三井住友ファイナンス&リース株式会社
ネクストビジネス開発部 副部長
上田恭平(うえだ・きょうへい)
三井住友ファイナンス&リース株式会社
ネクストビジネス開発部 副部長
三井住友ファイナンス&リース株式会社
ネクストビジネス開発部 副主任
三井住友ファイナンス&リース株式会社
ネクストビジネス開発部 副主任
衛星ビジネスを前進させるため、欠くことのできない資金調達。これまでその手法は「補助金・出資(エクイティ)・融資(借入)」が中心でした。
しかしいま三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)では、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行う宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)との共創を通じて「衛星リース」という新事業開発を進めています。また、軌道上サービスの開発に取り組むアストロスケール社とは、軌道上サービスとリースを組み合わせたサービスの開発、共創の可能性について検討しています。
SMFLのネクストビジネス開発部に衛星リースに取り組む背景や展望を聞きました。
――2023年にSMFLの戦略子会社、SMFLみらいパートナーズとJAXAが人工衛星のリースと二次利用という事業領域において共創活動の開始を発表。2026年2月にはSMFLとSMFLみらいパートナーズが、アストロスケール社と「人工衛星の二次利用マーケットの創出」に向けた覚書締結についてのプレスリリースを発表しました。拡大が見込まれる衛星ビジネス市場は、大きな投資を伴う領域でもあります。その市場をSMFLネクストビジネス開発部はどう捉え、どのような役割を担おうと考えているのでしょうか。
上田恭平(以下、上田):宇宙ビジネスの市場規模は、2035年までに1兆8,000億ドル(約286兆円)に達するという試算が、世界経済フォーラム(WEF)とマッキンゼー・アンド・カンパニーの共同レポートで示されています※1。そのうち、通信や地球観測、測位といった人工衛星を活用するビジネスのすそ野は、宇宙経済全体の成長をけん引する中核領域とされています。
菊池美穂子(以下、菊池):その巨大市場にどう当社が取り組み、他企業に活用していただける設計にするか。現在ビジネスの具体化に向けて、さまざまな研究に取り組んでいます。衛星ビジネスにおいて、大きな課題になるのは資金調達です。なにしろ人工衛星は1基打ち上げるのに数億~数百億円かかるとも言われますから。
田口莉菜(以下、田口):その規模になると、資金調達においてもより多くの選択肢が必要になってきます。当社グループでは航空機リース事業を世界第2位の規模で展開しており、予算規模が類似する衛星ビジネスにおいても事業拡大の可能性があると考えました。
※1 出典:World Economic Forum × McKinsey & Company「Space: The $1.8 Trillion Opportunity for Global Economic Growth」(2024年4月)。原文では2035年に世界の宇宙経済が1.8兆米ドル規模になるとの予測。円換算は概算。
――宇宙事業における資金調達は「補助金、出資、融資」が主流です。大規模な投資を伴う衛星ビジネスにおいて、既存手法にはどのような課題があるのでしょうか。
上田:それぞれに利点はありますが、衛星ビジネスのような規模の事業では、既存手法だけで十分とは言い切れないのではないか、と我々は考えています。
例えば補助金は採択か不採択かの見通しが不透明な上、資金の使途が限定されます。出資(エクイティ)には早期に利益を出すよう求められるケースもあったり、金融機関からの融資にも一定の上限が設定されていたりもします。
市場が拡大するなか、補助金・出資・融資という三本柱だけで、衛星ビジネスの資金需要をまかなえるとは限らない、というのが実感です。
田口:特に人工衛星のように、1基当たり数億~数百億円の初期投資(CAPEX)が必要で、運用期間も複数年、用途によっては10年、15年と長期にわたる事業では、一括での支払いや短期間で投資回収することを前提とした手法はなじみにくい。だからこそ、既存の選択肢に加えて、新しい発想の資金調達の手法を提案する必要があると考えています。
――新しい資金調達の手法を構築するにあたり、人工衛星をどのような資産として捉えるかという視点が浮上したと伺いました。
上田:これまで人工衛星は「打ち上げて使い切る設備」と見られてきました。しかし私たちは「長く稼働し、将来にわたって価値を持つ資産」と考えます。人工衛星を将来価値のある資産として捉え直すと、新たな選択肢として「リース」が浮かび上がってきます。私たちはいま、「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2方向で、人工衛星に関する事業展開を考えています。
菊池:簡単に説明しますと、ファイナンス・リースでは、お客さまが導入される人工衛星を当社が代わりに購入し、お客さまにリースします。リース期間中にお支払いいただくリース料は、人工衛星の購入代金および諸経費のおおむね全額です。その総額をリース期間に応じて分割してお支払いいただきます。
一方、オペレーティング・リースでは、人工衛星の将来価値(残存価値)に着目し、人工衛星の取得価額から残存価値を差し引いた部分をリース料として設定します。お客さまの支払い負担をさらに抑える選択肢が視野に入ってきます。
田口:衛星リースという手法なら、時に数百億円にも上る莫大な初期投資(CAPEX)をリース期間に応じて平準化できます。手元のキャッシュを温存しつつ、次の研究開発やサービス運用に投資を回せるようになります。
上田:人工衛星の価値の捉え方は、軌道によっても異なります。数を打ち上げてネットワークを密にする小型の低軌道衛星は、観測なら広域なエリアをカバーし、通信なら高速通信ネットワークを構築しますが、数年でその役割を終え、新しい人工衛星に役目を引き継いでいきます。
一方、数百億円クラスの静止軌道にある大型衛星は10~15年、なかにはそれ以上長く機能し続けるものもあります。燃料が尽きて当初の役割を終えた後でも、寿命延長の技術によって一定の機能を保持し続けられる可能性があります。
菊池:静止軌道にある大型衛星は、資産価値が長持ちするという意味では不動産にも似ているかもしれません。「中古物件」として評価し、オペレーティング・リースに組み込めるよう、研究を重ねています。使い捨てではなく、残っている価値を次につなぐ。この「静止軌道にある大型衛星のセカンダリー(中古)活用」も、私たちが考える衛星リースの柱の一つです。
――SMFLグループではJAXAとの共創やアストロスケール社との共創可能性の検討を進められていますが、その背景にある考えを教えてください。
上田:現在、人工衛星のリース市場の形成と二次利用市場の創出に向けた活動を行っています。これは自社だけで完結するものではなく、JAXAさまやアストロスケールさまのように現場を熟知し、技術力のある多様なパートナーとの連携・協力が必要です。
こうした共創は、私たちの衛星リースの「要」となる取り組みです。パートナーから技術を学び、それをリースビジネスに活かすことを考え、新たなサービスをともに創出する。それぞれの領域における強みや機能を掛け合わせることで、将来的には「人工衛星の中古価値」を見いだすことができるかもしれません。これは一朝一夕にはできない、SMFLの強みだと考えています。
――最後に、この「衛星リース」という新しいビジネスの魅力や思いを教えてください。
菊池:私はこのプロジェクトに関わるまで、宇宙や衛星ビジネスとの接点はありませんでしたが、知るほどに夢が広がる素晴らしい領域だと感じています。私たちのスマートフォンのなかにも人工衛星を使ったサービスはたくさんあります。まだ世の中にない事業にも衛星ビジネスの可能性はあるはずです。
田口:すでに衛星ビジネスに取り組まれている企業はもちろんですが、新規参入を検討されている企業ともご一緒できればと考えています。
上田:この事業を発案したきっかけは2019年の宇宙ビジネスイベント「S-Booster※2」でした。当時、JAXA新事業促進部の市川千秋さんの「人工衛星に中古価値を見いだす」というプレゼンに感銘を受けたのが、いまのプロジェクトの出発点です。
「衛星リース」はまだ世の中に確立されていないビジネスです。だからこそ、私たちは早い段階から関心のある企業の皆さまとつながり、ニーズや課題、共創のあり方をともに探っていきたいと思っています。また、衛星リース事業は多様なプレイヤーが参画することで、市場はより大きくなっていくと我々は考えています。
衛星ビジネスにおける、新しい資金調達の方法を検討している皆さまはぜひお声がけください!
※2 「宇宙ビジネスアイディアコンテストS-Booster」(主催:内閣府、共催:JAXA・NEDO、アジア共催:GISTDA)。出典:内閣府「S-Booster 2019開催報告」
(内容、肩書は2026年6月時点)
文・編集:松浦達也(馬場企画)/撮影:相川大助
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