EUの環境政策は、当初は規制を中心とした環境保護を打ち出していましたが、近年は規制を維持しつつ、環境保護と産業競争力の強化を両立させる方向へと進化しています。その変化の背景と企業への影響を見ていきましょう。
2019年から2024年の1期目、欧州委員会委員長のフォンデアライエン氏は、欧州グリーンディールを掲げました※2。この政策は、環境保護を目的とした規制強化を柱としつつ、持続可能な経済成長を目指す包括的な戦略です。2019年5月の欧州議会選挙では、環境重視の政党が議席を伸ばし「グリーン旋風」とも呼ばれる動きが広がりました。
EUの法制度には、各国の法整備を前提とする「指令」と加盟国に直接適用される「規則」の2つがあります。
| 指令 | 規則 |
|---|---|
|
|
近年は、環境政策について「指令から規則への移行」が加速しており、より強制力と実効性の高い形で進める動きがみられます。後述のエコデザイン規則(ESPR)やELV規則案もこの流れに位置付けられ、製品設計やリサイクルに関する要件が、加盟国間の解釈に左右されず、強制的に適用されることが特徴です。
※2 出典・参照元:欧州連合日本政府代表部「EU情勢概要(2020年10月)」
フォンデアライエン氏の初任期に進められた環境規制は、一部で強い反発を招きました。こうした背景から、2024年12月に発足した2期目※3では、環境規制と経済競争力の両立を意識した方針へと見直しました。
この方向転換の指針となるのが、競争力コンパスです。この提言書ではEUが将来的にイノベーション、脱炭素化、安全保障の分野で市場をリードしていくための道筋を示しています※4。
競争力コンパスを具体化したのが、2025年2月に発表されたクリーン産業ディールです。エネルギー価格の安定化や質の高い雇用の創出、クリーン技術の市場拡大、循環性の向上などを目的とした施策を打ち出し、脱炭素と経済競争力を両立した経済成長を目指しています※5。
また、EUは既存の規制を簡素化するための手段としてオムニバス法案を導入しました。複数の既存法規を改正し、情報開示義務などの期間延期や対象の限定、報告負担の軽減をするものです※6。
さらに2026年頃には、サーキュラーエコノミーの取り組みを強化する循環型経済法の策定が予定されています※7。
出典・参照元:
※3 欧州連合日本政府代表部「EU情勢概要(2025年2月)」
※4 環境省「グリーンファイナンス市場の動向」
※5 環境省「資料2 国内外の最近の動向(報告)」
※6 環境省「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」
※7 European Commission「Commission launches consultation for upcoming Circular Economy Act」
EUはサーキュラーエコノミー実現のため、製品設計からリサイクル、情報管理に至るまで規制を拡大しています。日本企業には、具体的にどのような対応が求められるのでしょうか。ここでは特に注目すべき3つの政策を見ていきましょう。
EUのエコデザイン規則(ESPR:Ecodesign for Sustainable Products Regulation)は、耐久性や修理可能性、資源効率性、エネルギー消費効率などのエコデザイン要件を満たす製品設計や情報の開示を求めるものです。
これまではエコデザイン指令として、エネルギー関連製品(家電など)を対象に、主にエネルギー消費効率に関する要件が決められていました。「指令」から「規則」への変化に伴い、適用範囲も大幅に拡大され、ESPRでは食品や飼料など一部の例外を除くほぼ全ての物理的な製品が対象となりました。
| エコデザイン指令 | エコデザイン規則 | |
|---|---|---|
| 適用範囲 | 家電などエネルギー関連製品 | EU域内で使用されるあらゆる物理的な製品に適用(食品、飼料など一部例外を除く) |
| エコデザイン要件 | 主に製品のエネルギー消費効率 | 耐久性、信頼性、修理可能性、資源効率性、環境影響など、循環型の要件も導入 |
EU域外の企業でも、製品をEU市場に供給する場合はエコデザイン要件を満たした製品設計が必要です。
出典・参照元:環境省「国際会議等における情報収集」(令和5年度)
ELV指令に代わって、欧州委員会が2023年7月に提案したELV規則案は、自動車部品のリサイクルを促進することを目的としています。
この規則案では、リサイクル目標を厳格化し、製品のライフサイクル全体にわたる循環性の向上を目指しています。具体的には、以下のような内容が提案されています。
ELV指令が「規則」になった場合は、EU加盟国に直接適用され、各国の国内法よりも優先される強制力を持ちます。指令とは異なり、加盟国ごとの法整備を経ずに適用されるため部品設計やリサイクル体制などに影響が出る可能性があります。
出典・参照元:経済産業省「資料4 自動車リサイクル制度をめぐる各種取組状況」
デジタル製品パスポート(DPP:Digital Product Passport)は、モノのパスポートとも呼ばれ、製品のライフサイクル全体の情報を追跡可能にする仕組みです。製品の透明性を確保しトレーサビリティを向上することで、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。
この制度は前述のエコデザイン規則(ESPR)の一部として導入されるものであり、製品の設計から販売、使用、廃棄、リサイクルに至るまでのエコデザイン要件に関する情報を一元的に管理することが求められます。
対象は、食品や飼料、医薬品など一部の例外を除き、バッテリーや繊維製品、電子機器といった幅広い製品が含まれます。DPPの適用は一度に全てではなく、製品カテゴリーごとに段階的に義務化される予定です。
早い段階から情報管理体制を整備し、対象分野の拡大に備えることが重要です。
出典・参照元:環境省「サーキュラーエコノミーと DPP(デジタル製品パスポート)」
持続可能な社会の構築を目指すサーキュラーエコノミーは、資源の効率的利用や環境保護に大きく貢献すると考えられています。サーキュラーエコノミーに関する、2024年現在の最新動向と企業における実践について、サーキュラーエコノミーの専門家である株式会社電通ライブの堀田峰布子さんの解説を基にレポートします。
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EUの環境政策は、単なる環境保護の義務から、新たな成長の機会へと変化しています。法規制が「指令」から「規則」へと効力を強めており、日本企業への影響も無視できません。
企業にとっては、製品設計から調達、回収、再利用に至るまで、バリューチェーン全体を見つめ直す機会となります。
日本国内でもサーキュラーエコノミーへの動きは活発化しています。取り巻く環境の変化をいち早く読み解き、自社の戦略に組み込むこと。それが、不確実な時代を生き抜き、未来の競争力を手にするための鍵となるかもしれません。
(内容は、2026年2月時点)
文・編集:株式会社メンバーズ
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