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サーキュラーエコノミー推進を成功させるための、社内外の協力体制構築のヒント

サーキュラーエコノミー推進を成功させるための、社内外の協力体制構築のヒント

Profile

株式会社ねごと代表

クリエイティブディレクター

清水 佑介(しみず・ゆうすけ)

清水 佑介さんの写真

戦略の立案から、マス・コミュニケーション、アクティベーション、PRまで、マーケティング・コミュニケーション全体を統括するクリエイティブディレクターとして日本を代表する企業のマーケティング活動をサポートする傍ら、Earth hacks株式会社のCCOとして、スタートアップの事業戦略の立案やサービス開発、コミュニケーション/ブランディングを手掛ける。 サーキュラーエコノミーや脱炭素社会の実現と経済成長をテーマに全国各地で講演/勉強会も開催。

企業では、資源投入量や消費量を抑えつつ、循環させていく「サーキュラーエコノミー」の考え方を取り入れる動きが広まっています。

サーキュラーエコノミーを推進する上では、従来のやり方を大きく変える必要があります。社内からの反対意見や経済合理性の懸念が生じる場合もありますが、部門間の壁やさまざまな障害を乗り越える原動力は、トップの強いコミットメントと社内への明確な伝達です。また、社内体制の構築はもちろん、関連企業や必要な知見を持つ外部のパートナーといった、社外との連携も欠かせません。

サーキュラーエコノミーを推進していく中で、企業はどのような課題に直面し、解決のためにはどのように社内外の協力体制を築いていけば良いのでしょうか。

企業のマーケティング・コミュニケーションを担当する傍ら、さまざまな企業のサーキュラーエコノミー推進に伴走している、株式会社ねごと代表・清水佑介さんの解説を基にレポートします。

サーキュラーエコノミー推進の基盤を作るための「社内協力体制」構築のポイント

会議の様子

サーキュラーエコノミーの推進にあたって、まず必要なのは社内の協力体制の構築です。その際のポイントとして、清水さんは次の2点を挙げています。

目的意識を揃え、全体の向かう方向性を明確にする

まずは社内で、なぜサーキュラーエコノミーを推進するのか、目的意識を共有することが重要です。

会社の規模や業種、社風によって異なりますが、多くの場合、縦割りな組織構造による課題に直面するのではないでしょうか。

特に大企業の場合、サーキュラーエコノミーの推進が短期的に各部署の役割とゴールを阻害することが考えられます。例えば、原材料の回収・再利用システムを整えるために調達コストが一時的に上がり、収益に影響を及ぼすようなケースでは、多くの部署から積極的な協力を得られない可能性があります。

部署間の協力体制を築くには、会社として向かう方向性を明確にし、各部署の短期的な目的達成ではなく一段上にある目的に向けて動こうという流れを作ることが必要です。

社内でサーキュラーエコノミー推進の目的意識やモチベーションがうまく共有されない、部署間の連携がうまくいっていないなどの課題があれば、取り組みがもたらす効果を定量的な視点で確認すると良いでしょう。

例えば、パッケージ素材を再資源化しやすいものに変更するとします。素材の原価が上がる場合、調達部門の「素材を低コストで調達する」ミッションとは反するかもしれません。しかし、素材を変更すれば廃棄物処理にかかるコストを削減でき、ビジネス全体で見れば原価高騰の影響は少ない可能性があります。このように、局所的に見ればデメリットが大きいように見えても、企業全体ではメリットが上回ることも考えられます。

前提として、サーキュラーエコノミーは「循環型のマテリアル(資源)の流れ」の実現を意味します。「自社商品の原料調達、製造、輸送、販売、廃棄の流れを俯瞰(ふかん)し、可視化された数字で会話することで、多くの部門の賛同を得られやすくなるだろう」と清水さんは話します。

推進に向けて動きやすいプロジェクト体制を作る

サーキュラーエコノミーの実現にあたっては、サプライチェーンの川上から川下まで、つまり調達から廃棄までの全体像を確認し、再構築していく必要があります。

一部の部署だけで、自社のサーキュラーエコノミーの全体像をビジョンメイクすることは困難なため、関係部署を巻き込んだ、プロジェクトチームの検討が必要です。

プロジェクトを構築する方法としては、以下の2パターンが考えられます。

経営の観点から事業にブレイクダウンしていくケース
経営企画や社長室など、中長期的なビジョン検討を担当する部門が担う
現場から小さく始めて周囲を巻き込んでいくケース
原料調達や商品開発、製造、流通といった事業のマテリアルフロー(資源の量や流れ)に関係の深い事業部が担う

このどちらかが、比較的進行しやすいプロジェクトの立ち上げ方であると、清水さんは説明します。

ただし、サーキュラーエコノミーのプロジェクトメンバーが主担当業務と兼務で参加している場合は注意が必要です。業務の目標達成とサーキュラーエコノミーの推進が相反する場合、結果としてプロジェクトが形骸化してしまう可能性も考えられます。

サーキュラーエコノミーの実現を会社全体で優先して取り組むべき経営課題として捉え、実現に向けたアクションを正しく評価することが重要です。そのためにはプロジェクトのゴールと評価軸を明確にしておくと良いでしょう。

サーキュラーエコノミーの推進には、外部パートナーとの連携が不可欠

スーツを着た2人が握手をする様子

サーキュラーエコノミーが目指すゴールは「新しいマテリアルを調達することなく今あるものだけで経済を回す」ことです。

そのためには原料調達から製造、流通、販売、回収や廃棄の流れを全て見直す必要があります。

しかしながら、これらが一企業で完結するケースは少ないでしょう。サーキュラーエコノミーの実現には外部のパートナーとの連携が重要です。

資源の回収・再資源化への道のりを明確にする

サーキュラーエコノミーの推進は多くの場合、製品が自社の手を離れた後どのように廃棄されているのか、現状分析としてマテリアルフローの可視化から始めることになるでしょう。

現状はほとんどの企業が廃棄された自社製品を回収して原料として再調達する手段を持っていません。そのため、サーキュラーエコノミーに取り組む際は、まず自社製品の廃棄ルートを分析し、廃棄された製品の回収方法などを検討する必要があります。

廃棄後の製品を自社で追うことは難しいため、一般的には「静脈企業」と呼ばれる企業との連携が必要です。

※ 静脈企業とは、廃棄物を再販売・再加工し再び社会に流通させる企業を指す。これに対して、メーカーなど、製品などを生産する企業は「動脈企業」と呼ばれる。

静脈企業と連携しながら、まずは各過程でやむを得ず廃棄されているものの有無やその原因の洗い出しを行います。

製品のパッケージに使う素材を再資源化しやすいものに変えるだけで、現状廃棄物になってしまっているものを資源に変えられる可能性もあります。専門知識を持った静脈企業との連携により、自社の製品をどのように再資源化していくのか、具体的な手法が見えてきます。

また、サーキュラーエコノミー推進のための分析と実行支援を専門とするコンサルタントを頼ることも選択肢の一つです。

分析の例

  • 原料調達・製造・回収のどの部分から着手するのが最もサーキュラーエコノミーの実現という目的に近づきやすいのか
  • サーキュラーエコノミーの観点に加え、今後の売り上げにも寄与し得るのはどの工程なのか

このような分析をした上で改善を進める領域を絞り込み、効率的な資源活用の提案をもらうことでサーキュラーエコノミー推進のロードマップが見えてきます。

サーキュラーエコノミーのプラットフォーマーとして未来に貢献する。三井住友ファイナンス&リースの挑戦とビジョン

資源の有効活用と環境保護が求められる現代において、サーキュラーエコノミーへの対応は欠かせないテーマです。しかし、製品を回収して再資源化し、新たな製品を生み出すといった「循環型の仕組み」を構築することは容易ではありません。

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サーキュラーエコノミーの推進は、イノベーションの創出にもつながる

ペットボトルや紙など再利用できる資源を持つ人の手

実際に進んでいるサーキュラーエコノミーの取り組みとしては以下のような例が挙げられます。

  • 一度製造したものを長く使い続けられるよう、修理の仕組みを整える
  • 販売した製品を回収し、リユースして再販売するシステムを作る
  • 商品をサブスクリプション化し、廃棄が出ないようにする

こうした取り組みを実践に移すためには、前述のようにマテリアル開発、製造、流通、回収など、それぞれの領域に強みを持つ複数の企業とのパートナーシップが必要です。実際、さまざまな企業において、パートナーシップを踏まえたサーキュラーエコノミーの実践が少しずつ進んでいます。

また、企業がこのようにサーキュラーエコノミーを推進するメリットは、環境負荷の低減だけでなく、イノベーションが起こる風土を作れることでしょう。

サーキュラーエコノミーの取り組みは「自分たちのビジネスがどこから何を調達していて、何をどのくらい排出・廃棄しているのか」という全体の構造を一度分解して理解し、再構築していくものです。従来のビジネスとは異なるビジネスモデルを考える中で、必然的に新しいアイデアが必要になります。こうしたプロセスが結果的に社内のイノベーションにつながる可能性があるのです。

例えば、サーキュラーエコノミーの取り組みで新しく生まれたソリューションが別の事業にマッチし、これまでとは異なる領域での成長が得られるかもしれません。

また、推進のための社内外の協力体制やネットワークがあること自体が、将来的に企業の競争力にもなっていくはずです。サーキュラーエコノミー推進に向けて動き出す企業が増えていく中で、すでに成功事例を持っていることは、自社のノウハウを社外に提供できるという大きなアドバンテージになります。先駆者としてのブランドイメージを持てるのはもちろん、そのノウハウ自体を新たなビジネスにするといった広がりも期待できます。

清水さんは、サーキュラーエコノミーへの取り組みについて「環境対応」「社会的責任を果たす」と捉えるだけではなく「一つの強固な成長軸を社内に確立する」という意識で向き合うのが望ましいと語ります。サーキュラーエコノミーの推進によって、一事業だけでなく会社自体、ひいてはその周りの社会全体が、大きく変わっていく可能性があるのです。

(内容、肩書は2025年5月時点)

取材・構成:鼈宮谷千尋/編集:はてな編集部 

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