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SMFLの虜たち

KUTVONEN AKI

“研究所”という世界が狭すぎた。

研究員をしていた当時は、ずっとモヤモヤを抱えていました。 本当はもっと大きな世界で自分の力を試したかった。 そして、自分の仕事が人々に影響を与えていることを実感したかったんです。 そもそも、僕が母国のフィンランドから出てきた理由もそこにあったわけですから。 大学時代は本国で理論物理学と計算物理学を専攻していました。 日本にくるきっかけになったのが、博士号をとるために関わったプロジェクト。 それがたまたま、東京大学とコラボレーションしたものでした。 それまで日本には縁もゆかりもありませんでしたが、プロジェクトの関係で半年ほど滞在することになりました。 そして、その半年後、博士号を終了したタイミングで、大学からファンディングを受けられるという話があり、 そのまま大学で研究員として働くことに。研究に没頭して2年。 もともとやりたかったはずのAI関連の研究でしたが、論文を書くことに追われたり、 視野の狭い分野にフォーカスを当てて活動することが、だんだん億劫になってきました。 このまま続けていくと、知識や技術を持て余した頭でっかちになってしまうんじゃないかと。 僕はAIで何かをしたいわけじゃなくて、何か課題を解決するための手段としてAIを使いたかった。 “研究所”という世界が、僕にとっては狭すぎたのです。

AI関連のプロジェクトの
7割が失敗する?

研究所をやめてから、転職するなら、日本企業と決めていました。単純に興味があったんです。 でも、エンジニアにとって最適な職場を見つけるのは簡単なことではありません。 実は、日本において、AI関連のプロジェクトの7割が失敗に終わると言われています。 その理由は、エンジニアのスキル云々よりも環境による要因が大きいでしょう。 たとえば、マネタイズの問題だったり。あるいは、企業が開発を内製するだけの経験や 知識を持っていないということも多分にあります。 日本企業では、AIだけでなくソフトウェアなどのITサービスをベンダーから購入するのが定石です。 開発を外部にたよっているので、社内にはノウハウが蓄積されませんし、理解も深まりません。 たとえ、どんなに天才的なエンジニアやデータサイエンティストを雇ったとしても、 データが手元になければ、ほとんど何もできません。まずどんなデータが必要なのか、また、 そのデータを誰がどうやって入手してくるのかを考え、エンジニアをサポートするチームが必要です。 多くの企業にはそういった体制がない。3割の成功率に望みを賭けるというのもロマンかも知れません。 でも僕は、優秀な人たちとチームを組んで「AI関連のプロジェクトは7割が失敗する」なんて、 そんな定説を破りたかった。

年間、数十万時間を削減した
圧倒的OCRサービス。

研究員として働いていた経歴と、その専門性を買われて、いろんな企業からオファーをいただきました。 しかし、それらを差し置いてもSMFLが僕には魅力的でした。 そして、今まさに、自分が手がけているプロジェクトで、これまで培ってきたAIの知識と経験が、 陽の目をみはじめています。特に可能性を感じているのが、OCRのプロジェクト。 簡単にいうと、手書きや印刷された文字をAIが読みとって、 自動的にコンピュータが利用できる文字コードに変換する技術です。 このプロジェクトがはじまるきっかけは、社内にありました。SMFLはリース会社のため、 契約手続きの際に、お客さま(リース先の企業)から財務諸表を提出してもらう必要があります。 財務諸表は概ねどの企業も百ページ以上あって、もちろん各企業で数字や中身が異なりますし、 フォーマットもバラバラ。これまでは、担当者がそれらを一枚ずつ読んで、 社内システムに打ち込んでいました。これは膨大な手作業ですし、人がやるので当然ミスもあります。 この作業の全てを自動化することができれば、業務量の大幅な削減ができるという見込みがありました。 そして、開発チームのメンバーと一緒に、海外で開催されたOCR技術関連の学会に参加した際に 「ウチならもっといいものができるんじゃないか」という可能性が見えてきたんです。 SMFLは、優秀なエンジニアをたくさん抱えていますし、技術的にそこまで難易度は高くありませんでした。

AIで常識を超えていく。

このOCRサービスは、社内で大きな成果をあげています。 導入前と比べて、年間で数十万時間もの作業時間を削減することができました。 すでに数社のお客さまに関心をいただいていて、買い手がつきはじめています。 もちろん各企業によって、確認したい項目は違いますから、対応するドキュメントは財務諸表に限りません。 たとえば、「書類の中の特定の情報だけを収集したい」とか、 「ハンコが押してあるかどうか、また、そのハンコが正しい印鑑になっているかどうか確認したい」など、 お客さまがやりたいことになるべく素早く、そしてなるべく簡単に順応できるよう、 より柔軟性のあるプラットフォームとしての構築を進めています。多くの企業に導入されれば、 世の中に大きな影響を与えられるはずです。 経営者は、削減された時間をよりビジネスの戦略的なところに投下することができるでしょうし、 働く社員は、休暇を取りやすくなったり、趣味や家族との時間に当てることができるでしょう。 いずれ、会社に行かないといけないとか、週5日は働かないといけないとか、 そんな既成概念も壊していけるかもしれません。OCRだけでなく、こうしたデジタル技術は、 直接的にも間接的にも、社会の課題を解決し、暮らしを豊かにしていくもの。 人の手で行っている仕事をAIやデジタル技術が担うことで、人間自身は、 より人間的な生活を謳歌することにつながると思います。僕たちはまだ、常識の檻の中に囚われている。 僕は、そんな狭い空間をはやく抜け出して、新しい世界を観にいきたい、ただそれだけなんです。